令和8年度(2026年度)税制改正は令和8年3月31日に成立し、多くの項目が令和8年4月1日以後に開始する事業年度や取得する資産から適用されています。中小企業が決算・経理で手を動かすのは、防衛特別法人税の申告、賃上げ促進税制の控除率の見直し、設備投資の金額要件の確認、インボイスの70%控除への切り替えなどです。制度ごとの「いつから・誰に」の一覧は令和8年度税制改正で中小企業・個人事業主が確かめることにまとめているため、本記事では決算・経理・設備投資の場面でする作業に絞って整理します。
改正の全体像と、この記事で扱う作業
令和8年度税制改正は、与党の税制改正大綱(令和7年12月19日)と政府の大綱の閣議決定(同月26日)を経て、「所得税法等の一部を改正する法律案」が令和8年2月20日に国会に提出され、3月31日に可決・成立し、同日に公布されました(令和8年法律第12号。財務省「令和8年度税制改正の解説」)。防衛特別法人税は前年の令和7年度改正で創設されたもので、適用が始まったのが令和8年4月1日以後に開始する事業年度です。
| 作業 | いつから | 主に関わる場面 |
|---|---|---|
| 防衛特別法人税の申告書(別表一次葉一)の作成と納税資金の見込み | 令和8年4月1日以後に開始する事業年度 | 決算・確定申告 |
| 賃上げ促進税制の控除率の見込みから、教育訓練費の上乗せを外す | 法人:令和8年4月1日以後に開始する事業年度/個人:令和9年分 | 決算前の試算 |
| 中小企業経営強化税制の工具・器具備品の金額要件(40万円以上)の確認 | 令和8年4月1日以後に取得する設備 | 設備投資の発注前 |
| 少額減価償却資産の特例(40万円未満)の確認 | 令和8年4月1日以後に取得する資産 | 購入時・決算 |
| 免税事業者などからの仕入れの控除割合を70%に切り替える | 令和8年10月1日以後の課税仕入れ | 日々の経理・会計ソフトの設定 |
基礎控除・給与所得控除の引上げなど個人の所得税の改正は、上記の一覧記事をご覧ください。優遇制度の取りこぼしを防ぐため、法人税の節税対策|中小企業が活用すべき制度もあわせてご確認ください。
防衛特別法人税の申告と資金繰り
防衛特別法人税は、令和7年度改正(所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)、令和7年3月31日公布)で創設され、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から適用されています。各事業年度の所得に対する法人税が課される法人が納税義務者で、税額は、所得税額控除など一定の税額控除を適用しないで計算した法人税の額(基準法人税額)から年500万円を控除した金額に4%を掛けて計算します(国税庁「防衛特別法人税が創設されました」)。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 計算のもと | 基準法人税額(所得税額控除・外国税額控除など一定の税額控除を適用しないで計算した法人税の額)。ここから基礎控除額を引いた額(課税標準法人税額)に4%を掛けます |
| 税率 | 4% |
| 基礎控除 | 年500万円(事業年度が1年に満たない場合は月数で按分) |
| 適用開始 | 2026年(令和8年)4月1日以後開始事業年度 |
| 申告 | 税額が0円でも申告が必要。申告書は法人税・地方法人税と一体の様式で、別表一の防衛特別法人税の記載欄は別葉(別表一次葉一) |
| 中間申告 | 令和9年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税の中間申告書を出す法人が対象 |
手を動かすことは2つです。1つは申告書の別葉を出し忘れないことで、赤字などで税額が0円の法人も、別表一次葉一の該当欄に「0」と記載して提出します。3月決算の法人なら、令和8年4月1日から始まった事業年度(令和9年3月期)の確定申告が最初です。もう1つは納税資金の見込みで、資本金1億円以下の中小法人で、所得年800万円以下の部分に軽減税率15%、それを超える部分に23.2%が適用される場合、税額控除がないものとした単純計算では、所得がおおむね2,440万円を超えると法人税額が年500万円を超え、その超える部分の4%が防衛特別法人税になります(国税庁 タックスアンサーNo.5759「法人税の税率」をもとに当事務所で計算)。この規模の法人は、資金繰り計画に上乗せ分を織り込みます。中間申告の時期は法人の中間申告は必要?いつまで?決算月別の期限と判定基準で整理しています。
賃上げ促進税制の控除率の見直し
中小企業向けの賃上げ促進税制は存続し、雇用者給与等支給額(国内雇用者全体の給与等の合計額)が前期より1.5%以上増えた場合に増加額の15%、2.5%以上で30%を税額控除し、子育て・女性活躍に関する認定による5%の上乗せも残ります。廃止されたのは、教育訓練費を増やした場合の上乗せ(10%)で、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から最大の控除率は35%(改正前45%)になります(改正法附則第50条)。対象は令和9年3月31日までに開始する事業年度で、今回の改正で期限は延長されていません。なお、全企業向けの措置は令和8年3月31日をもって廃止され、中堅企業向けの措置は適用期限(令和9年3月31日)の到来をもって廃止されます(国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」、財務省「令和8年度税制改正の解説」(租税特別措置法等(法人税関係)の改正))。
- 控除上限は調整前法人税額の20%
- 控除しきれない金額は5年間の繰越控除が可能(中小企業のみ)
- 中小企業向けの措置は、継続雇用者ではなく国内雇用者全体の給与等支給額で前期と比べる
- 12月決算法人の令和8年12月期や、9月〜11月決算法人の令和8年9月期〜11月期など、令和8年4月1日より前に始まった事業年度は、教育訓練費の上乗せを含む改正前の内容で判定する
- 個人事業主の教育訓練費の上乗せの廃止は、令和9年分以後の所得税から
決算前の作業は、給与等支給額を前期と比べて15%・30%のどちらになるかを試算し、教育訓練費の上乗せを見込みから外すことです。申告では、別表六(二十四)と付表一(令和8年4月1日以後に終了する事業年度分の様式)と適用額明細書を添付します。改正の内容は中小企業の賃上げ促進税制(2026年度)活用ガイド、手順と計算例は賃上げ促進税制の適用ステップと計算例|令和8年度改正対応で解説しています。税理士法人みらいでは、顧問・決算業務の中で、決算前に給与等支給額の前期比を確認し、適用できる控除率の判定と明細書の作成を担当します。顧問の内容は税務・会計顧問でご覧いただけます。
中小企業経営強化税制・投資促進税制と少額減価償却資産
中小企業経営強化税制(即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)の税額控除)と中小企業投資促進税制(30%の特別償却。特定中小企業者等は7%の税額控除との選択)は、いずれも令和9年3月31日までに取得等をして事業の用に供した設備が対象で、令和8年度改正では期限は延長されていません。改正されたのは主に金額の要件です。
- 中小企業経営強化税制:対象となる工具、器具及び備品の取得価額の要件が、1台または1基40万円以上(改正前30万円以上)に引き上げられました。令和8年4月1日以後に取得等をする設備から適用されます。
- 中小企業投資促進税制:測定工具・検査工具を1事業年度の合計額(120万円以上)で判定する場合に合計できる工具が、1台または1基40万円以上(改正前30万円以上)のものになりました。令和8年4月1日以後に終了する事業年度から適用され、同日をまたぐ事業年度では、同日前に取得した工具は30万円以上、同日以後に取得した工具は40万円以上のものを合計します。
- 少額減価償却資産の特例:青色申告の中小企業者等が取得価額40万円未満(改正前30万円未満)の資産の全額を損金にできる特例(合計年300万円まで)は、令和8年4月1日以後に取得したものから適用され、期限は令和11年3月31日まで延長されました。また、同日以後に取得する分から、対象となる法人は常時使用する従業員の数が400人以下(改正前500人以下)に引き下げられました。
- 産業競争力強化法の特定生産性向上設備等の投資計画について経済産業大臣の確認を受けた法人(新設の特定生産性向上設備等投資促進税制の対象)は、その投資計画の期間内の日を含む事業年度では、中小企業経営強化税制の特別償却・税額控除を適用できません(繰越税額控除は使えます)。
発注の前にすることは、設備の1台あたりの取得価額が新しい金額の要件を満たすかと、経営力向上計画の認定の時期を確かめることです(財務省「令和8年度税制改正の解説」、国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」、中小企業庁「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和8年度税制改正対応版)」)。
Q. 設備投資のタイミングで迷った場合は?
A. 中小企業経営強化税制は、経営力向上計画の認定が前提です。申請から認定までの標準処理期間は約30日(複数の省庁にまたがる場合は約45日。経営力向上計画申請プラットフォームによる経済産業部局宛ての電子申請は約14日(休日等を除く))です。設備は原則として取得前に認定を受ける必要があり、申請前に取得する場合は申請書の到達日から遡って60日以内の取得に限られます(事業承継等を伴う設備取得やE類型は除きます)。この場合も、設備を取得して事業に使い始めた事業年度内に認定を受けなければ税制は使えません。また、類型に応じて工業会等の証明書(A類型)か経済産業大臣の確認書(B・D・E類型)を計画の申請前に取得する必要があり、証明書・確認書の申請は設備の取得前に行います。このため、発注の前に準備を始めるのが安全です。
購入の時期と減価償却の考え方は決算前の設備投資は得か損か|減価償却と特例の判断基準でも解説しています。
税理士に相談したほうがよい場合
- 所得が年2,000万円を超える見込みで、令和8年4月1日以後に始まった事業年度の納税額を、防衛特別法人税を含めて決算前に知りたい
- 9月〜2月決算で、改正前と改正後のどちらの内容で判定する事業年度か迷う
- 30万円以上40万円未満の工具・器具備品の購入を予定していて、少額減価償却資産の特例と経営強化税制のどちらが使えるか確かめたい
- 免税事業者からの仕入れが多く、70%控除への切り替えと1者あたり1億円の上限の管理が必要
税理士法人みらいでは、顧問・決算業務の中で、その事業年度に当てはまる改正項目を確かめ、決算前の納税額の試算、申告書・明細書の作成、設備投資の特例の要件の確認を担当します。決算と申告だけのご依頼との違いは決算だけ税理士に頼める?依頼できる範囲と、年1回の依頼で気をつけること、日々の記帳からのご依頼は記帳代行を税理士に頼む範囲と料金|自分で入力する場合との違いをご覧ください。ご相談はお問い合わせからどうぞ。
電子帳簿保存法とインボイス制度の運用論点
電子取引データの保存
電子メールやウェブサイトで受け取った(または送った)請求書・領収書などの電子取引データは、電子のまま保存することが義務付けられています。令和8年度改正で電子取引データの保存のルールそのものは変わっていませんが、対応が済んでいない場合は次の点を社内で統一します(国税庁「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(令和6年11月)」)。
- 改ざん防止の措置を1つとる(タイムスタンプが付いたデータの受領、受領後のタイムスタンプの付与、訂正・削除の履歴が残るシステムでの授受・保存、事務処理規程の策定・運用のいずれか)
- 「日付・金額・取引先」で検索できるようにする(表計算ソフトの索引簿や、規則的なファイル名での保存でも可。基準期間の売上高が5,000万円以下の事業者などは、税務調査でデータのダウンロードの求めに応じられれば検索の要件は不要)
- ディスプレイ・プリンタなどの確認できる環境を備える
人手不足やシステムの整備が間に合わないなど相当の理由があると所轄税務署長が認め、税務調査の際にデータのダウンロードと印刷した書面の提示・提出の求めに応じられる場合は、データを保存しておくだけでよい猶予措置もあります。個人事業主は、令和9年分から、優良な電子帳簿などの要件を満たしてe-Taxで申告すると、青色申告特別控除が75万円になります(国税庁「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?(令和8年6月)」)。詳しくは電子帳簿保存法の対応状況セルフチェック|3つの区分で確認をご覧ください。
インボイスの経過措置(70%控除)
免税事業者などインボイスを発行できない事業者からの課税仕入れに認められている経過措置は、令和8年度改正で見直されました。仕入税額相当額の80%を控除できたのは令和8年9月30日までで、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%、その後は50%(令和12年9月30日まで)、30%(令和13年9月30日まで)と段階的に縮みます。また、令和8年10月1日以後に開始する課税期間からは、1の免税事業者などからの課税仕入れの合計額(税込み)がその年・事業年度で1億円(改正前10億円)を超える部分には、経過措置を使えません(国税庁 インボイスQ&A 問113)。
- 10月1日以後の課税仕入れについて、会計ソフトの控除割合が70%に切り替わっているかを確かめる(9月と10月にまたがる取引は課税仕入れの時期で判定し、役務は原則として全部が完了した日、商品は原則として引渡しの日で見る。国税庁 インボイスQ&A 問113-3)
- 帳簿に、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を引き続き記載する
- 1者からの仕入れが多い場合は、令和8年10月1日以後に始まる課税期間(原則として、個人事業者は令和9年分、3月決算の法人は令和9年4月1日に始まる事業年度)から、1億円の上限に近づいていないかを確かめる
インボイスの登録で課税事業者になった事業者の2割特例は、令和8年9月30日を含む課税期間までです(国税庁 インボイスQ&A 問114)。実務の対応はインボイス経過措置が70%に|10月以後の請求書・帳簿の確認点、2割特例のあとの選び方は消費税の2割特例はいつまで?終了後の3割特例と簡易課税の届出で解説しています。
まとめ
2026年度(令和8年度)税制改正と、同じ時期に始まった防衛特別法人税で中小企業が手を動かすのは、①防衛特別法人税の申告書(税額0円でも提出)と納税資金の見込み、②賃上げ促進税制の見込みから教育訓練費の上乗せを外すこと(令和8年4月1日以後に開始する事業年度から最大35%)、③設備投資の発注前に40万円の金額要件と経営力向上計画の認定時期を確かめること、④免税事業者などからの仕入れを70%控除に切り替えることです。どの項目も「いつ開始した事業年度か」「いつ取得・仕入れたか」で扱いが分かれるため、自社の決算月に当てはめて確かめてください。制度ごとの適用時期の一覧は令和8年度税制改正で中小企業・個人事業主が確かめることをご覧ください。
参考にした一次情報(出典)
- 財務省「令和8年度税制改正の解説」(令和8年度税制改正について、租税特別措置法等(所得税関係)の改正、租税特別措置法等(法人税関係)の改正、地方税法等の改正)
- 国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」「防衛特別法人税が創設されました(令和7年5月、令和8年6月改訂)」
- 国税庁 タックスアンサーNo.5759「法人税の税率」、No.5927-2「給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除(中小企業者等における賃上げ促進税制)」、国税庁「令和8年4月以降に提供した法人税等各種別表関係」
- 国税庁「電子帳簿保存法対応!令和6年1月以降の電子取引データの保存方法について(令和6年11月)」「電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?(令和8年6月)」
- 国税庁 インボイスQ&A 問113・問113-3・問114(令和8年4月改訂・追加)
- 中小企業庁「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和8年度税制改正対応版)」「経営力向上計画策定の手引き」「経営力向上計画の申請について」
- e-Gov法令検索:租税特別措置法第42条の12の5(いずれも2026年10月時点)
実務の現場から:当事務所には、改正内容が自社にどう影響するかというご相談が毎年多く寄せられます。改正は適用時期が分かれることが多いため、施行日の確認をおすすめしています。
ご注意(免責事項):本記事は2026年10月時点の法令および公的機関の公表資料にもとづく一般的な解説です。税制・社会保険制度は改正されることがあり、同じ制度でも個別の事情によって取扱いが変わります。実際のご判断にあたっては、税理士など専門家にご相談ください。本記事の情報にもとづく判断により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
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