棚卸と在庫評価の実務|決算前に整えておくポイント

目次

  1. なぜ在庫が利益を左右するのか
  2. 数え方の実務
  3. 評価方法の選択
  4. 評価損が認められる場合
  5. よくある質問
  6. まとめ

棚卸とは、期末時点で保有している商品・製品・原材料・仕掛品などの数量を実地に確認し、金額を確定させる手続きです。期末在庫が増えれば利益が増え、減れば利益が減るという関係にあるため、在庫の計上漏れや過大計上はそのまま納税額の誤りにつながります。税務調査でも重点的に確認される項目のひとつです。

なぜ在庫が利益を左右するのか

売上原価は次の式で計算されます。

売上原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 − 期末棚卸高

この式から、期末棚卸高が大きくなるほど売上原価は小さくなり、利益は増えます。逆に在庫を計上し忘れると、売上原価が過大になり利益が過少に計上されます。

  • 在庫を100万円計上し忘れる → 利益が100万円過少 → 過少申告
  • 実際にない在庫を計上する → 利益が過大 → 粉飾決算

意図的に在庫を除外して利益を圧縮すれば、仮装隠蔽として重加算税の対象になり得ます。正確な把握が何より重要です。

数え方の実務

実地棚卸を行う

帳簿上の数量だけに頼らず、実際に数えることが原則です。手順の例は次のとおりです。

  1. 棚卸日を決め、可能であれば入出庫を止める
  2. 棚卸表を用意し、担当者2名以上で数える(カウント者と記録者を分ける)
  3. 数量・単価・金額を記載し、担当者名と日付を残す
  4. 帳簿数量と差異があれば原因を調べ、原因を記録する

計上漏れが起きやすい在庫

  • 倉庫以外にある在庫:店頭在庫、車載在庫、営業担当が持つサンプル
  • 預け在庫:外注先や委託販売先に預けているもの
  • 未着品:期末までに仕入計上したが、まだ届いていないもの
  • 仕掛品:製造途中のもの、進行中の工事や役務
  • 貯蔵品:切手、印紙、消耗品の未使用分

これらは物理的に手元にないため見落とされがちですが、所有権が自社にあるものは在庫として計上します。

評価方法の選択

棚卸資産の評価方法には、原価法と低価法があります。原価法にはさらに複数の方法があります。

方法概要
最終仕入原価法期末に最も近い時期の仕入単価で評価。届出をしていない場合の法定評価方法
総平均法・移動平均法平均単価で評価
先入先出法先に仕入れたものから払い出したとみなす
低価法原価法による評価額と期末時価のいずれか低い方で評価

評価方法を変更する場合や、法定評価方法以外を採用する場合は、税務署への届出が必要です。届出をしていない法人は最終仕入原価法によることになります。

評価損が認められる場合

在庫の価値が下がったからといって、常に評価損を計上できるわけではありません。法人税法上、評価損の計上が認められるのは限られた事実があるときです。

  • 災害により著しく損傷したこと
  • 著しく陳腐化したこと(型崩れ、季節商品の売れ残りで通常の方法では販売できないなど)
  • 破損、型崩れ、たなざらしなどにより通常の方法で販売できないこと

単に物価変動や需給の変化で時価が下がっただけでは、評価損は認められません。計上する場合は、その事実を示す資料(写真、廃棄証明、値下げ販売の記録など)を残しておくことが重要です。

実際に廃棄した場合は廃棄損として処理できますが、こちらも廃棄した事実を証明できる書類の保存が求められます。

よくある質問

Q. 棚卸はいつ行えばよいですか?

A. 原則として期末日時点の在庫を確認します。期末日に実施できない場合は、前後の日に実地棚卸を行い、その間の入出庫を加減算して期末残高を算定する方法もあります。いずれの場合も、いつ・誰が・どのように数えたかを記録に残し、帳簿数量との差異の原因を説明できるようにしておくことが重要です。

Q. 外注先に預けている材料も在庫に含めますか?

A. はい。所有権が自社にあるものは、物理的に自社の倉庫になくても棚卸資産に含めます。外注先への支給材料、委託販売先の預け在庫、営業担当が持つサンプルなどが該当します。逆に、預かっているだけで所有権が他社にあるものは自社の在庫に含めません。

Q. 売れ残った在庫の評価損は計上できますか?

A. 単に売れ行きが悪いというだけでは認められません。法人税法上、評価損が認められるのは、災害による著しい損傷、著しい陳腐化、破損・型崩れ・たなざらし等により通常の方法で販売できなくなった場合などです。物価変動による時価の下落のみでは計上できません。計上する場合は事実を示す資料の保存が必要です。

まとめ

期末在庫は利益と納税額に直結するため、実地棚卸による正確な把握が欠かせません。預け在庫や未着品、貯蔵品など手元にない在庫の計上漏れに注意してください。評価方法は届出がなければ最終仕入原価法となり、評価損は災害・陳腐化など限られた事実がある場合にのみ認められます。

この記事の執筆者

税理士法人みらい(東京都西東京市)。昭和58年開業、平成18年法人化。ISO9001認証取得。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、決算業務と棚卸資産の評価、月次決算体制の構築、書面添付制度を活用した申告をサポートしています。

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出典・参考

国税庁「棚卸資産の評価方法」「棚卸資産の評価損」、e-Gov法令検索(法人税法第29条・第33条、法人税法施行令第28条)/e-Gov法令検索。本記事は2026年8月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。

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