小規模企業共済の掛金は月1,000円から7万円まで選べ、支払った全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得から差し引かれます。控除の対象になるのはその年に実際に支払った掛金です。現金を納付しない申込みでは初回の口座振替が申込月の翌々月になるため、11月・12月に加入してその年の控除にしたい場合は、窓口で現金により納付する方法を選びます。
小規模企業共済とは・加入できる人
小規模企業共済は、小規模企業の個人事業主や会社の役員が、廃業や退任に備えて自分で掛金を積み立てる共済制度です。小規模企業共済法にもとづき、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。加入できるかどうかは、業種と常時使用する従業員の数で決まります。
| 業種・立場 | 加入できる人 |
|---|---|
| 建設業、製造業、運輸業、不動産業、農業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)など | 常時使用する従業員が20人以下の個人事業主または会社の役員 |
| 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く) | 常時使用する従業員が5人以下の個人事業主または会社の役員 |
| 弁護士法人・税理士法人などの士業法人 | 常時使用する従業員が5人以下の法人の社員 |
| 個人事業主の共同経営者 | 上の要件に当てはまる個人事業主1人につき2人まで |
常時使用する従業員には、家族従業員、臨時の従業員、共同経営者(2人まで)は含みません。会社の役員とは、株式会社の取締役・監査役、合同会社などの業務執行社員です。相談役や顧問などで役員として登記されていない方や、事業を兼業している給与所得者(アパート経営をしている会社員など)は加入できません。加入の申込みは、商工会・商工会議所・青色申告会などの委託団体や金融機関の窓口、またはオンラインで行います。
掛金と所得控除のしくみ
掛金は月額1,000円から7万円まで、500円単位で選べ、その年に支払った掛金の全額を所得から控除できます。個人の所得控除であり、会社や事業の経費にはなりません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 掛金月額 | 1,000円〜7万円(500円単位)。加入後も増額・減額できる |
| 払い方 | 月払い・半年払い・年払い。加入後は口座振替(振替日は毎月18日、休業日なら翌営業日) |
| 所得税の控除 | 小規模企業共済等掛金控除として、その年に支払った掛金の全額 |
| 住民税の控除 | 前年中に支払った掛金の全額を、所得割の計算で控除 |
| 掛金を払う人・口座 | 共済契約者本人。口座は本人の個人名義に限られ、法人名義・屋号付きの名義は指定できない |
| 事業の経費 | 事業上の損金・必要経費には算入できない |
会社の役員が加入する場合も、掛金は役員本人が自分の収入(役員報酬など)から払います。法人が掛金を負担して損金にする制度ではない点に注意してください。法人の掛金が損金になる共済としては、後述の経営セーフティ共済があります。
控除を受ける方法は、個人事業主なら確定申告、給与を受けている会社の役員なら年末調整で提出する「給与所得者の保険料控除申告書」への記載です。いずれも、支払った掛金の証明書を添付するか提示します。個人事業主の確定申告を税理士に頼むかどうかの目安は確定申告を税理士に頼む費用と判断の目安で解説しています。
年内に加入・前納するときの注意
控除の対象はその年に実際に支払った掛金なので、年内に払込みが済んでいることが条件です。申込みの方法と時期によって、初回の払込みが年内に間に合うかが変わります。
| 申込みの時期・方法 | 初回の払込み | その年の控除 |
|---|---|---|
| 10月中に申込み(現金の納付なし。オンラインを含む) | 12月の口座振替(申込月の翌々月)。月払いなら申込月から3か月分をまとめて引き落とし | 対象になる |
| 11月・12月に申込み(現金の納付なし。オンラインを含む) | 翌年1月・2月の口座振替 | 翌年分の控除になる |
| 11月・12月に委託団体・金融機関の窓口で申込み、申込み時に現金で納付 | 申込み時 | 納付した分が対象になる |
中小機構は、その年の12月の最終営業日までに委託団体または金融機関の窓口で手続きをすれば年内の加入になると案内しています(加入には所定の審査があります)。その際、申込み時の掛金に加えて12か月分の前納掛金も窓口で現金により納付すると、払い込んだ合計13か月分の全額がその年の控除の対象になります。掛金月額7万円なら、13か月分で91万円です。申込み時に口座振替での前納を選ぶと、前納分は初回の口座振替(申込月の翌々月)で請求されるため、11月・12月の申込みではその年の控除になりません。
11月・12月に申し込む場合の扱いは、中小機構が令和7年分について公表したお知らせ(2025年10月10日)によるものです。2026年の取扱いは中小機構の最新の案内をご確認ください。同じお知らせでは、11月・12月に窓口で現金により加入した場合の掛金控除証明書は、翌年2月中旬(令和7年分は令和8年2月中旬)に発送する予定とされています。年末調整では掛金の証明書の添付か提示が必要なため、会社の役員の方は年末調整に間に合わない場合があり、そのときは確定申告で控除を受けます。
掛金は前納もできます。前納すると、前納した掛金に対し前納月数1か月あたり1,000分の0.9に相当する前納減額金が受け取れます(毎年3月末時点の前納状況で計算し、合計が5,000円以上になった場合にその年の6月に支払われます)。控除との関係は次のとおりです。
- 1年以内の前納掛金は、払った年の控除の対象になる
- 13か月以上をまとめて前払いした場合、翌年以降の掛金に充当される分はその年の控除にならない
- 前納減額金を受け取った場合は、控除として申告する掛金の額から前納減額金を差し引く
すでに加入している方が年内にまとめて前納する場合は、中小機構に一括納付の申請をします(納付は口座振替)。申請の締切は、中小機構の案内では「希望月の前月20日(12月は15日、土日祝日の場合は前営業日)」で、締切日を過ぎると希望月に一括納付することはできません。掛金を振込みで納付することもできません。締切を過ぎた後に年内に払う方法は、掛金月額が上限の7万円に達していない場合に、年内に掛金月額の増額と前納の手続きをして、申込窓口で現金を納付する方法です。7万円に達している場合は、年内に納付する方法はありません。年末に合わせる場合は、締切日を確かめて早めに手続きしてください。
所得税・住民税はいくら減るか(計算例)
減る税額の目安は、掛金の額×(所得税率×1.021+住民税率10%)です。所得税率は課税所得に応じて5%から45%までの7段階で、令和8年分は所得税額の2.1%の復興特別所得税が加わります。住民税の所得割の税率は10%で、前年の所得にもとづいて計算されるため、令和8年に払った掛金の分は令和9年度の住民税が減ります。
以下は例です。課税所得(基礎控除などを差し引いた後で、掛金の控除を差し引く前の金額)が500万円の場合、掛金を控除しても所得税率20%の区分(330万円から695万円未満)にとどまるため、減る税額は次のようになります。
| 掛金月額 | 年間の掛金 | 所得税(復興特別所得税を含む) | 住民税(所得割10%) | 合計 |
|---|---|---|---|---|
| 1万円 | 12万円 | 24,504円 | 12,000円 | 36,504円 |
| 3万円 | 36万円 | 73,512円 | 36,000円 | 109,512円 |
| 5万円 | 60万円 | 122,520円 | 60,000円 | 182,520円 |
| 7万円 | 84万円 | 171,528円 | 84,000円 | 255,528円 |
課税所得が300万円の場合は所得税率10%の区分(195万円から330万円未満)なので、掛金月額3万円で所得税36,756円・住民税36,000円の合計72,756円、月額7万円で所得税85,764円・住民税84,000円の合計169,764円が目安です。同じ掛金でも、課税所得が低いほど減る税額は小さくなります。
実際の税額は、1,000円未満・100円未満の端数処理や、ほかの控除との関係によって多少異なります。掛金の控除で課税所得が税率の区分の境目を下回る場合は、下の区分の税率で計算し直す必要があります。所得税率は国税庁の「所得税の速算表」で確認できます。
共済金を受け取るときの税金
共済金は、一括で受け取ると退職所得、分割で受け取ると公的年金等の雑所得として課税されます。掛金を払うときに所得控除を受け、受け取るときに退職所得などとして課税される仕組みです。
| 受け取るもの | 税法上の取扱い |
|---|---|
| 一括受取りの共済金(死亡以外) | 退職所得 |
| 一括受取りの共済金(死亡によるもの) | 死亡退職金(相続税の対象) |
| 分割受取りの共済金 | 公的年金等の雑所得 |
| 準共済金 | 退職所得 |
| 任意解約の解約手当金 | 一時所得(65歳以上の場合は退職所得) |
| 法人成りに伴う解約手当金 | 退職所得 |
共済金を受け取れるのは、個人事業の廃止、会社の解散、役員の疾病・負傷・65歳以上での退任、死亡などのときと、65歳以上で180か月以上掛金を納付した場合の老齢給付です。たとえば掛金月額1万円で20年(掛金合計240万円)納付し、個人事業の廃止などで受け取る共済金(共済金A)は2,786,400円です(基本共済金の額。付加共済金を除く)。
退職所得は、収入金額から退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1が所得の金額になります。退職所得控除額は、年数が20年以下なら40万円×年数(80万円未満なら80万円)、20年超なら800万円+70万円×(年数−20年)です。共済金の場合、この年数の計算には共済契約期間が使われ、掛止めをした期間は含まれません。同じ年にほかの退職金も受け取る場合などは、控除額の計算が異なることがあります。会社の役員の退職金の準備は役員退職金の準備と税務上の留意点で解説しています。
分割受取りは、共済金の額が300万円以上で、共済事由が生じた時点で60歳以上の場合に選べます。受取期間は10年または15年で、年6回に分けて受け取ります。
解約するときの注意
任意解約で受け取る解約手当金は、掛金納付月数が240か月(20年)未満だと掛金の合計額を下回ります。12か月未満で解約すると掛け捨てになります。
- 解約手当金の支給率は、納付月数12か月以上84か月未満で80%、その後6か月単位で段階的に上がり、240か月以上246か月未満で100%、最高120%です。
- 掛金月額を変更している場合は、240か月以上納付していても掛金の合計額を下回ることがあります。
- 任意解約の解約手当金は一時所得として課税されます(65歳以上は退職所得)。
- 所得がなく掛金の納付が著しく困難なときなどは、6か月または12か月の掛止めができます。掛金月額の減額(500円単位)もできるため、資金繰りが厳しいときは解約の前に検討します。
- 個人事業主が法人成りして、その会社の役員として小規模企業者になった場合などは、所定の手続きで掛金納付月数を通算して契約を続けられます(申出は事由が生じてから1年以内)。
一定の資格を満たす加入者は、納付した掛金の範囲内で事業資金などの貸付けを受けられる制度(契約者貸付制度)も利用できます。法人成りのタイミングの考え方は法人成りのタイミング|年内に決めるか、来年にするかをご覧ください。
経営セーフティ共済との違い
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は取引先の倒産に備える制度で、掛金は法人なら損金、個人事業主なら事業所得の必要経費になります。経営者個人の退職金を準備する小規模企業共済とは、目的も税務上の扱いも異なります。
| 項目 | 小規模企業共済 | 経営セーフティ共済 |
|---|---|---|
| 目的 | 経営者の廃業・退任後の生活資金などの準備 | 取引先が倒産したときの共済金の貸付け |
| 加入できる人 | 小規模企業の個人事業主・会社の役員など | 1年以上継続して事業を行っている中小企業者(法人・個人) |
| 掛金 | 月1,000円〜7万円(500円単位) | 月5,000円〜20万円(5,000円単位)。積立限度額800万円 |
| 掛金の税務 | 個人の所得控除 | 法人は損金、個人事業主は事業所得の必要経費 |
| 解約したとき | 解約手当金は一時所得など | 解約手当金は法人は益金、個人は事業所得の収入金額 |
| 注意点 | 240か月未満の任意解約は掛金の合計額を下回る | 令和6年10月1日以後に解約して再加入した場合、解約の日から2年を経過する日までの間に払う掛金は、損金・必要経費にならない |
法人の節税策全体は法人税の節税対策|中小企業が活用すべき制度で解説しています。
よくある質問
Q. 小規模企業共済の掛金を会社の経費にできますか?
A. できません。掛金は共済契約者本人が自分の収入から払うもので、事業上の損金や必要経費には算入できません。掛金を引き落とす口座も本人の個人名義に限られ、法人名義の口座は指定できません。そのかわり、払った掛金の全額が本人の所得控除(小規模企業共済等掛金控除)になります。
Q. 12月に加入しても、その年の所得控除を受けられますか?
A. 納付の方法によります。控除の対象はその年に実際に払った掛金です。オンラインなど申込み時に現金を納付しない方法では、初回の口座振替が申込月の翌々月になるため、11月・12月の申込みは翌年の控除になります。年内の控除にするには、委託団体や金融機関の窓口で、申込み時に掛金を現金で納付する方法で加入します。
Q. 掛金を前納すると、全額がその年の控除になりますか?
A. 1年以内の前納掛金は、払った年の所得控除の対象になります。13か月以上をまとめて前払いした場合は、翌年以降の掛金に充当される分はその年の控除にならず、その年に充当される分だけが対象です。すでに加入している方が年内にまとめて前納するには、締切日までに中小機構への一括納付の申請が必要です。前納すると前納減額金を受け取れますが、受け取った場合は控除する掛金の額から差し引きます。
Q. 共済金を受け取るときに税金はかかりますか?
A. かかります。一括で受け取る共済金は退職所得、分割で受け取る共済金は公的年金等の雑所得として扱われます。任意解約による解約手当金は一時所得(65歳以上の場合は退職所得)です。退職所得は、収入金額から退職所得控除額を差し引いた残額の2分の1が所得の金額になります。
まとめ
小規模企業共済の掛金は月1,000円から7万円で、支払った全額が所得控除になります。個人の所得控除なので、法人や事業の経費にはなりません。控除の対象はその年に実際に払った掛金で、1年以内の前納分も含まれます。11月・12月に加入してその年の控除にするには、窓口で現金により納付します。減る税額の目安は掛金×(所得税率×1.021+10%)で、課税所得500万円・月7万円なら約25.6万円です。受け取るときは退職所得などとして課税され、240か月未満の任意解約は掛金の合計額を下回る点に注意してください。
独立行政法人中小企業基盤整備機構「小規模企業共済 制度のしおり[令和8年6月改訂版]」「前納減額金」、同「掛金のまとめ払い(一括納付)」、同「よくあるご質問」(年内に加入するにはいつまでに手続きをすればよいですか/その年の所得控除に12か月分の掛金を税務署に申告できますか/掛金を前納した場合、割引はありますか/年内に掛金のまとめ払い(一括納付)をしたかったのですが、締切日を過ぎてしまいました)、同「小規模企業共済のオンライン手続きによる加入申込について【令和7年分の所得控除の対象は10月申込分まで】」(2025年10月10日)、同「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)制度のしおり[令和8年1月改訂版]」、国税庁タックスアンサー No.1135「小規模企業共済等掛金控除」、No.2260「所得税の税率」、No.1420「退職金を受け取ったとき(退職所得)」、総務省「個人住民税」、e-Gov法令検索(地方税法第314条の2)。本記事は2026年10月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
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