月次決算とは、毎月の業績を締めて損益と財政状態を把握する取り組みです。年1回の決算だけでは、問題に気づいたときには1年が終わっています。翌月10日前後に前月の数字が出る体制ができると、期中に手を打てるようになります。仕組み化のポイントを整理します。
年1回の決算では手遅れになる
決算をしてはじめて赤字だと気づく、納税額を聞いて資金が足りないと気づく——これは決算が年1回しかないことが原因です。
- 納税予測ができない:期末に慌てて対策を探すことになる
- 資金繰りが読めない:入金の遅れや在庫の増加に気づけない
- 不採算に気づけない:赤字の取引が1年間続いてしまう
- 金融機関に説明できない:融資の相談時に最新の数字がない
月次決算があれば、これらは期中に見えます。決算対策も、月次の数字があってはじめて計画的に打てます。
続く仕組みの条件
1. 締め日を決める
「月末までに前月分の資料を出す」と決め、社内ルールにします。期限がないと後回しになり、3か月分まとめて処理する事態になります。
2. 資料の流れを固定する
| 資料 | いつ |
|---|---|
| 通帳の記帳・データ取得 | 月初 |
| 売上の集計(請求書控え) | 月初 |
| 仕入・経費の領収書、請求書 | 月初 |
| 給与明細・支払一覧 | 支給後すぐ |
| 在庫の概算 | 月末(毎月でなくても可) |
3. 自動化できるところは自動化する
ネットバンキングやクレジットカードの明細をクラウド会計に連携すると、入力の手間が大きく減ります。電子帳簿保存法への対応もあわせて進めると効率的です。
4. 完璧を求めない
月次では、在庫や減価償却費を概算で計上して構いません。スピードを優先し、精度は決算で合わせます。完璧を求めると続きません。
毎月見る数字
全部を見ようとすると続きません。次の5つに絞ると判断に使えます。
- 売上高:前年同月比、予算比
- 粗利益率:値引きや原価上昇の影響が出る
- 固定費:人件費、家賃など。増えていないか
- 現預金残高:月商の何か月分あるか
- 売掛金・在庫:滞留していないか
特に粗利益率は変化に気づきやすい指標です。売上が伸びていても粗利率が落ちていれば、利益は増えていません。
月次を経営に使う
数字が出るだけでは意味がありません。次のように使います。
- 納税予測:期の途中で着地見込みを立て、資金を準備する
- 決算対策:決算月の2〜3か月前から計画的に検討する
- 金融機関への説明:試算表を提示できると融資相談が進めやすい
- 不採算の発見:部門別・商品別に見ると改善点が見える
当事務所では月1回のご訪問を基本とし、試算表をもとに数字の意味をご説明しています。単に帳簿を確認するのではなく、経営のご相談まで含めて対応するのが方針です。
よくある質問
Q. 月次決算はいつまでに締めるべきですか?
A. 翌月10日前後を目標にすると、経営判断に使える速さになります。月末までに前月分の資料を提出するという社内ルールを決め、資料の流れを固定することが継続のポイントです。遅くとも翌月中には締められる体制を目指してください。
Q. 月次決算では在庫を毎月数える必要がありますか?
A. 毎月の実地棚卸までは必須ではありません。月次では概算での計上でも構いません。スピードを優先し、精度は決算で合わせるという割り切りが継続のコツです。ただし在庫が大きく変動する事業では、月次でも概算の把握をおすすめします。
Q. 毎月どの数字を見ればよいですか?
A. 売上高、粗利益率、固定費、現預金残高、売掛金と在庫の5つに絞ると判断に使えます。特に粗利益率は変化に気づきやすい指標で、売上が伸びていても粗利率が落ちていれば利益は増えていません。前年同月比で見ると変化を捉えやすくなります。
まとめ
月次決算は、締め日を決めて資料の流れを固定し、自動化できる部分は会計ソフトに任せることで続きます。月次では概算での計上を許容してスピードを優先し、精度は決算で合わせます。売上・粗利益率・固定費・現預金・売掛金と在庫の5指標を毎月見ることで、期中に手を打てるようになります。
国税庁「帳簿の記帳のしかた」「電子帳簿保存法関係」、中小企業庁「中小企業白書」/e-Gov法令検索。本記事は2026年9月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
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