12月決算法人の決算対策は、10月に始めれば打てる手が多く残っています。9月までの試算表から通期の利益と法人税等を予測し、決算賞与、少額減価償却資産の特例(令和8年4月以後の取得は40万円未満)、設備投資の税制などを検討します。役員報酬は期の途中で増やしても損金にならない部分が生じるため、決算対策には使えません。申告・納付期限は2027年3月1日(月)です。
10月から3月1日までの段取り
12月決算法人は、10月に納税予測、11月に方針の決定、12月に実行、1月以降に決算と申告という順で進めます。12月決算は年末調整や1月の法定調書と時期が重なるため、決算の作業を前倒しで段取りしておくことが大切です。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 10月 | 9月末の試算表を締め、通期の利益と法人税等を予測する。設備投資・決算賞与の方針を決める。中小企業経営強化税制を使う場合は経営力向上計画の申請準備 |
| 11月 | 決算賞与の支給額と対象者を決める。設備の発注と納期・設置日を確認する。年末調整の書類を回収する |
| 12月 | 決算賞与を各人別に通知する(12月31日まで)。購入した設備を事業の用に供する。申告期限の延長の特例を初めて受ける場合は申請する(12月31日まで)。期末の棚卸の準備 |
| 2027年1月 | 決算賞与を支払う(1月31日まで)。源泉所得税(納期の特例分)の納付は1月20日。源泉徴収票の交付・法定調書合計表・給与支払報告書の提出と償却資産の申告は2月1日まで |
| 2027年2月 | 決算を確定させ、法人税・消費税の申告書を作成する。納税資金を準備する |
| 2027年3月1日(月) | 法人税・消費税、法人住民税・法人事業税の申告・納付期限 |
償却資産の申告は、1月1日現在の償却資産について1月31日までに行うものですが、2027年は1月31日が日曜日のため2月1日(月)が期限です。年末調整の準備は年末調整の準備は8月からで解説しています。
9月までの試算表で納税予測をする
納税予測は、9月末までの累計の利益に10〜12月の見込みを足して通期の利益を出し、そこから法人税等を計算する作業です。対策をいくら行うかは、この予測を見てから決めます。
- 9月末までの損益を確定させる(計上漏れの売上・経費、在庫の動きを反映する)
- 10〜12月の売上・原価・経費を見込む(受注残、冬季賞与、予定している設備投資を含める)
- 減価償却費など決算で計上するものを織り込む
- 課税所得と法人税額を試算し、地方法人税・法人住民税・法人事業税、消費税の納付額を加えて、3月1日に必要な資金を出す
以下は例です。資本金1億円以下の法人(適用除外事業者を除く)で、9月末までの累計利益が900万円、10〜12月の見込みが300万円、通期の課税所得が1,200万円になる場合の法人税は次のとおりです。
| 所得の区分 | 税率 | 法人税額 |
|---|---|---|
| 年800万円以下の部分(800万円) | 15% | 120万円 |
| 年800万円超の部分(400万円) | 23.2% | 92.8万円 |
| 合計 | ― | 212.8万円 |
年800万円以下の部分の15%は、中小法人に対する特例の税率です(令和9年3月31日までに開始する事業年度。本則は19%)。実際の納税額は、これに地方法人税、法人住民税、法人事業税が加わり、消費税の納付もあります。当期の税額によっては翌期に中間申告が必要になるため、資金繰りは翌期の分まで見ておきます(12月決算法人の中間申告)。予測で赤字が見込まれる場合は赤字決算になったときの実務をご覧ください。
10月から間に合う打ち手
10月からでも、決算賞与、少額減価償却資産の特例、設備投資の税制、短期前払費用などは間に合います。ただし、中小企業経営強化税制は事業年度内に計画の認定を受ける必要があるため10月中に準備を始めるのが目安で、経営セーフティ共済に新たに加入する場合は10月中の加入申込みが必要です。いずれも事業上の必要があることが前提で、12月決算での期限と要件は次のとおりです。
| 打ち手 | 12月決算での期限・要件 | 注意点 |
|---|---|---|
| 決算賞与(使用人) | 12月31日までに各人別・全員に通知し、1月31日までに全員に支払い、12月期に損金経理 | 支給日在職を条件とする通知は要件の通知に当たらない |
| 少額減価償却資産の特例 | 中小企業者等(青色申告)。4月1日以後の取得は40万円未満、3月31日までの取得は30万円未満。年合計300万円まで | 12月31日までに事業の用に供していることが必要 |
| 中小企業経営強化税制 | 経営力向上計画の認定を事業年度内(12月31日まで)に受ける。原則は認定後に設備を取得 | 計画の標準処理期間は30日。類型により工業会の証明書や経済産業局の確認書も必要 |
| 短期前払費用 | 支払った日から1年以内に提供を受ける役務の前払い。継続して支払時の損金としていること | 一度採用したら毎期継続する |
| 経営セーフティ共済 | 掛金は損金。前納期間が1年以内の前納掛金は支払った事業年度の損金。新たに加入する場合、掛金の引落しは加入申込みの翌々月からなので、12月期の損金にするには10月中の申込みが必要 | 11月以後の加入申込みは初回の引落しが2027年1月以降になる。既加入の法人が12月に前納する場合は、前納申出書を12月5日までに中小機構が受理していることが必要。解約手当金は益金になる |
決算賞与
使用人への決算賞与は、次の3つをすべて満たせば、12月中に払わなくても12月期の損金にできます。①支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に通知していること、②通知した全員に、事業年度終了の日の翌日から1か月以内(2027年1月31日まで)に支払っていること、③通知した事業年度に損金経理していることです。2027年1月31日は日曜日なので、振込の手配は前営業日までに済ませる段取りにします。役員への賞与は、事前確定届出給与などに当たらなければ損金になりません。実務の詳細は中小企業の決算賞与の税務処理と支給判断をご覧ください。
少額減価償却資産の特例(2026年12月期は4月で基準が変わる)
中小企業者等の少額減価償却資産の特例は、令和8年4月1日以後に取得等をする資産から取得価額の基準が30万円未満から40万円未満に引き上げられ、適用期限が3年延長されました。2026年1月から12月の事業年度では、1〜3月に取得した資産は30万円未満、4月以後に取得した資産は40万円未満で判定します。取得価額の合計額は引き続き年300万円が上限です。また、4月1日以後に取得する場合は、常時使用する従業員の数が400人を超える法人は対象外です(3月31日までは500人超が対象外)。
この特例は、資産を事業の用に供した事業年度に、取得価額を損金経理し、明細書(別表16(7))を申告書に添付して受けます。取得価額10万円未満のものや、一括償却資産として処理するものには適用されません。設備投資の判断基準は決算前の設備投資は得か損かで解説しています。
中小企業経営強化税制
経営力向上計画の認定を受け、計画に記載した新品の設備を取得して事業の用に供すると、即時償却または取得価額の10%(資本金3,000万円超の法人は7%)の税額控除を選べます。指定期間は令和9年3月31日までです。設備の取得は計画の認定後が原則で、申請前に取得する場合は取得日から60日以内に申請書が到達している必要があります。税制の適用を受けるには事業年度内(12月決算なら12月31日まで)に認定を受ける必要があるため、10月のうちに準備を始めます。工具・器具備品は、令和8年4月1日以後の取得では1台40万円以上が対象です。
短期前払費用
一定の契約にもとづき継続的に役務の提供を受けるための費用を前払いした場合、原則はまだ提供を受けていない部分を損金にできません。ただし、支払った日から1年以内に提供を受ける役務にかかるものを支払い、その金額を継続して支払った事業年度の損金にしている場合は認められます(法人税基本通達2-2-14)。収益と対応させる必要がある費用(借入金を預金などで運用する場合の支払利子など)には適用されません。
経営セーフティ共済
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)の掛金は口座振替で納付し、引落しは加入申込みの翌々月から始まります(振替日は毎月27日、休日の場合は翌営業日。初回は申込月から3か月分)。損金に算入できるのは納付した掛金なので、これから加入を申し込んで2026年12月期の損金にするには、10月中に申し込む必要があります。10月に申し込んだ場合は、12月27日が日曜日のため12月28日(月)に10月〜12月の3か月分が引き落とされます。11月以後の申込みでは初回の引落しが2027年1月以降になり、2027年12月期の損金になります。すでに加入している法人が12月に前納する場合は、登録取扱機関の窓口に提出する前納申出書を、前納を希望する月の5日まで(12月なら12月5日まで)に中小機構が受理している必要があるため、早めに手続きをします。
掛金(月5,000円〜20万円、積立限度額800万円)は法人の損金になり、前納期間が1年以内の前納掛金は支払った事業年度の損金にできます。解約したときの解約手当金は益金になり、令和6年10月1日以後に解約して、解約日から2年を経過する日までに再加入した場合、その間に払う掛金は損金になりません。給与を増やした場合の税額控除(賃上げ促進税制)を使えるかも、あわせて確認しておきます(賃上げ促進税制の適用ステップ)。
役員報酬は期の途中で増やしても決算対策にならない
役員報酬は、期の途中で増やしても損金にならない部分が生じるため、決算対策には使えません。役員報酬(定期同額給与)の改定は、事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日までに行うのが原則で、12月決算法人なら3月31日までです。期の途中の改定が認められるのは次の臨時改定事由や業績悪化改定事由に当たる場合で、10月や11月に「利益が出そうだから役員報酬を増やす」ことはこれに当たりません。
- 期の途中で改定できるのは、役員の職制上の地位の変更や職務内容の重大な変更などの「臨時改定事由」がある場合と、経営状況が著しく悪化したことなどによる減額(「業績悪化改定事由」)の場合です。一時的な資金繰りの都合や、業績目標に届かなかっただけの場合は業績悪化改定事由に当たりません。
- これらに当たらない期中の改定をすると定期同額給与に当たらなくなり、損金に算入できない部分が生じます。
- 役員に決算賞与を出す場合は、事前確定届出給与として期限までに届け出た定めにもとづくものなどでなければ損金になりません。
2027年12月期の役員報酬は、納税予測の結果も踏まえて2027年3月31日までに決めます。決め方の考え方は役員報酬の決め方と改定時期で解説しています。
12月決算ならではの注意点
12月決算では、年末年始の休業、1月の給与関係の事務、消費税の2割特例の終了が決算と重なります。次の点を先に確認しておきます。
| 項目 | 確認すること |
|---|---|
| 年末年始の休業 | 12月末に納品されても、年内に事業の用に供していなければ、少額減価償却資産の特例や経営強化税制は2026年12月期に使えない。設置・稼働の日程を業者と詰める |
| 決算賞与の支払日 | 支払期限の2027年1月31日は日曜日。前営業日までに振り込む |
| 申告期限の延長の特例 | 定款の定めなどで決算後2か月以内に定時総会が招集されない法人が初めて受ける場合、申請の期限は事業年度終了の日(2026年12月31日)。税務署は12月29日〜1月3日は執務を行っていないため、早めに提出する |
| 1月の給与関係の事務 | 源泉所得税(納期の特例)の納付が1月20日、源泉徴収票・法定調書合計表・給与支払報告書と償却資産の申告が2月1日。決算の資料づくりと並行する |
| 消費税の2割特例 | 適用できるのは令和8年9月30日を含む課税期間まで。12月決算法人では2026年12月期が最後(要件を満たす場合) |
2割特例の適用を受けた翌課税期間から簡易課税制度を使う場合は、その課税期間の申告期限までに簡易課税制度選択届出書を出せばよいとされています。2027年12月期以降の課税方式の選び方は消費税の2割特例はいつまで?をご覧ください。
やってはいけないこと
利益を減らすためだけの支出や、架空の経費・売上の先送りは、決算対策ではありません。前者は手元資金を減らし、後者は税務調査で否認されれば加算税の対象になります。
- 節税だけが目的の支出:たとえば800万円超の所得の部分で100万円を使っても、減る法人税は23.2万円で、法人税だけで見ると手元資金は差し引き約77万円減ります(地方法人税・法人住民税・法人事業税の減少を含めても、支出額より減る税額のほうが小さいことは変わりません)。
- 架空の経費・売上の除外や先送り:事実を隠したり仮装したりして申告した場合は、過少申告加算税に代えて35%の重加算税の対象になります。
- 通知だけで払わない決算賞与:1か月以内に全員に支払わなければ要件を満たさず、12月期の損金になりません。
- 使っていない設備の償却:期末に納品だけ受けて事業に使っていない資産は、償却や特例の対象になりません。
判断に迷う支出は、実行する前にご相談ください。9月決算法人向けの9月決算法人の決算対策や、始める時期の考え方をまとめた決算対策はいつから始める?も参考になります。
申告・納付期限は2027年3月1日(月)
法人税の確定申告と納付の期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。2026年12月31日に終わる事業年度では、2027年2月28日が日曜日にあたるため、翌日の2027年3月1日(月)が期限になります(国税の申告・納付の期限が土日・祝日等にあたるときは、その翌日が期限とみなされます)。
| 税目 | 2026年12月期の期限 |
|---|---|
| 法人税(地方法人税を含む)の確定申告・納付 | 2027年3月1日(月) |
| 法人の消費税の確定申告・納付 | 2027年3月1日(月)(課税期間の終了の日から2か月以内) |
| 法人住民税・法人事業税の申告・納付 | 2027年3月1日(月)(法人住民税は法人税の申告書の提出期限まで。法人事業税は事業年度終了の日から2か月以内で、期限が日曜日にあたるため翌日) |
| 申告期限の延長の特例を受けている場合 | 法人税は延長後の期限まで申告できるが、延長期間には利子税がかかる。消費税は届出書を出していれば1か月延長され、延長期間には利子税がかかる |
法人税の申告は「確定した決算」にもとづいて行うため、決算を承認する株主総会の日程も3月1日から逆算して決めておきます。
よくある質問
Q. 12月決算法人の申告期限はいつですか?
A. 法人税の確定申告と納付の期限は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。2026年12月31日に終わる事業年度の場合、2027年2月28日が日曜日にあたるため、翌日の2027年3月1日(月)が期限になります。法人の消費税の確定申告の期限も課税期間の終了の日から2か月以内で、同じ日です。
Q. 10月から役員報酬を増やして利益を減らせますか?
A. 決算対策としては使えません。役員報酬の改定は、事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3か月を経過する日まで(12月決算法人なら3月31日まで)に行うのが原則です。期の途中の増額は、役員の職制上の地位の変更などの臨時改定事由がなければ定期同額給与に当たらず、損金に算入できない部分が生じます。
Q. 決算賞与を12月中に払えなくても損金にできますか?
A. 使用人への決算賞与は、要件を満たせば未払いでも12月期の損金にできます。12月31日までに支給額を各人別に、同時期に支給を受けるすべての使用人に通知し、その全員に翌年1月31日までに支払い、12月期に損金経理することが要件です。支給日に在職している人だけに支給する条件での通知は、要件の通知に当たりません。役員への賞与は、事前確定届出給与などに当たらなければ損金になりません。
Q. 少額減価償却資産の特例は、いくら未満の資産が対象ですか?
A. 中小企業者等が令和8年4月1日以後に取得等をした資産は取得価額40万円未満、令和8年3月31日までに取得等をした資産は30万円未満が対象です。2026年12月期では、1〜3月に取得した資産は30万円未満、4月以後に取得した資産は40万円未満で判定し、取得価額の合計額は年300万円が上限です。事業の用に供した事業年度に損金経理することが必要です。
まとめ
12月決算法人は、10月に9月末の試算表から通期の利益と法人税等を予測し、11月に方針を決め、12月に実行します。決算賞与は12月31日までに全員に各人別に通知して1月31日までに支払い、少額減価償却資産は1〜3月取得なら30万円未満、4月以後の取得なら40万円未満(年300万円まで)で、いずれも12月中に事業の用に供します。経営セーフティ共済に新たに加入して12月期の損金にするには、10月中の加入申込みが必要です。役員報酬は期の途中で増やしても決算対策になりません。利益を減らすためだけの支出や架空の経費は避け、2027年3月1日(月)の申告・納付期限に向けて納税資金を準備してください。
国税庁「C1-1 法人税、地方法人税及び防衛特別法人税の申告」「C1-17 定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請」、国税庁タックスアンサー No.5759「法人税の税率」、No.5350「使用人賞与の損金算入時期」、No.5211「役員に対する給与」、No.5408「中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例」、No.5434「中小企業経営強化税制」、No.6610「法人に係る消費税の確定申告書の提出期限について」、国税庁「令和8年度 法人税関係法令の改正の概要」、国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」「令和8年度税制改正特集(インボイス)」、法人税基本通達2-2-14、中小企業庁「中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き(令和8年度税制改正対応版)」、中小企業基盤整備機構「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)制度のしおり[令和8年1月改訂版]」、e-Gov法令検索(法人税法第74条・第75条・第75条の2、国税通則法第10条・第68条、地方税法第20条の5・第53条・第72条の25・第321条の8・第383条)。本記事は2026年10月時点で公表されている法令等にもとづく一般的な解説です。税制は改正されることがあり、個別の事情によって取扱いが異なります。実際のご判断にあたっては最新の公表内容をご確認いただくか、税理士にご相談ください。本記事の情報にもとづく行為により生じた損害について、当事務所は責任を負いかねます。
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