法人税の節税対策|中小企業が活用すべき制度

中小企業の経営者にとって、法人税の負担を適正に軽減することは重要な経営課題です。日本の税制には、中小企業を支援するためのさまざまな優遇制度が設けられており、これらを適切に活用することで、合法的に税負担を抑えることができます。

【令和8年度税制改正】中小企業者等の少額減価償却資産の特例について、取得価額の基準を30万円未満から40万円未満に引き上げる方針が示されています(適用期限も延長)。適用開始時期は今後の法令等で確定するため、実際のご判断にあたっては国税庁・中小企業庁の最新の公表内容をご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。

本記事では、中小企業が活用すべき法人税の節税対策について、具体的な制度の内容と適用要件を詳しく解説いたします。

法人税率はどうなっている?

節税対策を検討する前に、まず法人税率の基本を確認しましょう。中小法人(資本金1億円以下の法人)には、優遇された税率が適用されます。

区分 所得金額 税率
中小法人(資本金1億円以下) 年800万円以下の部分 15%(本則19%の軽減税率)
中小法人(資本金1億円以下) 年800万円超の部分 23.2%
普通法人(上記以外) 全額 23.2%

ポイント:中小法人の年800万円以下の部分に対する軽減税率15%は、租税特別措置法による時限措置です。本則税率は19%ですが、適用期限が延長され続けています。なお、所得金額が年10億円を超える法人は17%、適用除外事業者(前3事業年度の平均所得が15億円超)は19%が適用されます。法人税のほかに法人住民税・法人事業税もかかるため、実効税率はおおむね約33〜34%程度となります。

中小企業投資促進税制

中小企業投資促進税制は、中小企業が設備投資を行った際に、特別償却または税額控除を受けられる制度です。

対象となる設備

  • 機械装置:1台または1基の取得価額が160万円以上
  • 測定工具・検査工具:1台の取得価額が120万円以上(一定のもの)
  • 一定のソフトウェア:取得価額が70万円以上
  • 貨物自動車:車両総重量3.5トン以上
  • 内航船舶:取得価額の75%が対象

優遇措置の内容

選択肢 内容 対象法人
特別償却 取得価額の30%を通常の減価償却に上乗せ 中小企業者等
税額控除 取得価額の7%を法人税額から控除 資本金3,000万円以下の法人

中小企業経営強化税制

中小企業経営強化税制は、経営力向上計画の認定を受けた中小企業が、一定の設備を取得した場合に、即時償却または税額控除を受けられる制度です。投資促進税制よりもさらに手厚い優遇措置が用意されています。

優遇措置の内容

選択肢 内容
即時償却 取得価額の全額を取得年度に償却
税額控除(資本金3,000万円以下) 取得価額の10%を法人税額から控除
税額控除(資本金3,000万円超1億円以下) 取得価額の7%を法人税額から控除

ポイント:即時償却は初年度に全額費用計上できるため、キャッシュフローの改善効果が大きい一方、税額控除は法人税額そのものを減らすため、トータルの節税額は税額控除の方が有利です。設備投資額や利益の見通しに応じて選択しましょう。

少額減価償却資産の特例

中小企業者等に該当する法人は、取得価額が30万円未満の減価償却資産について、取得した事業年度に全額を損金に算入することができます。

適用要件と上限

  • 対象法人:資本金1億円以下の中小企業者等(青色申告法人に限る)
  • 対象資産:取得価額が30万円未満の減価償却資産
  • 年間上限:合計300万円まで(事業年度が12か月の場合)
  • 適用期限:租税特別措置法に基づく時限措置(延長が繰り返されている)

注意:この特例は1点あたり30万円未満の資産が対象です。分割して購入するなどの意図的な分割計上は、税務上否認されるリスクがあります。また、この特例は「租税特別措置法」に基づくもので、通常の「10万円未満の全額損金算入」(法人税法施行令第133条)とは異なります。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)

経営セーフティ共済は、取引先が倒産した際に、共済金の貸付けを受けられる制度です。節税対策としても広く活用されています。

制度の特徴

  • 掛金:月額5,000円〜20万円(5,000円単位で設定可能)
  • 掛金の上限:掛金総額が800万円に達するまで積立可能
  • 税務上の取扱い:支払った掛金は全額損金に算入可能
  • 解約手当金:40か月以上掛金を納付していれば、掛金全額が戻る
  • 前納制度:最大1年分の前納が可能(前納分も損金算入可)

ポイント:利益が大きく出た年に掛金を増額・前納し、利益が少ない年に解約するなどの活用が可能です。ただし、解約手当金は収入に計上されますので、出口戦略(解約時の処理)も事前に計画しておくことが重要です。

小規模企業共済

小規模企業共済は、中小企業の経営者や個人事業主が退職・廃業時に備えるための退職金制度です。法人の節税ではなく、経営者個人の所得税対策として有効です。

制度の概要

  • 掛金:月額1,000円〜70,000円(500円単位で設定可能)
  • 所得控除:支払った掛金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除の対象
  • 共済金の受取り:退職所得扱い(一括受取)または公的年金等の雑所得扱い(分割受取)
  • 加入資格:従業員20人以下(商業・サービス業は5人以下)の個人事業主または会社役員

決算賞与はどうすれば損金になる?

決算期末に支給が確定した賞与(決算賞与)は、一定の要件を満たすことで、未払いであっても当期の損金に算入できます。

損金算入の要件

  • 決算日までに、支給額を各従業員に個別に通知すること
  • 決算日の翌日から1か月以内に実際に支給すること
  • 損金経理(会計上の費用処理)を行うこと

注意:決算賞与の損金算入は、上記3つの要件をすべて満たす必要があります。特に「翌月末までの支給」の要件は厳格に適用されます。また、役員に対する賞与は損金算入の要件が異なりますので(事前確定届出給与の届出が必要)、ご注意ください。

節税と脱税の違いとは?

節税対策を検討する上で、「節税」と「脱税」の違いを正しく理解しておくことが重要です。

区分 内容 法的リスク
節税 税法の規定に基づいた合法的な税負担の軽減 なし
租税回避 税法の趣旨に反する行為による税負担の回避 否認されるリスクあり
脱税 所得の隠蔽や虚偽の申告による不正な税負担の回避 刑事罰の対象(最大10年の懲役、1,000万円以下の罰金等)

過度な節税スキームは、税務調査で否認されるリスクがあるだけでなく、加算税・延滞税の対象となる場合もあります。節税対策は、必ず税理士に相談し、適法性を確認した上で実行しましょう。

まとめ

中小企業が活用できる法人税の節税制度は数多くあります。重要なのは、自社に適した制度を正しく理解し、タイミングを逃さず活用することです。

  • 設備投資時は投資促進税制・経営強化税制の適用を検討
  • 30万円未満の資産は少額減価償却資産の特例を活用
  • 経営セーフティ共済・小規模企業共済で将来に備えつつ節税
  • 決算期の利益調整には決算賞与も有効
  • 過度な節税は税務リスクを招くため、専門家に相談を

よくある質問(FAQ)

Q. 法人税の節税対策はいつから始めればよいですか?

A. 決算月の2〜3か月前が理想です。この時期であれば利益と納税額をある程度見通せるため、必要な設備投資や決算賞与など選択できる対策が多く残ります。決算直前や決算後では利益の実現が済んでおり、打てる手は大きく限られます。

Q. 節税と脱税・租税回避は何が違いますか?

A. 節税は、租税特別措置法などが定める制度を要件どおりに使い、事業上の必要性がある支出を適正に行うものです。一方、売上の期ずれや架空経費の計上は脱税にあたり、税務調査で否認されれば本税に加えて加算税・延滞税が課されます。制度の要件を満たしているかどうかが分かれ目です。

Q. 中小企業が使いやすい節税制度にはどんなものがありますか?

A. 中小企業投資促進税制や中小企業経営強化税制(即時償却または税額控除)、取得価額30万円未満の少額減価償却資産の特例、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)や小規模企業共済の掛金、要件を満たす決算賞与などがあります。いずれも適用要件と手続の期限があるため、事前確認が欠かせません。

参考にした一次情報(出典)

  • 国税庁が公表するタックスアンサー(よくある税の質問)および各種パンフレット等の公表資料
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)に掲載されている関係法令の条文

実務の現場から:当事務所には、「節税したいが何から手をつければよいか分からない」というご相談が多く寄せられます。租税回避と適法な節税は明確に別物であり、事業上の必要性がある対策から検討することをお伝えしています。

ご注意(免責事項):本記事は2026年8月3日時点の法令および公的機関の公表資料にもとづく一般的な解説です。税制・社会保険制度は改正されることがあり、同じ制度でも個別の事情によって取扱いが変わります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士など専門家にご相談ください。本記事の情報にもとづく判断により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。

税理士法人みらい(税理士法人番号 第1218号)/〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北3-4-1 みらいビル2F/TEL 042-422-7440/初回相談無料。昭和58年開業・平成18年法人化、ISO9001認証取得。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、税理士法第33条の2の書面添付制度にも対応しています。

この記事の執筆者

税理士法人みらい(税理士法人番号 第1218号/東京都西東京市ひばりが丘)。昭和58年開業、平成18年に法人化し、2023年に開業40周年を迎えました。ISO9001認証を取得し、品質管理体制のもとで税務会計サービスを提供しています。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、税務調査対応や書面添付制度(税理士法第33条の2)にも対応しています。

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