赤池三男第二十一話「- お酒と国防費 -」(H25.4.25)

 お酒についての「自称博士」は多くいる。お酒は身近であるし、研究すると奥深い。うっかり酒類の講釈をすると、自称お酒博士さんが、猛反発してくる。素面(しらふ)ならば耳を傾けても良いが、酔っ払いが講釈をするのは頂けない。
 お酒(酒類)産業の所管が、国税庁であることを知らない人がいる。経済産業省だ?と答える人が多くいる。課税庁に有って、異例の産業政策で有るからだろうか。
 お酒の歴史は長い。有史以来、酒にまつわる話は、地方の民話に出てくる。酒は、税法上、貴重な存在にある。法人税、所得税に並んで税理士試験の科目になっているから。
 お酒には税金が課されている。これも歴史が古い。酒に税を課し、国が所管する様になったのは、明治3年。酒税法が出来た。
 酒類の課税目的は、貴重な税収物品を容易に入手出来ない様に管理すること、過度の飲酒予防策にあり、国民の健康管理策にある。
 口の悪い人曰く。ある戦時に、軍事費調達の為に課税が創設された、酔っ払いを味方にして戦争に勝つ!と。戦費調達目的説は、まんざらでもない。
 酒税収と軍備費が見合う金額であることが証明している。
 嘗ては、歴史的に見ても、国防費と酒税収は平行であった。明治・大正時代の統計が有れば立証し易いが、統計が無いので、昭和に置き換えてみる。
        昭和30年酒税1,605億円、国防費(自衛隊)1,359億円。
        昭和40年酒税3,529億円、国防費3,014億円。
 その後、時代の変化と共に、年々酒税収が減少し、防衛費も増額になった。
        昭和50年には酒税9,140億円、防衛費1兆7,273億円、と極端に乖離。
        昭和60年酒税 1兆9,315億円、防衛費3兆1,371億円。
 酒税収は、昭和63年2兆2,815億円を最高に、年々減る傾向にある。
 平成22年度予算でみると、立証は更に困難である。酒税収1兆3,258億円。防衛費4兆6,826億円。防衛費の4分の1が酒税収に相当する。
 国防費は、例年、ほぼ横並びである。国防費は、酒税収に見合うものだったが、昭和40年代から、GNP(国民総生産・JDP)の1%目標に置きかえた。概ね、1%を保っている。昭和60年0,997%、平成22年1,008%
 近年、近隣国の軍事脅威下にある。わが国の国防は重要問題となり、平成25年度は、11年ぶりに増額予算措置になった。これでは、当初目的と大差があるのは当然。
 日本人の飲酒量が減って、税収が減少したわけではない。新種ビール等の開発や酒税の減税、GATTの減税の影響、国内酒業界育成保護策(構造改善など)が行われた為である。TPPの影響は出ないだろうか。