★万博雑感(上海と大阪)
5月1日に開幕した上海万博は開幕当初もちきりだった話題も下火になってきました。
半年間の会期中入場者数は7千万人を予想していますが、スタート時の混雑報道や入場料が160元(約2240円)と中国の購買力平価から見てやや割高なせいか、客足は思ったほど伸びていないようです。
この上海万博と比較されるのが40年前に開かれた大阪万博(エキスポ70)です。
その時の入場料は800円、入場者数は過去最高の6421万人でした。
当時私は幸運にも大阪に勤務していたため、会期中5回ほど会場へ足を運び、中でも嵐のような天候の日の勤め帰りに、通常なら数時間待ちのアメリカ館に並ぶことなく入り、アポロ11号が持ち帰った「月の石」を見ることができたことが特に印象に残っています。
大阪万博は開幕して日を追うごとに盛り上がり、まるで毎日がロングランのお祭のような雰囲気でした。
日本という国そのものがまだ若くて元気でしたが、とりわけ大阪は太閤秀吉以来の栄華のクライマックスともいえるほど活気があふれていました。その後は東京1極集中となり、大阪を中心とする関西地区は往時の面影はありませんが、
天童よしみの歌にある「負けたらあかん、東京に・・・」の「頓堀人情」のように頑張ってほしいものです。(現在橋下知事孤軍奮闘中)
ところで上海万博の日本館では開幕日から日の丸が掲揚されていないと聞き、国として過剰なまでの自虐的態度に憤慨させられましたが、嘆きが聞こえたのか5月19日からは掲揚されたということなので多少救われた気持ちになりました。
★チェイス(追跡)2話
<チェイスその1>はNHK土曜ドラマ(全6話4/17~5/22)で放送された「チェイスー国税査察官」の話です。
今は懐かしい映画「マルサの女」の脱税の舞台は当然日本国内でしたが、「チェイス」ではマネーのもつボーダーレス性と国家が徴税権をもつ国境がテーマとなって舞台もタックスヘイブンであるカリブ海の島々が出てきて複雑化しています。
ドラマの中ではマネーロンダリング(裏金、脱税資金の洗浄)、タックスヘイブン(ケイマン諸島、バハマといった租税回避地)、パーマネントトラベラー(税逃れのため「居住者」とならず終身旅行者となる)といった横文字の専門用語が出てきています。
江口洋介扮する国税査察官がアラタ扮する不幸な過去を持つ脱税コンサルタントが描く脱税スキームをチェイスするストーリーですが、多少無理して作ったように感じます。
法の網をかいくぐる国際課税回避スキームでは国税は後手に回る傾向にあり、担当官の執念だけでなく、租税条約や国家間の協力といった地道な環境の整備が不可欠です。
<チェイスその2>は私が国税局調査官時代の管外出張の際の出来事です。
ある月曜日の朝、調査官の私と年配の主査の二人は調査先がある新神戸駅めざし、新幹線で東京駅を出発しました。
昼食の弁当を求めて、私は名古屋駅に止まった際、下車して弁当を物色していたところ、食にうるさい主査が後から降りてきて結局二人で駅弁を買う羽目になりました。
それから駅弁を手にして列車に戻ろうとしたところ、無情にも目の前でドァが閉まり、音もなく列車は発車してしまった!!!
なんと列車内には仕事上のカバンやコートを置いたままだった!!!
駅員に事情を説明したところ、新神戸駅で荷物を降ろす努力はするが、場合によっては終点の広島駅まで取りに行ってもらうかもしれないと言われた。
最悪のケースを想定しながら、二人は主なきカバンを載せた列車を20分ほど遅れてチェイスしました。
目的地の新神戸駅に到着し、緊張して駅の構内に入ると間もなく場内アナウンスでわれわれの名前が呼ばれ、荷物を引き取りに来るようにと告げられたのでやれやれと安堵した。
出張とか旅行などで如何に環境が変わっても、大事なものは肌身離さずというリスク管理を忘れてはいけないと肝に銘じた次第です。