伊丹十三監督の映画「マルサの女」で、国税庁の強制調査の内情が国民に
明らかになった。従来は、単に税務署は怖い!とだけ思われていたが、
尾行や追跡・内偵、家宅捜査をするのですか?
脱税の心得のある人が、まさか自分の跡を付けられて、プライバシーを
すっかり把握されていたとは—。自分の脇の甘さにがっくり。
こんなに苦労までして、税務官庁が課税の公平を図っていたとは。伊丹監督
の映画によって、国税職員が国民の関心を浴びた。
特に、尾行、追跡は刑事事件の刑事だけだと思っていたら、税務署が—。
すっかり税務調査の内情を知られてしまった。この影響は大きい。
税務署の窓口に「マルサの女になりたい」と、就職活動の女子大学生が現れた。
映画では、モデルになった女性職員が存在していたことは事実。
査察官は、困難が伴う。ある時、激しい夜の雨中を、二人の査察官が車中で
内偵(見張り)をしていたら、通りかかりの男がフロントガラスを叩いて
「税務署の人も大変ですなあ!」と同情の声を掛けられて—何で税務署だと
分かったのかなあ—。笑えない話。
内偵中だと言えなくて、不審者と思われ警察官に連行され、一晩留められた査察官。
24時間連日の内偵調査は、しょっちゅう。身体が臭くて家族に嫌われたお父さん職員。
幾日も家庭に帰らない理由が言えなくて、離婚の危機に会った職員—。
税務署調査は、国税通則法の質問調査権に基づく任意調査だが、
査察(マルサ)調査は、国税犯則取締法に起因する。
査察部門である国税局員が、特別に許諾される調査権である。逮捕権は無いが、
裁判所からの許可状を得て、家宅捜査権や物件の押収権があるから、強権力である。
調査は、検察庁に立件される。
大口、悪質な納税者を強制調査する一罰百戒を目的とする。中には半年にも及ぶ
長期の内定調査で実施に及ぶ。職員は、体力が必要である。
全国に約1,300人の国税犯則取締(査察調査)権を持った職員が配置されている。
日本経済の中心地の東京国税局には約600人。
大阪国税局約300人、名古屋国税局約140人—。
毎年、全国で200件の調査目標。永い間、目標は保たれてきた。
強制調査したから、必ず検察庁に告発されるとは限らない。告発には至らない
少額のもの、見込み(仕込み)違いがあることも。200件の調査で、告発は70%台。
近年の実績では、一件当たりの平均脱税額1億3千万円程度。
脱税隠匿物件が、通常では考えられない所に隠されている。金塊が庭の地中に、
現金や有価証券がトイレの便器に、天井裏に—。
どうして国税職員は,隠し場所を発見できるのだろうか。
査察官は、神様なのだろうか。
いいえ!発見できたのは、脱税者自らが教えているのです。
「眼は口ほどにものを言い」と言います。