決定通知に書かれた新しい標準報酬月額は、9月分の保険料から適用されます。給与から控除するのは前月分の保険料が原則のため、前月分を控除する会社では10月に支払う給与から新しい保険料を差し引きます。
定時決定は、7月1日現在の被保険者について、4月・5月・6月に受けた報酬の平均から標準報酬月額を決め直す手続きで、決まった額は9月から翌年8月までの各月に使われます(健康保険法第41条、厚生年金保険法第21条)。決定の内容は「健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書」で会社に届き、会社はすみやかに従業員へ知らせる必要があります(健康保険法第49条、厚生年金保険法第29条)。この記事では、給与計算の担当者が10月以降に確認することを順に整理します。
「9月分から」とはいつの給与か
健康保険法第167条と厚生年金保険法第84条は、会社が給与から控除できるのは「前月の標準報酬月額に係る保険料」と定めています(退職するときは、前月分とその月分を控除できます)。日本年金機構も、5月の給与の支払日には4月分の保険料を差し引くと例を示しています。そのため9月分の新しい保険料は、原則として10月に支払う給与から控除します。
| 保険料の月 | 会社が納める期限(令和8年) | 給与から控除する時期(前月分を控除する場合) |
|---|---|---|
| 9月分(新しい標準報酬月額) | 11月2日(月) | 10月に支払う給与 |
| 10月分 | 11月30日(月) | 11月に支払う給与 |
保険料の納付期限は対象月の翌月末日で、末日が休日のときは翌営業日です。令和8年9月分は10月31日が土曜日のため11月2日(月)が期限で、保険料納入告知書(または保険料納入告知額・領収済額通知書)は10月21日(水)に発送されると日本年金機構が案内しています。届いた9月分の金額が、新しい等級で計算した額と合っているかも確認しておきましょう。
なお、その月の給与で同じ月の分の保険料を控除している会社もあり、その場合は9月に支払う給与から新しい保険料になります。法律が定めているのは前月分の控除のため、運用を見直すかどうかも含めて社会保険労務士に確認しておくと安心です。あわせて、賃金規程の定めと給与計算ソフトの設定が合っているかを見ておきましょう。
令和8年度の保険料率と控除額の例
協会けんぽ東京支部に加入している会社の場合、令和8年度の料率は次のとおりです。健康保険料率と介護保険料率は令和8年3月分(4月納付分)から、子ども・子育て支援金は令和8年4月分(5月納付分)から適用されています。いずれも会社と従業員が半分ずつ負担します。
| 区分 | 料率 | 適用 |
|---|---|---|
| 健康保険料率(東京都) | 9.85% | 令和8年3月分から(前年度は9.91%) |
| 介護保険料率(40歳から64歳の方) | 1.62% | 令和8年3月分から |
| 子ども・子育て支援金率 | 0.23% | 令和8年4月分から |
| 厚生年金保険料率 | 18.3% | 平成29年9月分から固定 |
たとえば東京都の協会けんぽに加入する40歳未満の従業員(介護保険料はかかりません)の場合、毎月の従業員負担は次のようになります。
| 標準報酬月額 | 健康保険料 | 子ども・子育て支援金 | 厚生年金保険料 | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 280,000円 | 13,790円 | 322円 | 25,620円 | 39,732円 |
| 300,000円 | 14,775円 | 345円 | 27,450円 | 42,570円 |
標準報酬月額が28万円から30万円に上がると、従業員の負担は月2,838円増えます。会社の負担も同じ額だけ増え、さらに事業主だけが負担する子ども・子育て拠出金(厚生年金の標準報酬月額の0.36%)が月72円増えます(協会けんぽ東京支部「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表」)。健康保険組合に加入している会社は、組合の料率で計算します。
通知が届いたら確認すること
- 対象者に漏れがないか:7月1日現在の被保険者が通知に載っているか。6月1日以後に資格を取得した人や、7〜9月に随時改定がある人などは、定時決定の対象外です
- 等級が想定どおりか:4〜6月の報酬から計算した等級と一致しているか。支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)未満の月を除いて平均しているか。パートなどの短時間就労者は、3か月とも17日未満なら15日以上17日未満の月で算定します
- 給与計算ソフトへの登録:新しい標準報酬月額を従業員ごとに登録し、控除する月(前月分を控除する場合は10月に支払う給与)から反映されるか
- 従業員への通知:決定の内容を従業員に知らせる(健康保険法第49条・厚生年金保険法第29条で事業主に義務づけられています)
- 健康保険組合の場合:健康保険の決定は組合が行うため、組合からの通知も確認する
紙やCD等で届書を出した場合の通知書は、「オンライン事業所年金情報サービス」に利用申込みをすると、e-Govのマイページで電子データとして受け取れます。電子データで受け取る場合、紙の通知書は送られません。電子申請で届け出た場合は、電子申請の経路で通知されます(日本年金機構「オンライン事業所年金情報サービス(事業主の方)」「電子データで受け取れる各種情報・通知書の詳細」)。
源泉所得税と年末調整への影響
社会保険料が変わると、源泉所得税にも影響します。毎月の源泉所得税は、その月の給与から社会保険料等を差し引いた金額を「給与所得の源泉徴収税額表」に当てはめて求めるためです(国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表」の「給与所得の源泉徴収税額の求め方」)。新しい保険料を控除する月から、源泉所得税の額が変わることがあります。
12月の年末調整では、その年に給与から差し引いた社会保険料の全額が社会保険料控除の対象になり、本人が直接支払った国民年金保険料などは保険料控除申告書で申告されたものを加えます(国税庁タックスアンサーNo.1130)。等級が変わった人は、9月までの給与と10月以後の給与で控除額が違うため、年末調整で集計する社会保険料が毎月の給与明細の合計と合っているかを確認しておくと安心です。10月は年末調整の段取りを決める時期でもあります。依頼先や申告書の回収方法の決め方は年末調整は誰に頼む?代行の範囲と料金、10月中に決めることで整理しています。
随時改定(月額変更届)との関係
定時決定とは別に、昇給・降給などで固定的賃金が変わった場合は、次の3つの要件をすべて満たすと、変動した月から4か月目の標準報酬月額から改定されます(随時改定)。
- 昇給・降給、固定的な手当の追加や支給額の変更などで、固定的賃金が変わった
- 変動した月から3か月の報酬の平均で求めた標準報酬月額と、従前の標準報酬月額に2等級以上の差がある(等級表の上限・下限にかかる場合は1等級の差でも対象になることがあります)
- 3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上ある
なお、固定的賃金は上がったのに残業手当などが減って標準報酬月額が2等級以上下がった場合のように、固定的賃金の増減と逆の向きに変わったときは、随時改定の対象になりません。
たとえば7月に支払う給与から昇給した人は、7〜9月の3か月で判定し、該当すれば10月分の保険料から改定されます。前月分を控除する会社では、11月に支払う給与から反映します。このように、9月に決まった等級が1か月で変わることもあります。7月から12月までのいずれかの月から改定された標準報酬月額は、翌年8月まで使われます(1月から6月までの月から改定された場合は、その年の8月まで。日本年金機構「随時改定(月額変更届)」、健康保険法第43条・厚生年金保険法第23条)。給与改定の記録は、月ごとに残しておきましょう。
社労士・税理士に相談したほうがよい場合
次のような場合は、自社だけで判断せず、早めに専門家に確認すると安心です。
- 決定通知の等級が、4〜6月の給与から計算した等級と合わない(届出の内容の確認や訂正)
- 7月以後に昇給・降給や手当の変更があり、随時改定(月額変更届)に当たるか判断に迷う
- 給与計算を担当者1人で行っていて、料率や等級の更新を確認する人がいない
- 保険料の変更にあわせて、源泉所得税や12月の年末調整の計算まで見直したい
担当の分け方:算定基礎届や月額変更届、届出内容の訂正など社会保険の手続きは、会社が自ら行うこともできます。代行を依頼する場合は社会保険労務士の業務で、グループの社会保険労務士法人みらいが担当します。税理士法人みらいは、決まった標準報酬月額を反映した毎月の給与計算(保険料の控除額の反映を含みます)、源泉所得税の計算と納付書の作成、年末調整を担当します。毎月の給与計算と年末調整を税理士法人みらいに、社会保険の届出は社会保険労務士法人みらいに、まとめてご相談いただけます。
当事務所の「新設法人の顧問料等報酬料金表」(その他の業務)では、給与計算は5,000円〜(源泉所得税納付書の作成を含む)、年末調整事務は20,000円〜(給与支払報告書・法定調書合計表・償却資産税申告書の作成を含む)です(サービス案内)。既存の法人の料金は、内容をうかがってご案内します。社会保険の届出の費用は、担当する社会保険労務士法人みらいの料金になります。外注するかどうかの考え方は給与計算は外注すべき?税理士と社労士に頼む範囲と費用、どちらに何を頼むかは税理士と社労士の違い|何をどちらに頼むか、まとめて相談する方法で解説しています。ご相談はお問い合わせから受け付けています。
本人・会社への影響
標準報酬月額は、保険料だけでなく給付の計算にも使われます。
- 厚生年金:標準報酬月額は、将来受け取る厚生年金の額の計算の基礎になる
- 傷病手当金・出産手当金:支給額の計算の基礎になる(協会けんぽでは、支給開始日以前12か月の標準報酬月額の平均をもとに1日あたりの額を計算します)
- 会社負担:保険料は原則として会社と従業員が半分ずつ負担するため、会社の負担も同じだけ増減する(健康保険法第161条・厚生年金保険法第82条。健康保険組合では、規約で会社の負担割合を増やしている場合があります)
等級が上がると手取りは減りますが、給付の計算では有利になります。従業員から質問が出やすい時期なので、決定通知の内容と、何月の給与から控除額が変わるかを説明できるようにしておくと安心です。
よくある質問
Q. 新しい標準報酬月額はいつの給与から反映しますか?
A. 新しい標準報酬月額は9月分の保険料から適用されます。法律では、給与から控除できるのは前月分の保険料(退職するときは前月分とその月分)とされているため、原則として10月に支払う給与から新しい保険料を控除します。その月の給与で同じ月の分を控除している会社では9月に支払う給与からになりますが、法律の定めは前月分の控除です。自社の運用と給与計算ソフトの設定を確認してください。
Q. 決定通知の等級が想定と違う場合はどうすればよいですか?
A. まず4〜6月の報酬の集計と、支払基礎日数が17日(特定適用事業所の短時間労働者は11日)以上の月だけで平均しているか(パートなどの短時間就労者で3か月とも17日未満のときは、15日以上17日未満の月で平均)を確認します。届出の内容に誤りがあった場合は訂正の手続きが必要です。届出や訂正は会社が自ら行うこともでき、代行を依頼する場合は社会保険労務士の業務のため、グループの社会保険労務士法人みらいが担当します。当事務所は、給与データの確認と、決まった等級の給与計算への反映を担当します。
Q. 定時決定の後に昇給した場合はどうなりますか?
A. 固定的賃金が変わり、変動した月から3か月の報酬の平均で求めた標準報酬月額と従前の標準報酬月額に2等級以上の差があり、3か月とも支払基礎日数が17日(特定適用事業所の短時間労働者は11日)以上であれば、変動した月から4か月目の標準報酬月額から改定されます(随時改定)。たとえば7月に支払う給与から昇給した場合は7〜9月で判定し、該当すれば10月分の保険料から改定され、翌年8月まで使われます。
Q. 新しい保険料は源泉所得税や年末調整にも影響しますか?
A. 影響します。毎月の源泉所得税は、給与から社会保険料等を差し引いた金額を源泉徴収税額表に当てはめて求めるため、控除する保険料が変わると源泉所得税の額も変わることがあります。また、年末調整では、その年に給与から差し引いた社会保険料の全額が社会保険料控除の対象になります(本人が直接支払った国民年金保険料などは、保険料控除申告書で申告されたものを加えます)。
まとめ
定時決定で決まった標準報酬月額は9月分の保険料から適用され、前月分を控除する会社では10月に支払う給与から新しい保険料を控除します。令和8年9月分の保険料の納付期限は11月2日(月)です。通知が届いたら対象者と等級を確認して従業員に知らせ、給与計算ソフトを更新し、源泉所得税と年末調整の社会保険料控除への影響も確認してください。7月以後に昇給した人は随時改定の対象になることがあります。社会保険の届出は社会保険労務士法人みらい、毎月の給与計算・源泉所得税・年末調整は税理士法人みらいが担当し、まとめてご相談いただけます。
日本年金機構「定時決定(算定基礎届)」「随時改定(月額変更届)」「厚生年金保険の保険料」「厚生年金保険料等の納付」「オンライン事業所年金情報サービス(事業主の方)」「電子データで受け取れる各種情報・通知書の詳細」、協会けんぽ「令和8年度の協会けんぽの保険料率は3月分(4月納付分)から改定されます」「協会けんぽの介護保険料率について」「令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)」「傷病手当金」、国税庁「令和8年分 源泉徴収税額表(給与所得の源泉徴収税額の求め方)」、国税庁 タックスアンサーNo.1130「社会保険料控除」、e-Gov法令検索(健康保険法第39条・第41条・第43条・第49条・第161条・第167条、厚生年金保険法第21条・第23条・第29条・第82条・第84条)。いずれも2026年10月時点で確認。本記事は2026年10月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。制度は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、専門家にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
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