事業承継の相談先は、内容によって分かれます。株式や事業用の財産の移し方と、贈与税・相続税などの税金は税理士、従業員の雇用や社会保険の手続きは社会保険労務士、許認可の引き継ぎは行政書士(介護保険の指定は社会保険労務士)、登記は司法書士、後継者探しやM&Aの公的な相談は事業承継・引継ぎ支援センターが窓口です。
相談先と役割の早見表
事業承継は、税金・雇用・許認可・登記の手続きが同時に動くため、相談したい内容から窓口を選ぶと迷いにくくなります。
| 相談したいこと | 相談先 | 補足 |
|---|---|---|
| 自社株の評価、贈与税・相続税、事業承継税制、株式を売ったときの税金、承継後の決算・申告 | 税理士 | 税務代理・税務書類の作成・税務相談は税理士法第2条の税理士業務 |
| 従業員の雇用の引き継ぎ、社会保険・労働保険の手続き、介護保険の事業所指定の申請・届出 | 社会保険労務士 | 介護保険法を含む労働社会保険諸法令にもとづく申請書等の作成・提出代行は社会保険労務士の業務(グループの社会保険労務士法人みらい) |
| 許認可の承継・新規申請(建設業、飲食店など) | 行政書士 | 官公署に提出する書類の作成(グループの行政書士法人みらい) |
| 役員の変更、本店移転などの登記 | 司法書士 | 登記は司法書士の業務 |
| 株主や相続人の間の争い、遺留分をめぐる交渉 | 弁護士 | 紛争・交渉は弁護士の業務 |
| 後継者探し、第三者への引き継ぎ(M&A)、親族内承継の計画づくり | 事業承継・引継ぎ支援センター | 47都道府県に設置された公的な相談窓口 |
| 事業承継税制(特例措置)の特例承継計画の提出 | 都道府県(東京都) | 認定経営革新等支援機関の指導・助言を受けて作成 |
承継の方法(親族内・従業員・第三者)の選び方と準備の時期は事業承継はいつ相談すべき?親族内・従業員・M&Aの選び方で解説しています。この記事では「どの手続きを誰に頼むか」に絞って整理します。
承継の方法ごとの税務の論点
税務の中心は、親族内承継では自社株の評価と贈与税・相続税、従業員や第三者への承継では株式の売買価格と譲渡所得の税金です。
| 承継の方法 | 主な税務の論点 |
|---|---|
| 親族内承継(子などへ) | 取引相場のない株式の評価(会社の規模などに応じて類似業種比準方式・純資産価額方式などで評価)、贈与税・相続税、贈与の方法(暦年課税・相続時精算課税)、事業承継税制(特例措置)を使うかどうか |
| 従業員・役員への承継 | 後継者が株式を買い取る資金。株式を売った個人の譲渡益は申告分離課税(所得税15%・住民税5%、このほか復興特別所得税。令和9年分からは防衛特別所得税も加わります)。個人から時価より著しく低い価額で譲り受けると、差額は贈与により取得したものとみなされる。株式を贈与で引き継ぐ場合は、事業承継税制の要件(後継者の議決権の割合、役員であることなど)を満たすか |
| 第三者への承継(M&A) | 株式を譲渡するか、事業を譲渡するか。株式譲渡は売った株主個人の譲渡所得の課税。事業譲渡は会社が資産を譲渡するため、会社の法人税と、営業権や設備などの課税資産にかかる消費税を検討する(土地は非課税) |
贈与の方法の選び方は生前贈与の暦年課税と相続時精算課税|2026年の選び方もあわせてご覧ください。
許認可がある事業は、承継の方法で手続きが変わる
株式を譲渡する方法なら法人は変わらないため、許認可は原則として法人に残ります(役員や管理者が替わる場合は、変更の届出や要件の確認が必要になることがあります)。一方、事業譲渡で運営する法人が変わる場合は、業種によって許認可を取り直すことがあります。
| 業種(許認可) | 事業譲渡で運営する法人が変わる場合 |
|---|---|
| 介護サービス(例:地域密着型通所介護の指定) | 譲受側の新規指定申請と、譲渡側の廃止届が必要。地域密着型通所介護(利用定員18人以下)の指定・監督は区市町村で、準備には自治体の締切から逆算して数か月かかる |
| 建設業(建設業許可) | 事前に認可を受ければ、譲受人が建設業者としての地位を承継できる(令和2年10月1日から) |
| 飲食店など(食品衛生法の営業許可・届出) | 営業の全部を譲渡した場合は、譲受人が地位の承継を届け出る(令和5年12月13日以降の譲渡が対象。営業の一部の譲渡は対象外) |
建設業・飲食店などの許認可の申請・届出の書類作成は行政書士の業務のため、グループの行政書士法人みらいが担当します。介護保険法にもとづく指定申請・届出の書類作成は社会保険労務士の業務とされており(名古屋市「介護保険事業者指定申請の手引き」)、グループの社会保険労務士法人みらいと担当を確認してご案内します。デイサービスなど介護・障害福祉の事業の引き継ぎは介護・障害福祉の事業承継と開業|税務と社会保険の手続きをまとめてで詳しく解説しています。事業譲渡では従業員の雇用をどう引き継ぐかも決める必要があり、雇用契約や社会保険の手続きはグループの社会保険労務士法人みらいが担当します。
事業承継税制(特例措置)の期限
非上場株式の贈与税・相続税の納税が猶予される事業承継税制の特例措置は、計画の提出期限と、贈与・相続の期限が別です。
| 期限 | 法人版 | 個人版 |
|---|---|---|
| 承継計画の提出 | 令和9年(2027年)9月30日(特例承継計画) | 令和10年(2028年)9月30日(個人事業承継計画) |
| 贈与・相続の期限 | 令和9年(2027年)12月31日 | 令和10年(2028年)12月31日 |
特例承継計画は会社が作成し、認定経営革新等支援機関(商工会、商工会議所、金融機関、税理士など)が指導・助言を行って所見を記載したうえで、都道府県(東京都)に提出します。なお、医療法人や社会福祉法人などは、この制度の中小企業者に該当しません(東京都産業労働局)。残りの期間でやるべきことは特例承継計画の提出期限は令和9年9月30日|残り1年で何をすべきかにまとめています。
公的な相談窓口(事業承継・引継ぎ支援センター)
事業承継・引継ぎ支援センターは47都道府県に設置され、後継者が未定・不在の中小企業・小規模事業者に、課題解決に向けた助言、情報提供、マッチング支援を行っています(中小企業基盤整備機構)。親族内承継の計画づくりの支援、第三者承継の支援、後継者人材バンクがあります。
東京都には、千代田区丸の内の「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」と、立川市の「東京都多摩地域事業承継・引継ぎ支援センター」があります。多摩地域のセンターは、国が設置した公的機関で、相談は無料・秘密厳守と案内しています。
西東京市では、東京都多摩地域事業承継・引継ぎ支援センターの相談員による事業承継個別相談会(無料・完全予約制)を、令和8年度は毎月第4水曜日(9月のみ第5水曜日)に田無第二庁舎で開いています。今後の日程は10月28日、11月25日、12月23日、令和9年1月27日、2月24日、3月24日で、各日の1週間前までに西東京市の産業振興課へ申し込みます。対象は、市内に事業所を構える中小企業・個人事業主などです。公的窓口で方向性を整理し、株式の評価や申告は税理士に依頼する、という使い分けもできます。
事業承継にかかる費用の内訳
事業承継の費用は、専門家への報酬、税金、登記などの実費に分けると見通しを立てやすくなります。
| 費用 | 内容 | 金額の決まり方 |
|---|---|---|
| 専門家への報酬 | 税理士(株式の評価、申告など)、社会保険労務士、行政書士、司法書士、M&Aの仲介・助言 | 依頼の内容で異なる。当事務所の事業承継の料金は、内容をうかがってご案内します |
| 税金 | 贈与税・相続税、株式を売った人の譲渡所得の税金、事業譲渡の場合の法人税・消費税 | 株式の評価額と承継の方法で変わる。事業承継税制で納税が猶予される場合がある |
| 登録免許税 | 取締役・代表取締役などの変更の登記 | 申請1件につき3万円(資本金1億円以下の会社は1万円) |
| 許認可の手数料 | 新規申請や承継の手続き | 業種・自治体による |
| 公的窓口の相談 | 東京都多摩地域事業承継・引継ぎ支援センター、西東京市の個別相談会 | 無料 |
税理士法人みらいにご相談いただけること
当事務所では、税理士として自社株の評価、贈与税・相続税の申告、事業承継税制を使うかどうかの検討、株式を譲渡したときの税金、承継後の顧問(記帳・決算・申告、給与計算)をお受けします。社会保険・労働保険の手続きはグループの社会保険労務士法人みらい、許認可は行政書士法人みらいが担当し、相続のご相談窓口として相続サポートセンターがあります。登記は司法書士の業務、争いのある案件は弁護士の業務です。
福祉・医療分野のお客様をご支援しています。一部は顧客紹介のページでご紹介しています。事業承継の料金は、承継の方法、株式の評価の内容、申告の有無などをうかがってご案内します。初回相談は無料です。
よくある質問
Q. 事業承継は、まず誰に相談すればよいですか?
A. 後継者が決まっていて、株式や財産の移し方と税金を確認したい場合は税理士が窓口になります。後継者が決まっていない場合や、第三者への引き継ぎを考えている場合は、事業承継・引継ぎ支援センターに相談できます。従業員の雇用や社会保険の手続きは社会保険労務士、許認可は行政書士、登記は司法書士の業務です。
Q. 事業承継・引継ぎ支援センターの相談は有料ですか?
A. 東京都多摩地域事業承継・引継ぎ支援センターは、国が設置した公的機関で、相談は無料と案内しています。西東京市では、同センターの相談員による事業承継個別相談会(無料・完全予約制)を、令和8年度は毎月第4水曜日(9月のみ第5水曜日)に開いています。
Q. 事業承継にはどんな費用がかかりますか?
A. 専門家への報酬、贈与税・相続税や株式を売った人の譲渡所得の税金などの税金、役員の変更登記の登録免許税(申請1件3万円、資本金1億円以下の会社は1万円)、許認可の申請などの手数料があります。当事務所の事業承継の料金は、承継の方法や株式の評価の内容をうかがってご案内します。
Q. 許認可が必要な事業を引き継ぐときは、何に注意すればよいですか?
A. 株式を譲渡する方法なら法人は変わらないため、許認可は原則として法人に残ります。事業譲渡で運営する法人が変わる場合、介護サービスの指定は譲受側の新規指定申請が必要で、建設業は事前の認可、飲食店などの営業許可は営業の全部を譲渡したときの地位の承継の届出で引き継ぎます。建設業や飲食店などの許認可は行政書士、介護保険の指定申請・届出は社会保険労務士の業務です。
まとめ
事業承継の相談先は、税金は税理士、雇用と社会保険は社会保険労務士、許認可は行政書士、登記は司法書士、争いは弁護士、後継者探しやM&Aの公的な相談は事業承継・引継ぎ支援センターと分かれます。許認可のある事業は、株式譲渡か事業譲渡かで手続きが大きく変わります。事業承継税制の特例措置は、計画の提出が令和9年9月30日、贈与・相続が令和9年12月31日までです。西東京市の無料相談会も活用しながら、税金の見通しは早めに税理士と確認してください。
国税庁「税理士制度のQ&A(2 税理士の業務)」「No.4638 取引相場のない株式の評価」「No.1463 株式等を譲渡したときの課税」「No.4423 個人から著しく低い価額で財産を譲り受けたとき」「営業の譲渡をした場合の対価の額(質疑応答事例)」「No.7191 登録免許税の税額表」、厚生労働省「社会保険労務士について教えてください」、総務省「行政書士制度」、法務省「司法書士の業務」、東京都産業労働局「事業承継税制 特例措置について」、東京都都市整備局「建設業許可の手引(事業承継等に係る認可の制度)」、東京都保健医療局「事業譲渡による営業許可・届出の地位の承継について」、中小企業基盤整備機構「中小企業事業承継・引継ぎ支援全国本部」「事業承継・引継ぎ支援センター」、西東京市「事業承継個別相談会(無料)」。本記事は2026年10月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
税理士法人みらい(税理士法人番号 第1218号)/〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北3-4-1 みらいビル2F/TEL 042-422-7440/ISO9001認証取得・書面添付制度対応