税制改正大綱とは、翌年度以降の税制の方向性を政府・与党が取りまとめて毎年12月に公表する文書で、これをもとに翌年の通常国会で改正法案が審議・成立します。したがって大綱の内容は確定した法令ではなく、国会での法案成立をもって確定します。本記事では、2026年度(令和8年度)税制改正大綱のうち、個人・法人に影響のある主要な論点を分野別に整理し、事業者が取るべき対応を解説します。
毎年12月に発表される税制改正大綱は、翌年度以降の税制の方向性を示す重要な指針です。2026年度(令和8年度)の税制改正大綱においても、経済情勢や社会課題に対応するさまざまな措置が盛り込まれています。
本記事では、個人・法人に影響のある主要な改正ポイントを解説します。
ご注意:本記事は2026年度税制改正大綱に基づく解説です。改正内容は国会での法案成立を経て確定します。最新の情報は国税庁のウェブサイト等でご確認ください。
2026年度税制改正大綱の主な分野と確認ポイント
| 分野 | 主な論点 | 実務で確認すべきこと |
|---|---|---|
| 法人課税 | 防衛力強化に関する税制措置、中小企業向け租税特別措置 | 自社が中小企業向け特例の適用対象かどうか、適用期限はいつまでか |
| 個人所得課税 | 各種控除の見直し、子育て世帯への支援措置 | 年末調整・確定申告での適用開始年分 |
| 資産課税 | 相続・贈与に関する措置、事業承継税制 | 贈与・承継の実行時期を改正の施行日と照らして検討する |
| 消費課税・国際課税 | インボイス関連、国際的な課税ルールへの対応 | 海外取引がある場合の届出・帳簿要件の変更点 |
| デジタル化 | 電子帳簿保存法対応、e-Tax利用環境の整備 | 電子取引データ保存の社内ルールが要件を満たしているか |
防衛力強化に関する税制措置
防衛力の抜本的な強化に必要な財源を確保するため、税制面での措置が段階的に進められています。2026年度改正では、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置について、具体的な実施時期や制度設計に関する議論が進められました。
法人税における付加税
防衛財源の確保を目的とした法人税額に対する付加税として、防衛特別法人税が創設されました。基準法人税額から年500万円の基礎控除額を差し引いた金額に対して税率4%が課され、2026年(令和8年)4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。中小企業では基礎控除額により実質的な負担が生じないケースも多いものの、法人税額が年500万円を超える規模の法人は資金繰り計画への織り込みが必要です。詳しくは2026年度税制改正|中小企業が押さえるべき実務ポイントで解説しています。
中小企業にとっては、控除額の設定により実質的な負担が軽減される設計となっていますが、具体的な税率や開始時期については引き続き注視が必要です。
所得税・たばこ税における措置
所得税については、令和8年度税制改正大綱において防衛特別所得税(仮称)の創設が示されました。所得税額に対し税率1%の付加税として課され、課税期間は令和9年1月からとされています。あわせて、足下で家計負担が増加しないよう復興特別所得税の税率を1%引き下げる一方、復興財源を確保する観点から復興特別所得税の課税期間を令和29年まで10年間延長することとされています。また、たばこ税の段階的な引上げも盛り込まれています。適用開始時期や詳細は今後の法令等で確定するため、最新の公表内容をご確認ください。
子育て支援に関する税制
少子化対策の一環として、子育て世帯を支援するための税制措置の拡充が図られています。
扶養控除・児童手当の見直し
児童手当の拡充(高校生年代への支給拡大)に伴い、16歳から18歳の扶養控除の見直しが行われています。児童手当と扶養控除の関係について、子育て世帯の実質的な負担が増加しないよう配慮した制度設計が進められています。
住宅取得支援
住宅ローン控除について、既存住宅のうち省エネ性能の高い認定住宅・ZEH水準省エネ住宅に係る借入限度額の引上げ、子育て世帯への上乗せ措置の対象拡充、床面積要件の緩和等の見直しを行ったうえで、適用期限が5年延長されます。省エネ性能の高い住宅の取得を後押しする観点から、環境性能に応じた優遇措置が設けられています。
個人所得課税は何が変わる?
給与所得控除・基礎控除の見直し
物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みが創設され、所得税の基礎控除について合計所得金額2,350万円以下の個人の控除額が4万円引き上げられます。また給与所得控除の最低保障額が65万円から69万円に引き上げられます。所得税の課税最低限は178万円まで特例的に先取りして引き上げられる方針です。
これらの改正は、パートタイム労働者の就業調整を緩和し、人手不足の解消にも寄与することが期待されています。
退職所得課税の見直し
労働移動の円滑化を促進するため、退職所得課税における勤続年数に応じた控除額の計算方法の見直しが引き続き議論されています。現行制度では勤続20年超で控除額が大きくなる仕組みですが、転職者に不利にならない制度設計が模索されています。
中小企業向けの税制措置はどうなる?
中小企業投資促進税制の延長・拡充
大胆な設備投資を促す措置として特定生産性向上設備等投資促進税制(仮称)が創設されます。一定の投資計画について経済産業大臣の確認を受けた場合、即時償却と税額控除(取得価額の7%、建物等は4%)の選択適用ができ、税額控除の上限は当期の法人税額の20%です。中小企業者等は投資額5億円以上が要件とされています。デジタルトランスフォーメーション(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)に対応した設備投資を後押しする措置が拡充されています。
賃上げ促進税制の拡充
従業員の給与引上げを促進するための税制措置として、賃上げ促進税制の拡充が図られています。特に中小企業については、より高い控除率の適用や、教育訓練費の増加に対する上乗せ措置などが設けられています。
賃上げ実施企業に対する税額控除の拡大は、人材確保や従業員の定着にも寄与するものと考えられます。
【令和8年度税制改正】令和8年度税制改正大綱では、賃上げ促進税制について教育訓練費に係る上乗せ措置を廃止することが示されています。あわせて大企業向け措置は令和8年3月31日をもって廃止、中堅企業向け措置は見直しのうえ適用期限(令和9年3月31日)をもって廃止とされ、中小企業向け措置は存置される方向です。自社の事業年度における取扱いは、国税庁・中小企業庁の最新の公表内容をご確認ください。
交際費等の損金不算入制度
中小法人の交際費課税の特例(年800万円まで全額損金算入)の適用期限の延長が見込まれています。また、飲食費に係る損金算入の基準額についても見直しの議論が行われています。
相続・贈与など資産課税はどう変わる?
事業承継税制
中小企業の円滑な事業承継を支援する事業承継税制について、特例承継計画の提出期限が延長されました。法人版は令和9年(2027年)9月30日、個人版は令和10年(2028年)9月30日までです。ただし贈与・相続そのものの実行期限は延長されていません(法人版は令和9年12月31日、個人版は令和10年12月31日)。後継者不足による廃業を防止し、雇用や技術を守る観点から、制度の使い勝手の向上が図られています。
相続時精算課税制度
2024年から導入された相続時精算課税制度における年110万円の基礎控除について、制度の周知と利用促進が進められています。暦年課税との選択制のもと、計画的な資産移転を支援する仕組みの定着が期待されています。
国際課税への対応
経済のグローバル化に対応するため、国際的な課税ルールの見直しが引き続き進められています。
- グローバル・ミニマム課税:多国籍企業に対する最低税率(15%)の適用に関する国内法の整備が進んでいます。
- 移転価格税制:国際的な取引における適正な利益配分を確保するための規定の見直しが検討されています。
- CRS(共通報告基準):金融口座情報の自動的交換に関する制度の拡充が進められています。
電子化・デジタル化への対応
税務手続きのデジタル化を推進するための措置も継続して講じられています。
- 電子帳簿保存法に基づく電子取引データの保存義務への対応支援
- e-Tax利用率の向上に向けた環境整備
- AIやクラウドを活用した税務申告の簡素化
まとめ:事業者が取るべき対応
2026年度の税制改正は、防衛財源の確保、子育て支援、中小企業の活性化、国際課税への対応など、多岐にわたる分野で重要な変更が行われています。
事業者の皆さまにおいては、以下の点に留意して対応を進めることをお勧めします。
- 改正内容を早期に把握し、自社への影響を分析する
- 賃上げ促進税制や投資促進税制など、活用可能な制度を検討する
- 電子帳簿保存法への対応など、デジタル化への備えを進める
- 事業承継を検討している場合は、税制優遇措置の活用を計画する
よくある質問(FAQ)
Q. 税制改正大綱の内容はいつから適用されますか?
A. 大綱は方針を示す文書であり、そのままでは効力を持ちません。翌年の通常国会で改正法案が可決・成立し、公布されて初めて確定します。適用開始時期は項目ごとに異なり、施行日以後の取引に適用されるもの、その年分・その事業年度から適用されるものなどがあるため、項目ごとに施行日を確認する必要があります。
Q. 税制改正の内容は自社にどう影響するか、どう確認すればよいですか?
A. まず自社に関係する分野(法人課税・個人所得課税・資産課税・消費課税)を絞り込み、該当項目の適用開始時期と適用要件を確認します。設備投資や賃上げ、事業承継など意思決定を伴うものは、改正の施行時期によって有利不利が変わるため、実行時期の検討が必要です。判断に迷う場合は顧問税理士にご相談ください。
Q. 改正内容の最新情報はどこで確認できますか?
A. 確定した内容は国税庁のウェブサイトで公表される改正のあらまし・各種パンフレット等で確認できます。条文そのものはe-Gov法令検索(デジタル庁)で参照できます。大綱段階の情報は変更される可能性があるため、実務判断は成立後の情報にもとづいて行ってください。
参考にした一次情報(出典)
- 国税庁が公表するタックスアンサー(よくある税の質問)および各種パンフレット等の公表資料
- e-Gov法令検索(デジタル庁)に掲載されている関係法令の条文
実務の現場から:当事務所には、改正内容が自社にどう影響するかというご相談が毎年多く寄せられます。改正は適用時期が分かれることが多いため、施行日の確認をおすすめしています。
ご注意(免責事項):本記事は2026年8月3日時点の法令および公的機関の公表資料にもとづく一般的な解説です。税制・社会保険制度は改正されることがあり、同じ制度でも個別の事情によって取扱いが変わります。実際のご判断にあたっては、必ず税理士など専門家にご相談ください。本記事の情報にもとづく判断により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
税理士法人みらい(税理士法人番号 第1218号)/〒202-0002 東京都西東京市ひばりが丘北3-4-1 みらいビル2F/TEL 042-422-7440/初回相談無料。昭和58年開業・平成18年法人化、ISO9001認証取得。元国税局OBを含む税理士4名と税務・会計スタッフを合わせた総勢17名の体制で、税理士法第33条の2の書面添付制度にも対応しています。
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