赤池三男第九話「- 除雪費用 -」

 
 真っ白で、綿みたいな柔らかい綺麗な雪。山や野を白で隠す絶景。同じ日本でも沖縄には見られない、北日本だけが知る美しい雪景色。
 ところが、その美しい雪が、雪崩など災害の元になっている。南の国の人々には、わからない災害である。交通も遮断されて、日常生活が不便になる。除雪費用がかかる。
 豪雪地方では、年間の除雪費用が100億円超も要する地方自治体がある。政府も今年の費用にと、二月に105億円の除雪費用の追加配分を決定した。
 除雪の為の費用は効果が少ないから有効な税金使用とはいえない。個人での除雪費用は税制上何とか処置は出来ないだろうか。
 災害と言えば、昨年は、東日本災害が起きた。今以て被災害は続いて、回復には数十年掛るともいわれている。地震は、正確な予知も困難であり、防御も難しい。
 しかし、降雨や降雪は予知できる。予知は可能でも、防御は充分ではない。雪は、地震と違った自然の恐ろしさをもたらす。
 今年は、積雪が多いという。降雪は平年並みだが、融雪が少ないので積雪になるのだそうだ。屋根に積もった雪が、その重さで建物を崩壊させる。民家の屋根に積もった雪を下ろす費用が、多額になっている。
 そして雪降ろしは屋根の上であるから、危険が伴う。滑り落ちることもある。この冬も、犠牲者がすでに100人を超したと報じている。
 家に若い人のいる家庭では、何とか凌げるが、若者のいない老人だけの家庭では、除雪を委託しなければならない。
 委託費用は多額になる。一日、食事付きで5万円も、が相場だそうだ。雪の季節では、一冬一回では済まない。一冬、10回だと50万円になる。費用を国や地方自治体が負担してはどうかとの意見もあった。
 昭和52年には、北陸、東北地方に豪雪があった。国会では、除雪費用を雑損控除に含めて適用せよと強い意見が出た。
 この年の確定申告には充分には間に合わなかったが、適用を認めることとして、後年、通達に折り込み、現在に至っている経緯がある。
 法人ならば損金に落とせないこともないが、個人の場合は、経費になる項目を探すのが困難だ。経費に出来ないかの議論は消えた。
 では、所得控除ではどうかとの案がでた。基礎控除や生命保険控除と同じように「除雪控除」。
 しかし、雪の降らない地方の人達には理解し難い。
 税制は国民が全部該当しなければいけない。除雪控除では、雪の降らない南国の人達には適用はない。南国では、猛暑控除を設けよ!との声も出かねない。現に議論中に南の地方出身議員からでた。
 そこで、「雑損控除」に含めて適用する案に落ち着いた。
領収書の有無もおおらかに適用する、と国税庁は国会答弁している。雑損控除は、所得の少ない人には、適用できない。雪は金持ちにも貧乏人にも平等に降る。