記帳代行とは、通帳・領収書・請求書などの資料から仕訳を入力し、帳簿を作る業務です。税理士事務所に頼むと、帳簿づけから試算表、決算書、申告書の作成まで一続きで任せられます。記帳の代行そのものは会計事務ですが、申告書の作成や税務相談は税理士の業務です。当事務所の新設法人の顧問料・決算報酬は売上高と月の仕訳件数が基準で、記帳代行の料金は内容をうかがってご案内します。
記帳代行で税理士事務所が行う範囲
税理士事務所の記帳代行は、資料から仕訳を入力して帳簿を作る作業が中心で、その帳簿をもとに試算表・決算書・申告書まで続けて作成できる点が特徴です。業務ごとに、税理士でなければ行えないものかどうかが分かれます。
| 業務 | 主な内容 | 税理士法上の位置づけ |
|---|---|---|
| 仕訳の入力(記帳) | 通帳・カード明細・領収書・請求書から、日付・金額・勘定科目・取引先を入力する | 会計事務(税理士業務には含まれない) |
| 帳簿の作成 | 仕訳帳・総勘定元帳・現金出納帳・売掛金元帳・買掛金元帳・固定資産台帳など | 会計事務 |
| 試算表の作成 | 月や四半期ごとに残高と損益を集計する | 会計事務 |
| 決算書の作成 | 減価償却や棚卸などの決算整理をして、貸借対照表・損益計算書を作る | 会計事務(財務書類の作成) |
| 申告書の作成・提出 | 法人税・消費税・所得税などの申告書を作成し、税務署に提出する | 税理士業務(税務書類の作成・税務代理) |
| 税務相談 | 税額の計算に関わる具体的な質問に答える | 税理士業務 |
税理士業務とは、他人の求めに応じ、税務代理・税務書類の作成・税務相談を業として行うことで、税理士・税理士法人でない者は原則として行えません(税理士法第2条・第52条)。一方、財務書類の作成や会計帳簿の記帳の代行は「会計事務」として区別されており、税理士法第2条第2項は、税理士が税理士業務に付随して会計事務を行えることを明確にしています(国税庁「税理士制度のQ&A」問2-3)。
そのため、税理士事務所に記帳代行を頼む利点は、入力した帳簿をそのまま決算と申告に使えることです。入力の段階で勘定科目や消費税の区分を申告の目線で確認できるため、決算期にまとめて直す作業を減らせます。なお、入力を外に出しても、帳簿の内容に責任を持つのは事業者自身です。国税庁の電子帳簿保存法の取扱いでも、会計事務所や記帳代行業者に入力を委託した場合は「保存義務者が主体となってその責任において」作成したものとして扱われます(電子帳簿保存法取扱通達4-3)。
記帳・試算表・決算・申告のつながり
法人税の申告は確定した決算にもとづいて行うため(法人税法第74条第1項)、日々の記帳が決算書と申告書の土台になります。記帳代行を頼む場合の一年の流れは、おおむね次のとおりです。
| 時期 | 作業 | 主に行う人(記帳代行の場合) |
|---|---|---|
| 日々 | 取引の記録を残す、領収書・請求書を保管する | 事業者 |
| 毎月など決まった間隔 | 資料の受け渡し、仕訳の入力 | 事業者が資料を渡し、事務所が入力 |
| 入力のあと | 試算表で売上・経費・残高を確認する | 事務所が作成し、事業者が内容を確認 |
| 期末 | 在庫の棚卸、未払・前払などの決算整理 | 棚卸は事業者、決算整理は事務所 |
| 期末のあと | 決算書の作成と、会社としての決算の確定 | 事務所が作成し、会社が承認 |
| 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 | 法人税・消費税などの申告と納付 | 申告書の作成・提出は税理士 |
法人は帳簿を備え付けて取引を記録し、帳簿と書類(領収書・契約書・決算書など)を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存します。青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年間です(国税庁 No.5930)。個人の青色申告者も帳簿書類を原則7年間保存し(請求書・納品書など5年間でよい書類もあります)、白色申告でも事業所得・不動産所得などがある方は記帳と保存が必要です(国税庁 No.2070・No.2080)。
資料を渡す間隔が空くと、試算表で数字を確認できる時期が遅れ、決算前の見直しに使える時間が短くなります。毎月の数字を経営に使う仕組みは月次決算を続ける仕組みのつくり方で解説しています。
自分で入力する(自計化)場合との違いと向き不向き
記帳代行は入力の手間を外に出せる一方、資料を渡してから数字が出るまでに時間差が生じます。自分で入力する自計化は日々の数字をすぐ見られる一方、入力の時間と勘定科目・消費税の区分の基本的な知識が必要です。
| 比べる点 | 記帳代行(事務所が入力) | 自計化(自社で入力し、事務所が確認) |
|---|---|---|
| 入力の手間 | 資料を整理して渡す | 自社で入力する |
| 数字を見られる時期 | 資料を渡し、入力が終わってから | 入力した時点 |
| 必要な知識 | 少なくてよい(資料をそろえる習慣は必要) | 勘定科目・消費税の区分の基本 |
| 会計ソフト | 事務所側で入力する | 自社で用意する(クラウド会計など) |
| 費用 | 入力の作業量(仕訳件数など)の分が加わる | 入力の作業分はかからないが、確認・決算・申告の費用はかかる |
| 向いている方 | 経理の担当者がいない、本業に時間を使いたい、取引の件数がそれほど多くない | 経理の担当者がいる、月次の数字を早く見たい、銀行やカードの明細をデータで取り込める |
両方の中間として、日々の入力は自社で行い、決算整理と申告を事務所に任せる形もあります。開業直後は記帳代行で始め、取引の流れがつかめてから自計化に切り替える方法もあります。クラウド会計で銀行明細を取り込む場合の注意点はクラウド会計導入時の税務上の論点と実務注意点で整理しています。
なお、当事務所の新設法人サービスパック(設立1期目の法人向け)は、帳簿の入力をご自身で行っていただける方が対象です(必要な帳簿は当法人でご用意します)。設立1期目から記帳代行をご希望の場合はこの条件に当たらないため、内容をうかがって料金をご案内します。
依頼するときに渡す資料
記帳代行で渡す資料は、お金の動きがわかる通帳やカードの明細と、取引の中身がわかる領収書・請求書が中心です。初めて依頼する場合は、前期の決算書と申告書もあわせて用意します。
| 資料 | 記帳に使う内容 | そろえるときの注意 |
|---|---|---|
| 預金通帳(ネットバンキングの明細データ) | 入金・出金 | 事業で使う口座はすべて |
| クレジットカードの利用明細 | 経費の支払い | 事業で使うカードはすべて |
| 現金出納帳・レジの記録 | 現金での売上・支払い | 現金の残高と合っているか |
| 領収書・レシート | 経費の内容 | 何のための支出か、メモがあると入力が早い |
| 発行した請求書・受け取った請求書、納品書 | 売上・仕入、売掛金・買掛金 | インボイス(適格請求書)の登録番号の有無 |
| 給与台帳・賃金の資料 | 給与・源泉所得税 | 給与計算も依頼するかどうか |
| 借入金の返済予定表 | 元本と利息の区分 | 借入ごとに |
| 賃貸借・リース・保険などの契約書 | 毎月の支払いの内容 | 新しく契約したとき |
| 設備や車両を買ったときの請求書 | 固定資産・減価償却 | 使い始めた日がわかるもの |
| 前期の決算書・申告書(初めて依頼する場合) | 期首の残高 | 勘定科目内訳明細書も |
消費税の課税事業者が仕入税額控除を受けるには、一定の事項を記載した帳簿と請求書等(適格請求書等)の両方を保存する必要があります(国税庁 No.6625)。記帳が終わった資料は事業者の手元に戻し、保存期間が終わるまで保管してください。給与計算に伴う社会保険・労働保険の手続きは社会保険労務士の業務のため、グループの社会保険労務士法人みらいが担当します。
電子帳簿保存法と記帳代行
記帳代行で作った会計ソフトの帳簿も、要件を満たせば電子データのまま保存できます。国税庁の取扱いでは、会計事務所や記帳代行業者に入力を委託している場合も、電子帳簿保存法第4条の「自己が」作成する場合に含まれるとされています(電子帳簿保存法取扱通達4-3)。ただし、記帳の時期と保存場所には決まりがあります。
| 確認すること | 国税庁の取扱い |
|---|---|
| 委託して作った帳簿の電子保存 | 会計事務所や記帳代行業者への委託は認められる |
| 記帳の時期 | 課税期間中に記帳せず、期間終了後にまとめて記帳することを委託する方法は、書面・電子データを問わず認められない |
| 保存場所 | 記帳代行業者の所在地は認められない。事業者の事業所等に、帳簿のデータを画面や書面に出力できるパソコン・ディスプレイ等を備える |
| 受け取るデータの形式 | PDFだけでなく、検索できるCSV形式等のデータも受け取り、税務調査の際のダウンロードの求めに応じられるようにしておく |
| メールやWebで受け取った請求書・領収書(電子取引) | 電子データのまま保存する義務がある(電子帳簿保存法第7条)。改ざん防止の措置、ディスプレイ等の備付け、日付・金額・取引先での検索が原則の要件 |
表の上から4つは、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」の問20・問22によります。記帳代行を頼む場合は、入力したデータを定期的に受け取り、事業所で見られるようにしておきます。
電子取引のデータは、原則のルールに対応できなかったことに相当の理由があると税務署長が認め、税務調査の際にデータのダウンロードの求めと、出力した書面の提示・提出の求めに応じられるようにしている場合には、保存しておくだけでよいとする猶予措置があります(国税庁「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について」令和6年11月)。記帳代行を頼んでいても、メールで届いた請求書のデータを消さずに保存するのは事業者の側の作業です。対応状況の確認は電子帳簿保存法の対応状況セルフチェックをご覧ください。
料金の決まり方
新設法人の顧問料・決算報酬は、「新設法人の顧問料等報酬料金表」のとおり、申告期の売上高(営業外収益・特別利益を含む)と月あたりの仕訳件数を基準にしています。既存の法人・個人事業主の方の顧問料と記帳代行の料金は、内容をうかがってご案内します。
| 年間売上高(月の仕訳件数) | 顧問報酬(月額) | 決算報酬 | 年間報酬合計 |
|---|---|---|---|
| 500万円未満(50件未満) | 25,000円 | 150,000円 | 450,000円 |
| 1,000万円未満(100件未満) | 30,000円 | 180,000円 | 540,000円 |
| 3,000万円未満(150件未満) | 35,000円 | 210,000円 | 630,000円 |
| 5,000万円未満(200件未満) | 40,000円 | 240,000円 | 720,000円 |
| 1億円未満(300件未満) | 50,000円 | 300,000円 | 900,000円 |
上の表は「新設法人の顧問料等報酬料金表」からの抜粋です。新設法人の顧問契約の料金で、記帳代行の料金ではありません。全段階はサービス案内に掲載しています。消費税の確定申告書は顧問報酬に含み、給与計算は5,000円〜、年末調整事務は20,000円〜、税務相談は無料です。
記帳代行の作業量は、主に次の点で変わります。
- 月の仕訳件数:売上・仕入・経費の取引の数
- 口座・カードの数:事業で使う預金口座やクレジットカードが多いほど確認が増える
- 資料のそろい方:明細がデータで届くか、紙の領収書が中心か
- 現金取引の多さ:現金の売上・支払いが多いと、出納帳との突き合わせが増える
- 消費税の申告の有無:課税事業者は、取引ごとに税率や区分の確認が必要
見積りの前に、事業で使う口座とカードの一覧、1か月分の通帳と領収書の量がわかると、作業量を具体的にお伝えできます。顧問料の内訳や比べ方は税理士の顧問料の相場と選び方で解説しています。
よくある質問
Q. 記帳代行は税理士以外に頼んでもよいですか?
A. 会計帳簿の記帳の代行は、税理士法第2条第1項の税理士業務(税務代理・税務書類の作成・税務相談)に含まれない会計事務で、税理士以外に頼むこともできます。ただし、他人の求めに応じて申告書の作成や税務相談を業として行うことは、原則として税理士・税理士法人でなければできません(税理士法第52条)。記帳から申告まで同じ窓口で進めたい場合は、税理士事務所への依頼が向いています。
Q. 記帳代行を頼む場合、資料はどのくらいの頻度で渡せばよいですか?
A. 帳簿は課税期間中に取引を順次記録するものとされており、国税庁の電子帳簿保存法一問一答では、課税期間中に記帳せず期間終了後にまとめて記帳することを委託する方法は認められないとされています。毎月など決まった間隔で資料を渡し、試算表で数字を確認できる形にしておくと、決算前の確認も進めやすくなります。
Q. 記帳代行を頼んでも、領収書や請求書は自分で保管しますか?
A. はい。帳簿書類を保存する義務は事業者にあり、法人は確定申告書の提出期限の翌日から7年間(青色申告で欠損金が生じた事業年度などは10年間)、個人の青色申告者は原則7年間(請求書・納品書など5年間でよい書類もあります)保存します。会計ソフトの帳簿を電子データで保存する場合も、保存場所は事業者の事業所等とされ、記帳代行業者の所在地にすることは認められていません。
Q. 記帳代行の料金はいくらですか?
A. 新設法人の顧問料・決算報酬は、「新設法人の顧問料等報酬料金表」のとおり、申告期の売上高と月あたりの仕訳件数を基準にしています。既存の法人・個人事業主の方の顧問料と記帳代行の料金は、仕訳の件数、口座やカードの数、資料のそろい方などの内容をうかがってご案内します。なお、新設法人サービスパックは、帳簿の入力をご自身で行っていただける方が対象です。
まとめ
記帳代行は、資料から仕訳を入力して帳簿を作る会計事務です。税理士事務所に頼むと、帳簿を試算表・決算書・申告書まで続けて使えます。自計化は数字をすぐ見られる一方で入力の手間がかかり、記帳代行は手間を外に出せる一方で数字が出るまでに時間差があります。どちらの場合も、資料は毎月など決まった間隔で渡し、帳簿書類は事業者の側で保存します。電子帳簿として保存するなら、データを定期的に受け取り、事業所で見られるようにしておきます。当事務所の新設法人の顧問料・決算報酬は売上高と月の仕訳件数が基準で、記帳代行や既存の法人・個人事業主の方の料金は内容をうかがってご案内します。
国税庁「税理士制度のQ&A」(問2-1・問2-3・問6-1)、国税庁 タックスアンサーNo.5930「帳簿書類等の保存期間」、No.2070「青色申告制度」、No.2080「白色申告者の記帳・帳簿等保存制度」、No.6625「適格請求書等の記載事項」、国税庁「電子帳簿保存法の概要」「電子帳簿保存法取扱通達」「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)」「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(令和6年11月)」、e-Gov法令検索(税理士法第2条・第52条、電子帳簿保存法第4条・第7条、法人税法第74条)。本記事は2026年10月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
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