猛暑対策費用の経費処理とは、業務環境を維持するための空調設備や熱中症対策用品の支出を、資産計上と当期の損金のどちらで処理するかを判断する実務です。判断の分かれ目は取得価額と業務との関連性の2点にあります。当事務所でも夏場に「エアコンを入れ替えたが一度に経費にできるか」というご相談を多くいただきます。
基本の考え方|業務関連性と取得価額
まず、その支出が業務のために必要かが出発点です。従業員が働く環境の維持や安全配慮のための支出であれば、業務関連性は認められます。一方、自宅兼事務所で私的利用と混在する場合は、合理的な基準による按分が必要です。
次に金額です。取得価額によって処理が変わります。
| 取得価額 | 処理 |
|---|---|
| 10万円未満 | 全額を当期の損金(消耗品費等) |
| 10万円以上20万円未満 | 一括償却資産として3年で均等償却も選択可 |
| 30万円未満 | 中小企業者等は少額減価償却資産の特例により全額損金算入可(年間合計300万円まで) |
| 30万円以上 | 固定資産として計上し、法定耐用年数で減価償却 |
取得価額の判定は、消費税の経理方式(税込か税抜か)によって変わります。税抜経理を採用していれば税抜金額で判定するため、同じ買い物でも判定結果が変わることがあります。
費目ごとの取扱い
業務用エアコンの設置・入替え
建物に組み込む形の空調設備は建物附属設備として資産計上し、減価償却します。取り外して移設できるスポットクーラーなどは器具備品となります。いずれも取得価額が30万円未満であれば、中小企業者等は少額減価償却資産の特例を検討できます。
なお、既存設備の修理で原状回復にとどまるものは修繕費として当期の損金になりますが、性能を向上させる支出は資本的支出として資産計上が必要です。この区分は判断が難しいため、見積書に作業内容を明記してもらうことをおすすめします。
経口補水液・塩飴・冷却グッズ
従業員の熱中症予防として職場に常備するものは、福利厚生費として損金算入できます。全従業員が対象で、社会通念上妥当な金額であることが前提です。特定の役員だけに支給するような場合は給与とみなされるおそれがあります。
空調服・作業服
業務に必要で、会社名が入っているなど私服として使用しにくいものであれば、消耗品費や福利厚生費として処理できます。汎用性が高く私生活でも使える衣類は、現物給与と判断される可能性があります。
電気代
事業所の電気代は水道光熱費として全額が経費です。自宅兼事務所の場合は、使用面積や使用時間などの合理的な基準で按分します。按分の根拠を記録に残しておくことが、税務調査での説明のうえで重要です。
設備投資として大きい場合
空調設備の入替えが数百万円規模になる場合、中小企業経営強化税制などの適用可否を検討する余地があります。要件を満たせば即時償却または税額控除を受けられる可能性がありますが、対象設備の種類や経営力向上計画の認定など手続き要件があり、設備の取得前に手続きを進める必要があるものもあります。
これらの制度には適用期限が定められており、内容も改正されることがあります。検討される場合は、発注前の段階で中小企業庁・国税庁の最新の公表内容をご確認いただくか、当事務所までご相談ください。
よくある質問
Q. 業務用エアコンは一度に経費にできますか?
A. 取得価額が30万円未満であれば、中小企業者等は少額減価償却資産の特例により全額を当期の損金にできます(年間合計300万円まで)。30万円以上の場合は固定資産として計上し、法定耐用年数で減価償却します。建物に組み込む空調設備は建物附属設備、移設できるものは器具備品として区分します。
Q. 従業員に配る経口補水液や塩飴は経費になりますか?
A. 熱中症予防として職場に常備し、従業員全員を対象とするものであれば福利厚生費として損金算入できます。社会通念上妥当な金額であることが前提です。特定の役員のみを対象とする場合や、金額が過大な場合は給与として課税されるおそれがあるため、対象範囲と金額の妥当性にご注意ください。
Q. 自宅兼事務所の電気代はどこまで経費にできますか?
A. 事業に使用している部分を合理的な基準で按分した金額が経費になります。作業スペースの床面積割合や、業務に使用している時間の割合などが一般的な基準です。恣意的な割合ではなく、根拠を説明できる基準を用い、その計算過程を記録に残しておくことが重要です。
まとめ
猛暑対策の支出は、業務との関連性があれば経費になります。処理方法は取得価額で分かれ、30万円未満であれば中小企業者等の特例により全額を当期の損金にできます。熱中症対策用品は全従業員を対象とすれば福利厚生費、電気代は自宅兼事務所なら合理的な基準による按分が必要です。大型の設備投資は優遇税制の適用可否を発注前に検討する価値があります。
国税庁「減価償却のあらまし」「耐用年数表」「修繕費と資本的支出」、中小企業庁「中小企業税制」/e-Gov法令検索。本記事は2026年8月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
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