税理士並河の税界よもやま話⑤(H20.8.29)

今回は最近改正された法人税の「役員給与の定期同額」の規定のなかの「業績悪化による改定理由」について私見を述べてみたい。
規模の大小に関係なく企業経営者としては常に「利益の平準化」を願うものですが、損益を比較的容易にコントロールしやすい項目に人件費があり、とりわけ中小法人の場合役員給与を増減するケースが数多く見うけられます。
① 期首から三ヶ月以内の改定と②臨時改定理由に該当する場合には定期同額給与として認められるわけですが、②のケースで増減した場合について考えてみたい。
(1) 期中に役員給与を増額した場合
3月決算法人のA社が9月中間を終えて好業績が今後も期待できる見込みから10月より役員給与を月額50万円から100万円に増額した場合、現行税制では増額した上乗せ分(100万円―50万円)×6ヶ月(10月から翌年3月)=300万円が損金不算入となります。
(2) 期中に役員給与を減額した場合
同じ3月決算のB社は9月中間決算で業績が悪化し、今後も厳しいとの見通しの下に役員給与を10月より期首の50万円から30万円に減額した場合はどうでしょうか?
従来の法人税の取扱いではこのような場合特に問題にはならなかったが、直近の法人税基本通達9-2-13には次のような記載があります。
「令第69条1項2(定期同額給与の範囲等)に規定する『経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由』とは経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるをえない事情があることをいうのであるから法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する」とあります。
従ってこの通達の例示のような理由で減額した場合定期同額給与とは認められず、減額した金額(50万円―30万円)×6ヶ月(この場合期首4月から9月まで)=120万円が損金不算入になる可能性があります。
(3) 法人税基本通達9-2-13の問題点等
経営者が著しく経営が悪化したと判断することは日々資金繰りに追われ倒産の危機にさらされている中小法人にとって机上の話ではなく、一歩対応が遅れればすぐにも命取りになりかねず、このような例示規定が必要かどうか大いに疑問があります。
勿論期中で給与を頻繁に増減するようなことは恣意性の排除からも厳に慎むべきでしょうが、もともと給与を減額することは法人所得の増加を意味するため課税上さしたる弊害は認められないはずである。
「通達」は「法令」とは違って司法の判断を拘束するものではないとはいえ、現実にはほとんどの法人が通達に拘束されており、実務を混乱させる基通9-2-13の例示規定は消去されるかもしくは執行上特段の配慮で対処する等を当局に希望するものです。