赤池三男第二十二話「- 領収書のサイズ -」(H25.5.24)

 確定申告が始まる1月下旬に、依頼者がダンポール箱を”どさん”と3個・4個と置いてゆき「先生お願いします」。
 税理士が、依頼者の置いて行ったダンボール箱を開けてみると、請求書や領収書が雑然と一杯に。それを、帳簿書類化する為に一枚毎に広げて、しわを伸ばし、項目毎に整理しながら思う。領収書がまるでゴミの様に扱われている。一々、領収書などの皺を伸ばしてから、オフコンに打ち込む。
 悪く言えば、税理士事務所はこの時期、ゴミの中に埋もれ、ゴミ整理をしているかのようだ。領収書では、税理士業が最も難行苦行しているかもしれない。
 会社の経理担当者も、取引相手や社内の請求書、領収書などを整理して、記帳する。税理士とは違った面で、領収書の苦難を味わっている。
 そもそも、領収書とは何か。
 江戸っ子は呑み屋で「領収書?そんなものはいらねえ!」と粋がって、貰わなかったらしい。現代のサラリーマンは、領収書を貰ってくる。交通費、会議費とか交際費として会社の経理担当に持って行き、経費?として認めて貰うらしい。ふた昔前、コミックソングで「領収書」が流行ってサラリーマンに歌われていた。カラオケにも配信されている。
 買い物をすると「領収書は要りますか?」と聞かれる。客も「要ります」「レシートで良いです」。レシートと領収書は異なるが、同様な効果として通用している。
 法的にはどうか。民法第48条「弁済をした者は、弁済を受領した者に対して、受領証書の交付をすることができる」とあり、領収書を発行しないときは、抗弁権で弁済を拒むことが出来ると解されている。
 消費税法第30条(仕入れに係る消費税額の控除)で「帳簿及び請求書などを保存しない場合には~~適用しない」とあり、仕入課税に領収書の保存が無いと適用しない規定が有る。
 帳簿書類を整理していると、領収書が百態百様であることに気付く。税理士業で有れば誰もが不便さを嘆く。ある領収書印刷会社の広告に「280種類から承ります」とあった。この社だけでも多数あるのだから、日本中・世界中では何千種に成る事やら、予測も立たない。
 まず、領収書のサイズ差が目立つ。普段扱っている手元にある領収書で、小は3cm×5cmから。大はB5版がある。サイズは千差満別。使い易い大きさは、タクシーやコンビニのレシートだろう。ほぼ全社同一。ホテルの物は一般に大き過ぎるくらいのものが多い。
 紙色は、白が多いが黄色、緑、水色など多色。紙の厚さも多種多色。感熱紙物では「色が変わることが有ります」と注意書きが有る。帳簿書類は7年間保存義務が有るが、こんな永年では、文字が消えてしまって証拠能力が薄れる。
 経理担当者の不便さを理解して、領収書のサイズを少なくして貰えないだろうか。指導する所管庁はどこだろうか。総務省?文部科学省?法務省?財務省?通商産業省?—これも領収書のサイズ同様、多種多様に思える。
 そして「飲み屋で領収書発行を指導して貰える様に」税務署長さんに懇願したら「私の(税務署の)所管では有りません、と軽く断られた。」