インボイス制度の実務対応ポイント

インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、消費税の仕入税額控除を受けるために、登録番号などの法定事項が記載された適格請求書(インボイス)の保存を求める制度で、2023年10月1日から始まりました。インボイスを発行できるのは、税務署に登録した適格請求書発行事業者だけです。本記事では、記載事項、登録申請の流れ、免税事業者からの仕入れに関する経過措置、実務対応チェックリストを解説します。

【令和8年度税制改正】3割特例の創設:2割特例の終了後について、個人事業者を対象に、納税額を売上税額の3割とすることができる措置が2年間(令和9年分・令和10年分)講じられます(これまで2割特例の対象だった個人事業者も含みます)。法人は対象外です。適用にあたっては国税庁の最新の公表内容をご確認いただくか、当事務所までお問い合わせください。

インボイス制度とは?

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、2023年(令和5年)10月1日にスタートした消費税の仕入税額控除に関する制度です。この制度のもとでは、買手が仕入税額控除を受けるために、売手から交付された「適格請求書(インボイス)」の保存が原則として必要になります。

従来の区分記載請求書等保存方式では、免税事業者からの仕入れについても仕入税額控除が認められていましたが、インボイス制度では適格請求書発行事業者(登録事業者)が交付するインボイスがなければ、原則として仕入税額控除ができなくなりました。

インボイスに必要な記載事項は?

適格請求書として認められるためには、以下の事項をすべて記載する必要があります。

簡易インボイスの活用

小売業、飲食店業、タクシー業など不特定多数の者に対して販売を行う事業者は、「適格簡易請求書」を交付できます。簡易インボイスでは「書類の交付を受ける事業者の氏名または名称」の記載が不要で、「税率ごとに区分した消費税額等」と「適用税率」はいずれか一方の記載で足ります。

登録申請はどう進める?

適格請求書を交付するためには、税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出し、登録を受ける必要があります。登録申請はe-Taxでも書面でも可能です。

登録を受けると、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」に登録番号や氏名・名称等が公表されます。取引先は、このサイトで登録番号の有効性を確認できます。

免税事業者の登録に関する注意

免税事業者がインボイス登録を行うと、登録日から課税事業者となります。消費税の申告・納税義務が生じるため、登録するかどうかは取引先との関係や事業規模を踏まえて慎重に検討しましょう。

免税事業者からの仕入れはどうなる?経過措置と特例

2割特例(小規模事業者に対する負担軽減措置)

免税事業者がインボイス発行事業者として登録した場合に利用できる特例です。消費税の納税額を、売上にかかる消費税額の2割にすることができます。

項目 内容
対象者 免税事業者からインボイス登録により課税事業者となった事業者
適用期間 2023年10月1日~2026年9月30日を含む課税期間
計算方法 売上税額 × 20% = 納付税額
届出 事前届出不要。確定申告時に選択可能

たとえば、売上が税込550万円(税抜500万円、消費税50万円)の場合、2割特例を使えば納税額は50万円 × 20% = 10万円となります。簡易課税や本則課税と比較して有利な方を選べるため、事前のシミュレーションが重要です。

少額特例(少額な返還インボイスの交付義務免除を含む)

一定規模以下の事業者が行う1万円未満の課税仕入れについては、インボイスの保存がなくても帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。

項目 内容
対象者 基準期間における課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者
適用期間 2023年10月1日~2029年9月30日
対象取引 税込1万円未満の課税仕入れ(1回の取引の合計額で判定)

また、税込1万円未満の売上に係る返還インボイス(値引き・返品等)の交付義務も免除されています。振込手数料を売手が負担する場合の実務処理にも活用できます。

免税事業者からの仕入れに係る経過措置

インボイス制度の開始後も、免税事業者など適格請求書発行事業者以外からの仕入れについて、一定割合の仕入税額控除が認められる経過措置が設けられています。

期間 控除割合
2023年10月1日~2026年9月30日 仕入税額相当額の80%
2026年10月1日~2029年9月30日 仕入税額相当額の50%
2029年10月1日以降 控除不可

実務対応のチェックリスト

インボイス制度への対応として、以下の項目を確認しましょう。

売手側の対応

買手側の対応

電子インボイスへの対応

適格請求書は、書面での交付に代えて、電磁的記録(電子データ)で提供することも可能です。電子インボイスを利用する場合は、電子帳簿保存法の要件に従って保存する必要があります。

Peppolなどの標準規格に対応した電子インボイスの導入も進んでおり、将来的な業務効率化を見据えた準備も重要です。

まとめ

インボイス制度は、消費税の適正な課税を実現するための重要な制度です。2割特例や少額特例などの経過措置を活用しながら、自社の実務体制を整えていくことが求められます。特に、経過措置には期限がありますので、期限到来後の対応も見据えた計画を立てましょう。

制度の詳細や自社への影響について不明な点がございましたら、お気軽にご相談ください。

よくある質問(FAQ)

Q. インボイスには何を記載する必要がありますか?

A. 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号、取引年月日、取引内容(軽減税率の対象品目である旨)、税率ごとに区分して合計した対価の額および適用税率、税率ごとに区分した消費税額等、書類の交付を受ける事業者の氏名または名称が記載事項です。小売業など不特定多数を相手にする事業では、交付先の記載を省略できる適格簡易請求書が認められています。

Q. 免税事業者からの仕入れは仕入税額控除できませんか?

A. 登録のない事業者からの課税仕入れについては、一定期間、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置が設けられています。経過措置の適用を受けるには、区分記載請求書等と同様の事項が記載された書類の保存と、経過措置の適用を受ける旨を帳簿に記載することが必要です。

Q. 登録番号はどうやって確認できますか?

A. 国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で登録番号を入力すると、登録の有無や氏名・名称、登録年月日を確認できます。継続的な取引先については、取引開始時と定期的な時点で登録状況を確認し、記録を残しておく運用をおすすめします。

参考にした一次情報(出典)

  • 国税庁が公表するタックスアンサー(よくある税の質問)および各種パンフレット等の公表資料
  • e-Gov法令検索(デジタル庁)に掲載されている関係法令の条文

実務の現場から:当事務所には、インボイス制度への対応について「登録すべきか」「請求書の記載はこれで足りるか」というご相談が多く寄せられます。取引先との関係を含めた実務目線での検討をご提案しています。

ご注意(免責事項):本記事は2026年8月3日時点の法令および公的機関の公表資料にもとづく一般的な解説です。税制・社会保険制度は改正されることがあり、同じ制度でも個別の事情によって取扱いが変わります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士など専門家にご相談ください。本記事の情報にもとづく判断により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。

税理士法人みらい(税理士法人番号 第1218号)/〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北3-4-1 みらいビル2F/TEL 042-422-7440/初回相談無料。昭和58年開業・平成18年法人化、ISO9001認証取得。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、税理士法第33条の2の書面添付制度にも対応しています。

この記事の執筆者

税理士法人みらい(税理士法人番号 第1218号/東京都西東京市ひばりが丘)。昭和58年開業、平成18年に法人化し、2023年に開業40周年を迎えました。ISO9001認証を取得し、品質管理体制のもとで税務会計サービスを提供しています。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、税務調査対応や書面添付制度(税理士法第33条の2)にも対応しています。

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