家相建築設計事務所様 連載(25)~家相の流儀・流派~(H25.9.2)

こんにちは、佐藤秀海です。
 
今回は土地選びのポイントについて解説します。
 
家には家相があるように土地にも地相があります。いくら利便性が高くても、人が住んではいけない土地もあるので要注意です。歴史的な古戦場の跡地や大災害でたくさんの人が亡くなった土地は、人が住めるようになるには長い時間がかかります。また、殺人事件や火事で死傷者が出た土地、あるいは人にだまされて泣く泣く手放した土地なども危険ですね。見た目には何の問題がなくても、そんな土地に家を建てて住むと、原因不明の病や仕事上のトラブルなどが起きて大変です。
 
土地の吉凶を調べるには、その土地の郷土史などを調べたり、お寺や神社にお聞きしたり、近所のお年寄りの智恵を借りるなどの方法があります。ネットで検索しただけは絶対にわからないので、とにかく、自分の足で歩いて、出会った人との縁を大切にしてください。
 
私も土地探しのお手伝いをしていますが、必ず、現地に出向いて吉凶の判断をしています。今まで何百、何千と土地を観てきましたが、やっぱり資料や写真だけでは土地そのものの価値の判断はできません。先日も四国の香川県まで行ってきましたが、どんなに忙しくても、必ず出かけると決めています。
 
もう十年以上前の話になりますが、九州から急な依頼がありました。連絡をくださったのは母親で、娘と一緒に住むための土地探しをしていて、東南の角地の最高の土地が見つかり、鑑定してほしいとのことでした。古屋が建っていますが、とにかく急いで鑑定してほしいの一点張り。しかし、そういわれてもスケジュールがいっぱいですぐに行くわけにはいきません。とにかく良い土地だと力説されるし、確かに東南の角地は家相上でも最良なので直接出かけなくても良いかなと、それとなくお断りしてみたのですが、とにかく来て欲しいと納得されません。仕方なく予定をやりくりして急きょ九州まで向かいました。空港には上機嫌の母親と一緒に住む予定の娘さんが迎えに来てくれましたが、娘さんは一言も口をきいてくれません。おかしいなと思いながら現地に着くと、そこには不動産業者と施工業者が待っていて、私がOKを出せばそのまま土地売買と建物請負契約を締結するとのこと。そんな話は一言も聞いていなかったので驚きました。
 
とにかく、鑑定を始めましたが、すぐに「これは困ったな。」と思いました。
 
土地から受ける感触が悪く、とにかく暗くて、どんよりして、とてもおすすめできる気持ちになれません。古屋が建っているのが原因かとも思うのですが、やっぱり土地に原因があるとしか思えないので、母親には購入を諦めるように伝えました。当然、母親は納得しません。どうしてダメなのか、何とかならないのかと食い下がりますが、それを見ていた娘さんがやっと口を開きました。「お母さん、私の言った通りでしょ。約束だからこの土地はあきらめて。」と、業者さんたちをさっさと返してしまいました。
 
事情を伺うと、娘さんはこの土地に来ると私と同じように気分が暗くなり、とても住む気にならなかったとのこと。そのことをいくら母親に説明してもわかってもらえず、それなら事情を説明せずに私を呼んで、私が問題なしと太鼓判を押せば、娘さんが折れて母親の言うとおりにする約束だったとのことでした。
 
結局、約束通りにこの土地はあきらめることになったので、何とか事なきを得ましたが、あらためて現地に出かけることの大切さを実感した貴重な経験として、今も忘れることができません。
 
次回も土地探しに関する実例を紹介しますので、楽しみにしてください。