ウナギの繁殖は謎が多く、古代ギリシャのアリストテレスさえも「泥の中から生じる」と考えていたと伝えられています。今やウナギの生産は、稚魚であるシラスウナギを捕獲して養殖するのが一般的となっていますが、年々シラスウナギの捕獲量が激減してきており、ウナギの価格がうなぎのぼりに上昇して誰もが気軽に食べられるといった庶民の食材からかけ離れたものになってしまいました。ウナギはマリアナ諸島近海で卵からかえった後、黒潮に乗って日本の近くまでやってきて6㎝位のシラスウナギとなります。国内の主産地鹿児島では、平成20(2008)年度に1,580㎏あった水揚げが平成21(2009)年度は 724㎏、平成22(2010)年度は 522㎏とこの 3年間で 3分の 1まで落ち込んでいます。シラスウナギ不漁の原因は、乱獲や河川の汚染などによるものと水産総合研究センターの指摘です。
世界のウナギの70%を消費する日本では、40年ほど前から本格的にウナギの誕生の謎を探る調査を始め、遂に昨年と今年ウナギの繁殖に関し二つの朗報をもたらしました。
一つ目は、昨年の春水産総合研究センターでは飼っているウナギから人工的に受精して卵をかえすことに成功し、ウナギの完全養殖を可能にしました。しかしシラスウナギにまで育てる間の餌がわからず大半が死んでしまい、今のところ商業化の道は険しい状況にあります。
次に東京大学と水産総合研究センターの研究者チームが、世界で初めてニホンウナギが海で産んだ卵を発見したのです。平成 3(1991)年に突き止めたニホンウナギの産卵場であるマリアナ諸島付近を調査航海中、プランクトンネットの中に31個のニホンウナギの卵が入っていたことが確認されたのです。世界で初めて天然ウナギの卵の採集に成功したことは、世紀の大発見として今年の 2月にはイギリスの科学誌にも発表されました。今後卵を見つけた海域の水温や成分などを手がかりにすれば、シラスウナギまで育てるのに最も適した餌などが割り出されて効率よく育てられるようになり、完全養殖の実用化の道が加速していき、ウナギのカバヤキが再び身近なごちそうになることが実現しそうです。
姿、形、風味は異なりますが、黒潮に乗って太平洋を北上する魚にカツオがあります。料理のプロは、珍重される初ガツオよりも脂が乗っている 7~ 9月ごろのカツオが一番おいしく、栄養も満点といいます。過去14年間連続してカツオの水揚げ日本一であった大震災の被災地宮城県の気仙沼漁港が過日再開され、魚市場ではとりあえず カツオだけを扱っていくそうです。カツオは昔から「勝つ」に通じる縁起物でもあります。大震災にも「勝つ」との願いを込めて、今年はカツオで乗り切る「節電の夏」とはいかがでしょうか。
税理士 松尾 正