赤字決算になったときの実務|欠損金の繰越と繰戻し還付

目次

  1. 欠損金の繰越控除
  2. 欠損金の繰戻し還付
  3. どちらを選ぶか
  4. 金融機関への説明と再発防止
  5. よくある質問
  6. まとめ

欠損金とは、その事業年度の損金が益金を上回った場合の差額、いわゆる税務上の赤字です。青色申告法人であれば、この欠損金を翌期以後10年間繰り越して将来の所得と相殺できます(法人税法第57条)。また中小企業者等であれば、前期に納めた法人税の還付を受けるという選択肢もあります。赤字の年こそ、制度を正しく使う判断が重要です。

欠損金の繰越控除

青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金は、翌期以後10年間繰り越せます。

  • 繰越期間:10年(平成30年4月1日以後開始事業年度に生じた欠損金)
  • 中小法人等は、繰り越した欠損金を所得の全額と相殺できる
  • 中小法人等以外は、控除限度額が所得の50%に制限される

適用には要件があります。

  1. 欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出していること
  2. その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出していること
  3. 欠損金が生じた事業年度の帳簿書類を保存していること

2番目の要件が重要です。赤字だからと申告を怠ると、繰越控除が使えなくなります。所得がゼロでも必ず申告してください。

欠損金の繰戻し還付

もう一つの選択肢が繰戻し還付です。当期の欠損金を前期に繰り戻し、前期に納めた法人税の還付を受けられます(法人税法第80条)。

項目内容
対象中小企業者等(資本金1億円以下など一定の法人)
繰り戻せる期間前1年以内に開始した事業年度
要件前期・当期とも青色申告書を提出し、期限内に申告していること
手続き確定申告書と同時に還付請求書を提出

還付されるのは法人税(と地方法人税)です。法人住民税・事業税は繰戻し還付の対象外で、これらは繰越控除で処理されます。

どちらを選ぶか

繰戻し還付は資金が戻る一方で、繰り越せる欠損金はその分減ります。判断の目安は次のとおりです。

  • 繰戻し還付が向く:資金繰りが厳しい/翌期以降も黒字化の見通しが立ちにくい/前期に相応の法人税を納めている
  • 繰越控除が向く:翌期以降に大きな利益が見込まれる/当面の資金には余裕がある

また、繰戻し還付の請求は税務署による調査の対象となる旨が法令に定められています(法人税法第80条第10項)。ただしこれは制度上の手続きであり、還付請求そのものが不利益な扱いを受けるという意味ではありません。

金融機関への説明と再発防止

赤字決算は融資審査でマイナス要因になりますが、内容によって評価は変わります。

  • 一時的な要因か:大型投資や特別損失によるものか
  • 営業利益は出ているか:本業の収益力が保たれているか
  • 改善計画があるか:翌期以降の見通しを示せるか

数字だけを見せるのではなく、原因と対策をあわせて説明することが重要です。債務超過に至っている場合は債務超過になったら何をすべきかもご参照ください。

なお、赤字でも法人住民税の均等割は発生します。また消費税は損益とは別に計算されるため、赤字でも納税が生じることがあります。納税資金の確保は忘れないようにしてください。

よくある質問

Q. 赤字でも申告は必要ですか?

A. 必要です。所得がゼロやマイナスでも確定申告書を提出しなければ、欠損金の繰越控除が使えなくなります。繰越控除の要件として、欠損金が生じた事業年度に青色申告書を提出していることに加え、その後の各事業年度について連続して確定申告書を提出していることが求められます。

Q. 欠損金は何年繰り越せますか?

A. 平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金は10年間繰り越せます。中小法人等であれば繰り越した欠損金を所得の全額と相殺できますが、中小法人等以外は控除限度額が所得の50%に制限されます。

Q. 繰戻し還付と繰越控除はどちらが有利ですか?

A. 資金繰りが厳しく、翌期以降の黒字化が不透明であれば繰戻し還付が有効です。一方、翌期以降に大きな利益が見込まれるなら、繰越控除で将来の税負担を減らすほうが効果的です。なお繰戻し還付の対象は法人税と地方法人税で、法人住民税・事業税は対象外です。

まとめ

青色申告法人の欠損金は10年間繰り越せますが、その後も連続して確定申告書を提出することが要件です。中小企業者等であれば前期の法人税の繰戻し還付も選択できます。資金繰りと翌期以降の見通しで判断し、赤字でも均等割や消費税の納税が生じる点にご注意ください。

この記事の執筆者

税理士法人みらい(東京都西東京市ひばりが丘)。昭和58年開業、平成18年法人化。ISO9001認証取得。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、法人の決算・申告業務、欠損金の取扱いと納税予測、金融機関提出資料の整備をサポートしています。

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出典・参考

国税庁「青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除」「欠損金の繰戻しによる還付」、e-Gov法令検索(法人税法第57条・第80条)/e-Gov法令検索。本記事は2026年9月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。

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