決算前の設備投資とは、期末までに設備を取得して減価償却費や特例による損金を計上し、その期の課税所得を圧縮する取り組みです。ただし「経費になるから買う」という発想は危険です。100万円の支出で減る税金は実効税率30%なら30万円で、手元資金は70万円減ります。事業に必要かどうかが判断の出発点であり、税効果はその次に来る要素です。
【令和8年度税制改正】中小企業者等の少額減価償却資産の特例について、取得価額の基準を30万円未満から40万円未満に引き上げる方針が示されています(適用期限も延長)。適用開始時期は今後の法令等で確定するため、実際のご判断にあたっては国税庁・中小企業庁の最新の公表内容をご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。
いくら損金になるのか
設備投資の全額が即座に経費になるわけではありません。取得価額によって扱いが変わります。
| 取得価額 | 処理 |
|---|---|
| 10万円未満 | 全額を当期の損金(消耗品費等) |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等償却も選択可 |
| 30万円未満 | 中小企業者等は少額減価償却資産の特例により全額損金算入可(年間合計300万円まで) |
| 30万円以上 | 固定資産として計上し、法定耐用年数で減価償却 |
取得価額の判定は消費税の経理方式(税込か税抜か)によって変わります。税抜経理なら税抜金額で判定するため、同じ買い物でも結果が変わることがあります。
期末間際で見落としやすい要件
「事業の用に供した日」が基準
減価償却は、資産を取得しただけでは始まりません。事業の用に供した日から開始します。期末に納品されても、据付けや試運転が終わらず稼働していなければ、その期の償却費は計上できません。
月割計算になる
期中に取得した資産の償却費は月割です。決算月に事業供用した場合、その期に計上できるのは1か月分にとどまります。耐用年数10年・定額法で300万円の設備なら、年間30万円のうち約2.5万円しか当期の損金になりません。
ポイント:期末間際の高額な設備投資は、当期の節税効果がほとんどありません。節税を目的とするなら、少額減価償却資産の特例が使える30万円未満の資産のほうが効果は直接的です。
優遇税制を使えるか確認する
一定の要件を満たす設備投資には、即時償却や税額控除が使える制度があります。中小企業経営強化税制などが代表例です。
- 対象となる設備の種類・金額の要件がある
- 経営力向上計画の認定など、取得前に手続きが必要なものがある
- 適用期限が定められており、改正されることがある
手続きの順序を誤ると適用できません。設備の発注前にご相談ください。制度の内容と適用期限は中小企業庁・国税庁の最新の公表内容をご確認ください。
投資判断のチェックリスト
税効果の前に、次を確認してください。
- 事業に必要か:節税のためだけの投資は、資産だけが残り資金が減る
- 手元資金は足りるか:納税資金まで使ってしまうと資金繰りが破綻する
- 投資回収の見込みはあるか:売上増・コスト減の効果を試算する
- 借入で買う場合の返済負担:減価償却費と返済額のズレに注意
- 翌期以降の税負担:当期に前倒しした分、翌期以降の償却費は減る
最後の点は見落とされがちです。即時償却は課税の繰延べであって、税金が消えるわけではありません。翌期に大きな利益が出る見込みなら、あえて通常償却を選ぶ判断もあります。
よくある質問
Q. 決算前に設備を買えば節税になりますか?
A. 一定の効果はありますが、期末間際の取得は効果が限定的です。減価償却は事業の用に供した日から月割で計算するため、決算月に稼働開始した場合は1か月分しか損金になりません。また支出額のほうが減る税額より大きいため、事業に必要かどうかを判断の出発点にしてください。
Q. 30万円未満なら全額経費にできますか?
A. 中小企業者等であれば、少額減価償却資産の特例により取得価額30万円未満の資産を全額損金算入できます(年間合計300万円まで)。取得価額の判定は消費税の経理方式によって変わり、税抜経理なら税抜金額で判定します。適用には明細書の添付など要件があります。
Q. 即時償却は税金が減るということですか?
A. 正確には課税の繰延べです。当期に多く償却した分、翌期以降の償却費は減るため、期間全体で見た損金の総額は変わりません。当期の資金繰りを楽にする効果はありますが、翌期以降に大きな利益が見込まれる場合は、通常償却のほうが有利になることもあります。
まとめ
決算前の設備投資は、取得価額によって処理が分かれ、30万円未満なら中小企業者等の特例で全額損金にできます。ただし減価償却は事業の用に供した日から月割のため、期末間際の高額投資は当期の効果が限定的です。優遇税制には取得前の手続きが必要なものもあるため、発注前のご相談をおすすめします。
国税庁「減価償却のあらまし」「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」、中小企業庁「中小企業税制」/e-Gov法令検索。本記事は2026年9月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
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