税理士並河の税界よもやま話⑧(H20.11.27)

今回は年の瀬が迫ってくると活発化する税制改正の話です。
★税制改正の流れ(二つの税制調査会)
わが国では首相の私的諮問機関として発足した政府税調(香西泰会長)が中長期の観点から税制のあるべき大枠の方針を定め、自民党税調(津島雄二会長)が事実上税制改正の決定権を握ってきた。
例年12月中旬に自民党税調が「税制改正大綱」を決定し、これをベースに政府が翌年の通常国会で税制改正関連法案を提出し、3月頃に法案成立、官報掲載といった順で進んでいきます。
納税者としては期限立法の措置法の廃止か延長か等を含めその推移を早く知りたいところですが、この間に税務当局へ税制改正の内容等を質問しても情報量は納税者と同じレベルなので当然ながら確たる回答は得られないことになります。
★最近の税制改悪事例(特殊支配同族会社関連法)
法人税法で「同族会社」という言葉は古くから慣れ親しんでいますが、最近では「特定同族会社」とか「特殊支配同族会社」といった紛らわしい表現の同族会社が出てきた。
平成18年4月1日からの「特殊支配同族会社の役員給与の所得控除の損金不算入」という制度は役員給与という損金と個人の必要経費(給与所得控除)による二重控除に着目したようだが、山本守之税理士が述べているように所得の帰属する人格(法人と個人)を無視したもので、中小企業いじめというだけでなく税理論上問題であり、早急に廃止してもらいたい。
税理士会でも同法については政治の窓口となる「税理士政治連盟」が毎年のように完全廃止を国会議員に訴えています。
これに関しては昭和48年にでき、所得税の青色申告者に選択として認められた「みなし法人課税制度」を想起させられた。
この制度は個人事業者の収入から事業主報酬(源泉徴収する)等必要経費を控除して残った所得(みなし法人所得)に所得税を課税するというもので制度矛盾ではないかと感じていたら、知らないうちに消滅してしまった。
★定額給付金談議
最近起きた未曾有の米国金融不安に端を発し、世界全体が同時不況に陥り、政府はわが国の景気対策として平成11年の地域振興券を彷彿させる定額給付金を出すことが喧々諤々の末決まりそうだ。(給付金の税務上の取り扱いは一時所得として非課税の予定)
毎年おびただしい数の税制改正がなされており、税の性格から万人が満足する税制は難しいものの、簡素と公平性の原則は守ってほしい。
与野党接近のご時世では冒頭に述べた二つの税調の外に民主党税調(藤井裕久会長)も注目されてきたようだが、霞ヶ関、永田町には透明性ある、慎重な論議を経て「品格ある税法、後世に耐えうる税制」の構築を望みたい。