赤池三男第十話「- 医療費控除 -」


 確定申告で、税が還付される事は、国民に知れ渡っている。
医療費が確定申告に寄って還付されるようになったのは、昭和30年頃である。
医療費控除による還付申告件数はかなりの数になる。
医療による一点当たりの点数があがった代償として、高額に支払った医療費を、税に寄って還元する事になった。日本医師会長武見太郎氏の厚生行政措置である。
 
この措置が創設されて以来、医療費領収書を持って還付申告書を作成してくれと、国民が多数税務署に来るようになった。昭和61年度125万人をピークに、平成6年度は96万人。平成22年度では93万人だった。
 
ちなみに 国民の医療費の状況は
昭和29年 2,152億円(一人当り 2,400円)
昭和60年 16兆159億円(13万2,300円)
平成元年  20兆6,074億円(16万100円)
平成10年 29兆5,823億円(23万3,900円)
平成20年 34兆8,084億円(27万2,600円)
と莫大な支出となっている。
 
 当初は「いりょうひ」の言葉が馴染まなかったのか「衣料費」の領収書を持って税務署に来署するなど、笑い話があった。
 今でも時々税務署員を噴出させる「いりょうひ」がある。法では「同一生計をする配偶者その他の親族の医療費を支払った場合」を何と解釈したのだろうか、犬・猫の治療費を持って「犬・猫と謂えども、我が家では家族同様だから…」には、税務職員も苦笑いせずにはいられない。
 
 医療費控除が、国民に末端まで理解されたと思ったら、まだまだ…。
支払った医療費が、税金の申告で全額返還されると思っている人がまだいる。
還ってくるのは、支払った医療費ではなく、支払った源泉税などの還付と所得税の減額である。
 
 創設当時から見て、医療費の認定科目が大分変った。
現在の医療費控除の対象は「医師又は歯科医師による診療費又は治療費」「治療又は療養に必要な医薬品の購入の費用」となっている。主に、治療に重点が置かれていたのだろうか。
 
 創設当時は、出産分娩費用は認められていなかった。売薬の風邪薬、あんま、針きゅう、マッサージ費。眼鏡も、入院食費も、勿論おむつも…。
 近年では、大分、適用範囲が広がった。しかしながら、予防の最先端措置である人間ドックは今以て否となっている。国民の治療費が嵩み政府出費が、オーバーとなったことと、政府が予防に力を入れたからだろう。予防に力を入れることは当然の策。病気になってから、では遅い。費用もかさむ。国民は健康で文化的な生活を営む権利を有する。
支払った医療費は国民の健康を維持する費用だから政府が払えと言うかも。
何れ、全額返せ、という説も出てくるかもしれない。