決算だけ税理士に頼める?依頼できる範囲と、年1回の依頼で気をつけること

目次

  1. 決算・申告だけの依頼で税理士が行う範囲
  2. 法人税・消費税の申告期限と延長の特例
  3. 年1回の依頼で起きやすいこと
  4. 依頼前に準備する資料
  5. 顧問契約との比較
  6. 料金の考え方
  7. よくある質問
  8. まとめ

決算と申告だけを税理士に頼むことはできます。期中の記帳はご自身で行い、期末に帳簿と資料を渡して、決算整理・決算書・申告書の作成と提出を任せる形です。法人税・消費税の申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。ただし年1回の関与では、期中の処理の誤りや届出の漏れが決算期にまとめて見つかることがあります。

決算・申告だけの依頼で税理士が行う範囲

決算・申告だけの依頼では、ご自身でつけた帳簿をもとに、税理士が帳簿の確認、決算整理、決算書と申告書の作成、申告書の提出を行います。期中の記帳と、税金の納付はご自身で行います。

作業主な内容行う人
期中の記帳日々の取引を会計ソフトなどに入力するご自身
帳簿の確認残高・勘定科目・消費税の区分を確認し、誤りを直す税理士
決算整理減価償却、棚卸資産、未払金・前払費用などの計上税理士(在庫の棚卸はご自身)
決算書の作成貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書税理士が作成し、会社が承認
申告書の作成法人税・地方法人税(令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税を含む)の申告書、勘定科目内訳明細書、法人事業概況説明書、消費税の申告書、法人事業税・法人住民税の申告書税理士
申告書の提出電子申告または書面で、税務署・都税事務所・市役所へ提出する税理士(税務代理)
納付申告した税額を期限までに納めるご自身

法人税の確定申告は確定した決算にもとづいて行い(法人税法第74条第1項)、申告書には貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、勘定科目内訳明細書、事業等の概況に関する書類を添付します(法人税法施行規則第35条)。東京都の市部(西東京市・東久留米市など)にある法人は、法人事業税と法人都民税を都税事務所に、市町村民税を市役所に申告します(東京都主税局)。令和8年4月1日以後に開始する事業年度からは、各事業年度の所得に対する法人税を課される法人は、防衛特別法人税の確定申告書も提出します(税額が0であっても申告が必要です。e-Tax「防衛特別法人税の創設に関するご案内・留意事項について」)。

個人事業主の場合は、青色申告決算書(白色申告は収支内訳書)と所得税の確定申告書、課税事業者であれば消費税の申告書を作成します。令和8年分の確定申告期間は2027年2月16日(火)から3月15日(月)まで、個人事業者の消費税は2027年3月31日(水)が期限です。個人の確定申告の費用の考え方は確定申告を税理士に頼む費用と判断の目安で解説しています。以下では主に法人の決算を例に説明します。

法人税・消費税の申告期限と延長の特例

法人税と消費税の確定申告の期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。期限が土曜日・日曜日・祝日等に当たる場合は、その翌日が期限になります(国税庁 C1-1)。法人事業税の確定申告も、事業年度終了の日から2か月以内です(東京都主税局)。

決算月(月末決算)法人税・消費税の申告期限(原則)
3月5月31日
6月8月31日
9月11月30日
12月翌年2月末日

この2か月の間に、帳簿の確認、決算整理、決算書の作成、会社としての決算の確定、申告書の作成を済ませます。決算だけを頼む場合は、決算月を迎える前に依頼先を決め、期末日のあとすぐに資料を渡せるようにしておくと進めやすくなります。

項目法人税消費税(法人)
原則の期限事業年度終了の日の翌日から2か月以内課税期間の終了の日の翌日から2か月以内
延長の特例定款の定め等により、決算の定時総会が事業年度終了の日の翌日から2か月以内に招集されない常況にある場合、申請により原則1か月延長法人税の延長の特例を受ける法人が届出書を提出すると、1か月延長
申請・届出の時期最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで延長する旨を記載した届出書を所轄税務署長に提出
延長した期間利子税がかかる利子税がかかる

延長の特例は、法人税法第75条の2、消費税法第45条の2に定められています(国税庁 C1-17、No.6601)。延長した期間の分は利子税を納めることになるため(法人税法第75条の2第8項で準用する第75条第7項など)、決算の作業に必要な日数とあわせて検討します。

このほか、事業年度が6か月を超える普通法人は、前期の実績で計算した法人税額が10万円を超えると法人税の中間申告が必要です(事業年度開始の日以後6か月を経過した日から2か月以内)。消費税は、直前の課税期間の確定消費税額が48万円を超えると中間申告が必要になります(国税庁「法人税のあらましと申告の手引」、No.6609)。詳しくは法人の中間申告は必要?いつまで?決算月別の期限と判定基準をご覧ください。

年1回の依頼で起きやすいこと

年1回の依頼では、期中の処理の誤りや届出の漏れが決算期にまとめて見つかり、その時点では直せないものもあります。決算だけを頼む場合も、次の点は期中にご自身で確認しておく必要があります。

起きやすいこと決算期に見つかったときの影響確認先
勘定科目や消費税の区分の誤りが続いている1年分をさかのぼって直す作業が増える―
期の途中で役員報酬を増額した定期同額給与に当たらない部分は損金にならない。改定は原則として事業年度開始の日(会計期間開始の日)から3か月を経過する日までに行う(申告期限の延長の特例で月数の指定を受けている場合は異なる)国税庁 No.5211
簡易課税を選びたかったが届出をしていない原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出書の提出が必要(事業を開始した課税期間、インボイスの登録で課税事業者になった課税期間、2割特例からの移行などは例外あり)国税庁 No.6505
消費税の納税義務の判定をしていない基準期間の課税売上高が1,000万円を超える、特定期間の基準を超える、インボイスの登録をしている、などに当たると課税事業者になる国税庁 No.6501
仕入の請求書等(適格請求書等)を保存していない仕入税額控除には、帳簿と請求書等の両方の保存が必要国税庁 No.6625
給与や、弁護士・司法書士などへの報酬から源泉徴収していない源泉所得税は原則として支払った月の翌月10日までに納める(納期の特例の承認を受けていれば1〜6月分は7月10日、7〜12月分は翌年1月20日)国税庁 No.2792 ほか
法人税・消費税の中間申告を見落とした期限までに中間申告書を出さないと、前期の実績による中間申告があったものとみなされる国税庁 No.6609 ほか

また、青色申告の承認を受けている法人が確定申告書を提出期限までに提出しなかった場合、税務署長は青色申告の承認を取り消すことができるとされています(法人税法第127条第1項第4号。国税庁の事務運営指針では、2事業年度連続して期限内に提出がない場合に取り消すとしています)。決算だけの依頼では、期限に間に合う日程で資料を渡すことが前提になります。

帳簿は、期中に取引を順次記録するものとされています(国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】」問20)。決算だけを頼む場合でも、記帳は期中に進めておきます。役員報酬の改定や設備投資、消費税の届出など、期中に判断が必要なことは、その時点で税理士に確認してください。期中からの準備の進め方は決算対策はいつから始める?、役員報酬の改定時期は役員報酬の決め方と改定時期で解説しています。

依頼前に準備する資料

決算・申告だけを頼むときは、1年分の帳簿データ、期末の残高を裏づける資料、前期の申告書一式を用意します。初めて依頼する事務所には、提出済みの届出書の控えもあわせて渡します。

資料使い道
会計ソフトのデータ(仕訳帳・総勘定元帳)1年分の取引と残高の確認
前期の決算書・申告書・勘定科目内訳明細書期首の残高、前期から引き継ぐ金額(繰越欠損金など)の確認
期末日の預金残高がわかる通帳・残高証明書、期末の現金残高預金・現金の残高の確認
売掛金・買掛金・未払金の期末の一覧、請求書債権・債務の計上
期末の棚卸表棚卸資産の計上
借入金の返済予定表、期末の残高借入金と支払利息の確認
設備・車両などを買った(売った)ときの契約書・請求書固定資産と減価償却の計算
給与台帳、源泉所得税の納付書の控え、役員報酬を決めた株主総会等の議事録給与・役員報酬・源泉所得税の確認
中間申告・中間納付の控え(法人税・消費税)確定申告での精算
提出済みの届出書の控え(青色申告の承認申請、消費税の届出、インボイスの登録など)申告の方法と納税義務の確認

税理士が申告書の提出などの税務代理をするときは、その権限を有することを証する書面(税務代理権限証書)を税務署に提出します(税理士法第30条)。顧問の税理士から切り替えて決算だけを頼む場合の引き継ぎは、税理士を変えるタイミングでも整理しています。

顧問契約との比較

決算・申告だけの依頼は、期中のやりとりがない分、期中の処理の確認や届出・期限の管理をご自身で行うことになります。顧問契約は、期中から税理士が帳簿を確認し、判断が必要な場面で前もって相談できる契約です。

比べる点決算・申告だけの依頼顧問契約
税理士が関わる時期決算期期中から(毎月など定期的に)
期中の帳簿の確認ご自身税理士が定期的に確認
届出・中間申告などの期限の管理ご自身税理士と一緒に確認
役員報酬・設備投資など期中の判断ご自身で判断し、必要に応じて都度相談判断の前に相談できる
納税額の見込み決算期に初めてわかることが多い期中の試算表から見込みを立てられる
費用の形決算・申告の報酬が中心月額顧問料+決算報酬
向いている方取引が少なく、記帳と期中の判断をご自身でできる取引が多い、従業員がいる、期中に相談したい、納税額を前もって知りたい

最初は決算だけを頼み、取引が増えてきた段階で顧問契約に切り替える形もあります。顧問料の内訳や比べ方は税理士の顧問料の相場と選び方で解説しています。

料金の考え方

既存の法人・個人事業主の方の決算・申告だけのご依頼の料金は、内容をうかがってご案内します。作業量は、帳簿の整い方、取引の量、消費税の申告の有無、前期の申告書がそろっているかなどで変わります。

参考として、当事務所の「新設法人の顧問料等報酬料金表」では、決算報酬を次のとおり定めています。これは新設法人の顧問契約(月額顧問料+決算報酬)の料金表で、決算だけのご依頼の料金ではありません。月額顧問料・決算料は、申告期の売上高(営業外収益・特別利益を含む)と月あたりの仕訳件数を基準にしています。

年間売上高(月の仕訳件数)顧問報酬(月額)決算報酬
500万円未満(50件未満)25,000円150,000円
1,000万円未満(100件未満)30,000円180,000円
3,000万円未満(150件未満)35,000円210,000円
5,000万円未満(200件未満)40,000円240,000円
1億円未満(300件未満)50,000円300,000円
3億円未満(400件未満)70,000円420,000円
5億円未満(500件未満)100,000円600,000円
10億円未満(1,000件未満)150,000円900,000円

この料金表では、消費税の確定申告書は顧問報酬に含みます。設立1期目の法人には、1期目の決算を月額顧問料のみで対応する新設法人サービスパックがあります(社員10名以下、帳簿の入力をご自身で行っていただけること、2年以上の顧問契約などが条件です)。料金表の全体と条件はサービス案内に掲載しています。

よくある質問

Q. 決算だけ税理士に頼むことはできますか?

A. できます。期中の記帳はご自身で行い、期末に帳簿と資料を渡して、決算整理、決算書と申告書の作成、申告書の提出を税理士に任せる形です。法人の場合は、法人税・地方法人税、法人事業税・法人住民税の申告が必要で、消費税の課税事業者であれば消費税の申告も必要です。申告期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内のため、決算月を迎える前にご相談ください。

Q. 法人税の申告期限はいつですか?延長できますか?

A. 原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。定款の定め等により決算の定時総会が2か月以内に招集されない常況にある法人は、税務署長への申請により原則1か月延長できます(申請は最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで)。延長した期間には利子税がかかります。消費税も、法人税の延長の特例を受ける法人が届出書を提出すると1か月延長されます。

Q. 年1回の依頼で、決算期に直せないことはありますか?

A. あります。たとえば期の途中で役員報酬を増額した場合、定期同額給与に当たらない部分は損金になりません。また、消費税の簡易課税制度は、原則として、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに届出書を提出する必要があります(事業を開始した課税期間、インボイスの登録で課税事業者になった課税期間、2割特例の適用を受けた事業者が翌課税期間から移る場合などには例外があります)。期中に判断が必要なことは、その時点でご相談ください。

Q. 決算だけの依頼の費用はいくらですか?

A. 既存の法人・個人事業主の方の決算・申告だけのご依頼は、帳簿の状態や取引の量などの内容をうかがって料金をご案内します。当事務所が公表している料金表は「新設法人の顧問料等報酬料金表」(新設法人の顧問契約の月額顧問料・決算報酬)で、決算だけのご依頼の料金ではありません。

まとめ

決算と申告だけを税理士に頼むことはできます。ご自身でつけた帳簿をもとに、税理士が帳簿の確認、決算整理、決算書と申告書の作成・提出を行います。法人税・消費税の申告期限は原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内で、延長の特例を受けた場合は延長した期間に利子税がかかります。年1回の依頼では、役員報酬の期中の増額のように決算期には直せないことや、簡易課税の届出のように原則として期限が決まっているものがあるため、期中に判断が必要な場面ではその時点で確認してください。既存の法人・個人事業主の方の料金は、内容をうかがってご案内します。

この記事の執筆者

税理士法人みらい(東京都西東京市ひばりが丘)。昭和58年開業、平成18年に税理士法人として設立。ISO9001認証取得。元国税局OBを含む税理士4名が在籍し、税務・会計から給与計算までを担当しています。社会保険・労働保険の手続きはグループの社会保険労務士法人みらい、許認可は行政書士法人みらいが担当し、窓口をまとめてご相談いただけます。

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出典・参考

国税庁「C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告(法人税申告書別表等)」「C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請」「法人税のあらましと申告の手引(令和7年版)(令和7年10月)」「H2-1 税務代理の権限の明示」「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」、国税庁 タックスアンサーNo.6601「申告と納税」、No.6609「中間申告の方法」、No.5211「役員に対する給与」、No.6505「簡易課税制度」、No.6501「納税義務の免除」、No.6625「適格請求書等の記載事項」、No.2792「源泉徴収が必要な報酬・料金等とは」、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子計算機を使用して作成する帳簿書類関係】(令和8年7月)」、e-Tax「防衛特別法人税の創設に関するご案内・留意事項について」、東京都主税局「法人事業税・法人都民税Q&A」、e-Gov法令検索(法人税法第74条・第75条・第75条の2・第127条、法人税法施行規則第35条、消費税法第37条・第45条の2、消費税法施行令第56条)。本記事は2026年10月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。

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