贈与税とは、個人から財産をもらったときに、もらった人(受贈者)に課される税金です。課税方法には暦年課税(1年間の贈与額から基礎控除110万円を差し引いて課税)と相続時精算課税(累計2,500万円までの特別控除。2024年分以降は年110万円の基礎控除も適用)の2つがあり、いずれかを選択します。申告と納付の期限は贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までです。本記事では両制度の違いと主な非課税特例を解説します。
贈与税とは?誰が納める税金?
贈与税は、個人から財産を無償でもらった場合にかかる税金です。相続税を補完する役割を持ち、生前の財産移転に対して課税することで、相続税の課税逃れを防ぐ機能があります。
贈与税の課税方式には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つがあり、贈与者ごとに選択できます。
暦年課税の仕組みとは?
暦年課税は、1月1日から12月31日までの1年間に受けた贈与の合計額から基礎控除額を差し引いた残額に対して課税される方式です。
基礎控除
暦年課税の基礎控除額は年間110万円です。1年間に贈与を受けた財産の合計額が110万円以下であれば、贈与税はかからず、申告も不要です。
贈与税の税率
暦年課税の税率は10%~55%の8段階で、「一般税率」と「特例税率」の2種類があります。
特例税率(直系尊属から18歳以上の者への贈与)
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 400万円以下 | 15% | 10万円 |
| 600万円以下 | 20% | 30万円 |
| 1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
| 1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
| 3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
| 4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
| 4,500万円超 | 55% | 640万円 |
一般税率(上記以外の贈与)
| 基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| 200万円以下 | 10% | - |
| 300万円以下 | 15% | 10万円 |
| 400万円以下 | 20% | 25万円 |
| 600万円以下 | 30% | 65万円 |
| 1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
| 1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
| 3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
| 3,000万円超 | 55% | 400万円 |
2024年以降の暦年課税に関する改正
2024年1月1日以降の贈与について、相続開始前に暦年課税で贈与された財産の相続財産への加算期間が「3年以内」から段階的に「7年以内」に延長されました。延長された4年間(相続開始前4~7年)に受けた贈与については、合計100万円まで加算対象外となります。
相続時精算課税制度はどんな制度?
相続時精算課税は、60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫への贈与について選択できる課税方式です。贈与時には軽減された税負担で済みますが、贈与者が亡くなった際に、贈与財産を相続財産に加算して相続税を計算します。
特別控除と基礎控除
| 控除の種類 | 控除額 | 説明 |
|---|---|---|
| 特別控除 | 累計2,500万円 | 贈与者ごとに生涯で2,500万円まで贈与税がかからない |
| 基礎控除(2024年以降新設) | 毎年110万円 | 年110万円以下の贈与は申告不要。相続財産への加算も不要 |
2024年1月1日以降の贈与から、相続時精算課税にも毎年110万円の基礎控除が新設されました。この基礎控除の範囲内の贈与は、相続時に相続財産に加算する必要がありません。これは制度の大きな改善点です。
特別控除(2,500万円)を超えた部分には一律20%の贈与税が課されますが、この贈与税は相続税の計算時に精算(控除)されます。
相続時精算課税の選択は撤回不可
相続時精算課税を一度選択すると、その贈与者からの贈与については暦年課税に戻すことができません。選択にあたっては、将来の相続を見据えた慎重な判断が必要です。
使える非課税特例にはどんなものがある?
住宅取得等資金の非課税特例
父母・祖父母などの直系尊属から、住宅の新築・取得・増改築等のための資金の贈与を受けた場合に、一定額まで非課税となる特例です。
| 住宅の種類 | 非課税限度額 |
|---|---|
| 省エネ等住宅 | 1,000万円 |
| 上記以外の住宅 | 500万円 |
暦年課税の基礎控除110万円や相続時精算課税の特別控除2,500万円と併用できるため、まとまった資金を非課税で贈与できます。
教育資金の一括贈与の非課税特例【令和8年3月31日で終了】
この特例は終了しました。令和8年度税制改正において適用期限(令和8年〔2026年〕3月31日)を延長しないこととされたため、同日より後に行う贈与では利用できません。以下は、すでに拠出済みの資金がある方向けの説明です。
この特例は、直系尊属から30歳未満の子や孫に教育資金を一括贈与した場合、受贈者1人につき1,500万円まで(学校等以外への支払いは500万円が上限)を非課税とするものでした。
すでにこの特例を使って信託銀行等の専用口座に拠出している場合、制度が終了しても口座の管理は継続します。次の点にご注意ください。
- 教育資金に充てた領収書等の提出は引き続き必要
- 受贈者が30歳に達した時点で残額がある場合、その残額に贈与税が課税される
- 贈与者が死亡した場合、一定の要件に該当すると残額が相続税の課税対象となる
なお、教育費をその都度必要な分だけ支払う場合は、扶養義務者相互間の生活費・教育費として、もともと贈与税の課税対象になりません(相続税法第21条の3)。一括贈与の特例が終了しても、この扱いは変わりません。まとまった額を一度に渡すのではなく、必要になった時点で支払う方法をご検討ください。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税特例
直系尊属から18歳以上50歳未満の子や孫に結婚・子育て資金を一括贈与した場合、1,000万円まで非課税となります(結婚関連は300万円が上限)。
贈与税の配偶者控除(おしどり贈与)
婚姻期間が20年以上の配偶者から、居住用不動産または居住用不動産の取得資金の贈与を受けた場合、基礎控除110万円に加えて最高2,000万円まで控除できます。
贈与税の申告期限はいつ?
贈与税の申告は、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに行います。暦年課税で110万円以下の贈与のみの場合は申告不要ですが、各種非課税特例や相続時精算課税を適用する場合は、たとえ納税額がゼロでも申告が必要です。
まとめ
贈与税の制度を正しく理解し、非課税特例を計画的に活用することで、次世代への円滑な財産移転が可能になります。特に2024年の改正により、相続時精算課税に基礎控除が新設され、暦年課税との選択をより慎重に検討する必要があります。
どの課税方式が有利か、どの非課税特例を活用すべきかは、ご家族の状況によって異なります。お気軽にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 贈与税の申告期限はいつまでですか?
A. 贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに、受贈者の住所地を所轄する税務署へ申告し、納付します。基礎控除110万円以下であれば原則として申告は不要ですが、相続時精算課税を選択する場合や各種非課税特例の適用を受ける場合は、税額がゼロでも申告が必要です。
Q. 暦年課税と相続時精算課税はどちらを選ぶべきですか?
A. 一概には決められません。暦年課税は毎年110万円まで非課税で長期にわたる移転に向く一方、相続開始前一定期間内の贈与は相続財産に加算されます。相続時精算課税は累計2,500万円までまとまった財産を早期に移せますが、いったん選択すると同じ贈与者からの贈与について暦年課税には戻せません。財産規模と年齢を踏まえた試算が必要です。
Q. 親からの生活費や教育費の援助にも贈与税はかかりますか?
A. 扶養義務者から受け取る生活費や教育費で、通常必要と認められる範囲のものは贈与税の課税対象になりません。ただし、受け取ったお金を預金にしたり株式や不動産の購入に充てたりした場合は、その部分が課税対象となります。都度必要な額を渡す形にしておくことが安全です。
参考にした一次情報(出典)
- 国税庁が公表するタックスアンサー(よくある税の質問)および各種パンフレット等の公表資料
- e-Gov法令検索(デジタル庁)に掲載されている関係法令の条文
実務の現場から:当事務所には、住宅資金や教育資金の援助について「贈与税がかかるのか」というご相談が多く寄せられます。特例の適用には申告が要件となるものがあり、無申告による失敗が目立ちます。
ご注意(免責事項):本記事は2026年8月3日時点の法令および公的機関の公表資料にもとづく一般的な解説です。税制・社会保険制度は改正されることがあり、同じ制度でも個別の事情によって取扱いが変わります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士など専門家にご相談ください。本記事の情報にもとづく判断により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
税理士法人みらい(税理士法人番号 第1218号)/〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北3-4-1 みらいビル2F/TEL 042-422-7440/初回相談無料。昭和58年開業・平成18年法人化、ISO9001認証取得。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、税理士法第33条の2の書面添付制度にも対応しています。