食の安全<H20.3.31 更新>
私の出身地秋田の名物郷土料理「きりたんぽ鍋」は、素朴な味わいがあり全国的に
も名を知られるようになっています。東京でも材料のあれこれを購入することができますが、欠かすことのできない素材として比内地鶏があり、これを東京で入手するのは容易ではありません。家庭では比内地鶏でなく、普通の鶏肉でも十分に「きりたんぽ鍋」風を味わうことができます。
さきごろ、地元の一業者が比内地鶏と偽って、卵を産まなくなった廃鶏を長年にわたって販売していたことが発覚しました。「本物の比内地鶏を使っていたのでは高価格となり売れない」という理由でもって、安い廃鶏を使いながら比内地鶏使用の「きりたんぽ鍋」セットをはじめ10種類以上の偽装商品を開発、販売していたのでした。
秋田名物といえば「きりたんぽ鍋」と全国的に知れ渡った名物料理が、儲けにかまけてモラルを失った一業者のせいで吹き飛んでしまいました。
昨年来、比内地鶏だけでなく何百年も続いた老舗、各地のみやげもの更には牛肉製品等の偽装が次々に発覚し、食への不信感が日本列島を覆っています。
加えて、中国から国内大手食品企業が輸入した「ぎょうざ」をはじめとする冷凍食品から毒性の強い農薬が高濃度で検出され、実害にまで及びました。この農薬の混入が中国でなのか、日本でなのか未だ両国間で意見は食い違ったままです。食料自給率が低い日本では、食材を国産品でまかなうには限度があり、素材にせよ加工品にせよ外国からの輸入に依存せざるを得ません。今も昔も日本人は、大人も子どもも焼ぎょうざが大好きですが、昔のように母親が作るぎょうざやコロッケを子どもが手伝うという光景はもはや望めないのではないでしょうか。下ごしらえが省け、しかも長期保存ができる冷凍食品は、現在の食生活にすっかり定着しています。誰もが「食料は高くても国内で作った方がよい」とわかっていても、担い手となる農漁業の衰退が深刻な現状では、極めて困難なことといわざるを得ません。
今「・・・の品格」ということが流行していますが、「品格」とは先人たちが作り上げたすばらしい道徳や秩序といった人類に貢献したことから生まれる自信、誇りといったものではないでしょうか。背信行為により品格を失った内外の関係者たちは、一日でも早く品格を取り戻し、自信と誇りを持って消費者に食の安全を与えて欲しい と願ってやみません。
税理士法人みらい
代表社員税理士 松尾 正