敬老の日に考える親の財産整理|認知症になる前にできること

目次

  1. なぜ判断能力が分かれ目になるのか
  2. まず把握したい財産の一覧
  3. 判断能力があるうちに取れる選択肢
  4. 相続税がかかるかを概算する
  5. よくある質問
  6. まとめ

認知症になる前の財産整理とは、親の判断能力があるうちに財産の全体像を把握し、必要な対策を実行しておくことです。判断能力が低下すると、生前贈与も不動産の売却も遺言の作成もできなくなり、預金の引き出しさえ制限されます。相続対策は「相続が起きてから」ではなく「元気なうちに」しかできません。敬老の日を機に、確認しておきたいことを整理します。

なぜ判断能力が分かれ目になるのか

民法上、契約や贈与といった法律行為には意思能力が必要です。判断能力が失われると、次のことができなくなります。

  • 生前贈与:贈与は契約なので、贈与者の意思能力が必要
  • 不動産の売却・活用:売買契約や賃貸借契約が結べない
  • 遺言の作成:遺言能力が必要
  • 預金の引き出し:金融機関が口座を凍結することがある
  • 生命保険の契約・変更:契約者としての意思表示ができない

特に見落とされがちなのが預金の凍結です。介護費用を親の口座から出そうとしても引き出せず、子が立て替える事態になりかねません。

まず把握したい財産の一覧

金額を聞き出す必要はありません。「どこに何があるか」がわかるだけで、いざというときの負担は大きく減ります。

種類確認すること
預貯金金融機関名と支店。ネット銀行は特に把握しづらい
不動産所在地。固定資産税の納税通知書で確認できる
有価証券証券会社名。ネット証券は要注意
生命保険保険会社名と契約者・被保険者・受取人
借入・保証借入金の有無、連帯保証の有無
デジタル資産暗号資産、電子マネー、サブスク契約

借入や連帯保証は相続で引き継がれます。相続放棄には相続開始を知った時から3か月以内という期限があるため、早期の把握が重要です。

判断能力があるうちに取れる選択肢

生前贈与

暦年課税か相続時精算課税かの選択があります。令和6年1月1日以後の贈与について、暦年課税は生前贈与加算が7年へ延長され、相続時精算課税には年110万円の基礎控除が新設されました。詳しくは生前贈与の暦年課税と相続時精算課税をご覧ください。

遺言

遺言があれば遺産分割協議の負担が大きく減ります。自筆証書遺言は法務局の保管制度を利用でき、公正証書遺言は無効になりにくいという特徴があります。なお遺言書の作成支援や遺産分割協議の代理は弁護士・司法書士の業務であり、当事務所では税務面からの検討を行い、必要に応じて提携する専門家と連携します。

任意後見・家族信託

判断能力が低下した後に備える仕組みです。任意後見は公正証書による契約が必要で、家族信託は財産の管理権限を家族に移す方法です。いずれも契約時点で本人の判断能力が必要なため、元気なうちにしか設定できません。これらの契約の設計・作成は弁護士・司法書士の業務となるため、当事務所では税務上の影響を検討し、提携する専門家と連携してご対応します。

相続税がかかるかを概算する

対策の要否を判断するには、まず相続税がかかるかを知る必要があります。

基礎控除額 = 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数

  • 相続人が配偶者と子2人(3人):4,800万円
  • 相続人が子1人:3,600万円

西東京市・練馬区など都市部では、自宅の評価額が高く、預貯金が多くなくても基礎控除を超えることがあります。なお配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使って税額がゼロになる場合でも、申告は必要です。

よくある質問

Q. 親が認知症になると相続対策はできなくなりますか?

A. 判断能力が失われると、生前贈与・不動産の売却・遺言の作成・任意後見契約などができなくなります。法定後見制度を利用することはできますが、後見人は本人の財産を守る立場のため、相続税対策を目的とした贈与や資産の組み替えは原則としてできません。対策は判断能力があるうちにしか実行できないとお考えください。

Q. 親の預金は認知症になっても引き出せますか?

A. 金融機関が本人の判断能力の低下を把握すると、口座が凍結されることがあります。この場合、原則として成年後見人の選任が必要になり、介護費用の支払いにも支障が出ます。あらかじめ代理人カードの手続きや家族信託などの備えをしておくと、こうした事態を避けやすくなります。

Q. 相続税がかかるかどうかはどう調べますか?

A. 遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えるかが目安です。土地は路線価、建物は固定資産税評価額で評価するため、実際の売買価格とは異なります。都市部では自宅だけで基礎控除を超えることもあるため、まず概算での試算をおすすめします。

まとめ

生前贈与・不動産の売却・遺言・任意後見・家族信託は、いずれも本人の判断能力があるうちにしか実行できません。まずは金額ではなく「どこに何があるか」の把握から始め、相続税がかかりそうかを概算したうえで、必要な対策を検討してください。

この記事の執筆者

税理士法人みらい(東京都西東京市ひばりが丘)。昭和58年開業、平成18年法人化。ISO9001認証取得。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、相続税の試算と生前対策、相続税申告、書面添付制度を活用した申告をサポートしています。

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出典・参考

国税庁「相続税のあらまし」「相続時精算課税の選択」、法務省「自筆証書遺言書保管制度」「成年後見制度」/e-Gov法令検索。本記事は2026年9月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。

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