税理士並河の税界よもやま話【29】(H22.8.23)

★元祖事業仕分け
甲子園で行なわれた夏の高校野球は今年の猛暑、酷暑を象徴するかのように一番暑い地方の代表である沖縄興南高校が優勝しました。
春のセンバツに続いてチームを優勝に導いた我喜屋監督は1968年(昭和43年)自身の母校の主将としてベスト4まで進出し、その後社会人野球の大昭和製紙(現日本製紙)に入り、1974年(昭和49年)中堅手として大昭和製紙白老町で全国制覇をして黒獅子旗を北海道にもたらしたということもあって道産子の私としては興南高の優勝を祝したい。

さて8月に入ると来年度の予算編成が本格化してきますが、民主党政権になって行政刷新会議の行う「事業仕分け」は国家予算の見直し透明性を確保しながら事業の必要性を判定して財源の捻出をはかることで与党のポイントゲッターとなっています。
しかしここで忘れてはならないのは事業仕分けの本職は会計検査院ということです。
憲法90条に「国の収入支出の決算は全て毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は次の年度にその検査報告と共にこれを国会に提出しなければならない」と規定されています。
会計検査院(以下検査院と呼称)は1880年(明治13年)大蔵省検査局を廃止して設置されたもので、130年もの歴史をもち、約1300人の職員を擁しています。
検査院は伝統的に「合規性」の観点からの検査が大きな比重を占めており、過去には各省庁のカラ出張といった不正の摘発もありました。
しかし近年はわが国財政が危機的状況にある中で効率的な行財政の執行が求められるところから「経済性、効率性、有効性」といった業績評価型の検査に重点が置かれてきているようです。
ここの所では政治主導でやっている事業仕分けと行政庁である検査院の検査は切り口が異なっても行財政のムダをなくすことに貢献できれば結構なことです。
★国税が気にする検査院

国税局・税務署においては他の一般官庁同様に国家予算の執行(歳出)を検査院が検査するだけでなく、国税がもつ収入(歳入)管理の検査も合わせ行われるため毎年受検となります。
法人が税務申告書を税務署に提出する際、検査院用として申告書を一部余分に提出するよう依頼を受けることがありますが、これは税法に基づくものではなく、会計検査院法によるものです。
ちなみに法人税申告書で検査院用として提出する基準が、東村山税務署所管の場合、税額が1500万円以上または資本金が4千万円以上、麹町税務署所管の場合、税額が5500万円以上または資本金が9千万円以上、国税局調査部所管法人は全法人が対象といった具合に所轄署により提出基準が異なっています。

税のプロフェショナルを自負する国税当局にとっては検査院から「税の取り漏れ」や「税の取り過ぎ」(取り漏れの指摘の方が多い)の指摘を受けることは恥と考えています。
従って検査院が来るという連絡を受けると担当部門では一斉に申告書の見直しを行い、不具合が発見されれば即時修正申告書をとるなどして準備に万全を期しています。
税に関して誰がどう負担するかという財源(入口)の関心は高いが、徴収された税がどう使われているか(出口)については従来関心が薄いといわれていましたが、今は様変わりしており、検査院の役割は一層重要となってきました。
国税の組織にとって天敵のような検査院の存在は税の取り漏れだけでなく、国税の行き過ぎを牽制する効果もあり、国益にかなっていると言えます。
ただ検査院は独立した強い立場にありますが、制度上検査院を検査する機関がないため、検査院自身どうやって組織として自浄努力をしていくのか、また人事面での閉塞やマンネリ化を防ぎ、どう機能アップを図ってニーズに応えていくのか注目したいところです。