税理士並河のよもやま話『随想「三都物語(東京・大阪・名古屋)」』(H25.12.25)

1 「三都物語」について
「二都物語」といえばディケンズがフランス革命当時の「パリ」と「ロンドン」を舞台として書かれた有名な小説です。
「三都物語」は三つの都市を並べて記すわけですが、その趣旨なり、テーマによっていろいろな組み合わせが考えられ、その特徴等を比較して楽しむことができます。
例えば旅行会社の企画する中国の三都物語は北京(政都)・上海(商都)・西安(古都)です。
日本では平成2年、JR西日本が観光キャンペーンの関西三都物語として「京都・大阪・神戸」を取り上げ、更にそのイメージソングとして谷村新司は自身の作曲した「三都物語」を歌いました。
江戸時代の三都物語は「江戸・京都・大坂」、室町時代以前の三都物語は「奈良・京都・鎌倉」となります。
現在の日本の三都物語に相応しい都市をあげるとすれば、関東、首都圏の「東京」、関西、近畿圏の「大阪」そして中部、東海圏の「名古屋」になると思います。
単に人口数だけであれば、東京(推計人口905万人)の次は横浜(370万人)となり、大阪(268万人)、名古屋(227万人)をしのぎますが、横浜は首都圏に吸収されます。(人口の話のついでですが、わがふるさと夕張市は今年ついに1万人の大台を割ってしまいました。全国で最も人口の少ない市は歌志内市の4千人です。)
三都の共通点として日本の太平洋ベルト地帯の重要な拠点として経済、文化面で地域の影響力、存在感があり、歴史と伝統の象徴である名城として、江戸城・大阪城・名古屋城を擁し、地元人気球団の巨人・阪神・中日を持っていることです。

2 名古屋の躍進
私はここ数年仕事の関係で名古屋へ行く機会が増えましたが、新幹線で名古屋駅に降りるお客さん(主としてビジネスマン)が年々多くなってきたように感じます。
これはトヨタを中心とする自動車製造業の活況が東海地区の経済基盤拡張をもたらした結果によるものと思われます。
ちなみにトヨタの平成26年3月期の会社予想の連結売上高は25兆円、税引き前利益は2兆円と発表され、桁違いの強さを示して、日本経済を牽引しています。
名古屋市内の街並みを見ても道路は広々して余裕があり、建物もきれいで町全体が清潔感にあふれています。
名古屋といえばかなりむかし、タモリが名古屋を目の敵のように悪口を言って話題となったことが思い出されます。
彼曰く「名古屋は東京と大阪に挟まれて独特のコンプレックスがある。田舎なのに都会ぶる。エビフライをごちそうと思っている。名古屋弁は響きが悪い。云々」
これに対し地元から「名古屋が田舎なら日本の9割以上は田舎だ。エビフライはうまいではないか。名古屋弁と一口で言っても尾張弁、三河弁、知多弁等あり、福岡人には云われたくない」と堂々と反論していました。

3 エスカレーターの片側空け(右立ちか左立ちか)
毎日何気なく利用している駅などのエスカレーターの乗り方として、急ぐ人のために片側に寄ることがマナーとなっています。
これに関して「税理士界」という会報(11/15号)に仙台市の岩松正記税理士が興味ある随筆を書いていました。
彼の記事によると「日本では大阪だけが右側に立って、東京をはじめほとんどの地方は左側に寄って右側を空けていると云われているが、地元仙台では大阪と同じ右側に立ち、ロンドン、パリ、ニューヨークや東南アジアといった海外も右立ちがふつうである」とのことである。
大阪人から見ると東京の左立ちはおかしく、自分たちがグローバルスタンダードと言いたいかもしれませんが、本来右とか左とかではなく「危険であるからエスカレーターの歩行自体は控えるように」とメーカーや施設側は呼びかけているようで、急ぐ人は階段を使ってくださいということでしょう。(もっとも並行する階段の設置がない所もあり、日本人はせっかちなのでこの流れは変わりそうもありませんが)

4 大阪人気質
先日久しぶりの関西出張の折、大阪駅を降りて駅の周辺を見渡すと、駅の本体をはじめ周囲の建物も新しくホテルなどができて高層化されていました。
東京駅の丸ノ内、八重洲のいずれの駅前の建物もほぼ同じ高さに秩序よく並んでいますが、大阪駅前の建物の高さはてんでんばらばらで、いかにも自己主張の強い大阪らしさを感じました。
大阪人気質については平成6年大谷晃一氏が書いた「大阪学」に余すところなく書かれていますが、その一節に次のような記述があります。・・・東京人は「これ幾らだったと思う?」と高いことを自慢したがるのに対し、大阪人はよいものを安く手に入ると「これナンボしたと思う?」と隠さずにむしろ安いものを自慢して吹聴したがる。
大阪人は合理的で本音をさらけだし、見栄を張らないので平気で値切ったりするが、行き過ぎるとえげつなく感じることもあります。

5 名古屋人気質とご当地ソング
三都の話で歌についていえば、東京と大阪はそれにちなんだ歌はいっぱいありますが、名古屋にちなんだ歌がないのは寂しいことです。
森進一が「盛り場ブルース」を歌った歌詞の中に名古屋の盛り場が「・・・夜のお城のつれない風に 髪も乱れる 栄 今池 広小路 」として登場するくらいです。
名古屋という地名が歌に合わないのか、住んでいる人に演歌を受け入れる何かが足りないのかわかりませんが、名古屋人は結構ウチとソトを使い分けているといわれます。
昔、出張で名古屋に行き、夜に飲み屋に入ろうとしたところ、さして高級とも思えない店の入口で、一見のお客はお断りしているといわれ、不快な思いをした経験があります。
名古屋人の金銭感覚は大阪人とは違うようですが、総じてしまり屋が多いようです。
従って名古屋での商売は難しいとよく言われ、関東系企業と関西系が進出先でぶつかる名古屋地区はさながら関ヶ原の合戦にも例えられます。
愛知県は戦国の三大英雄(信長、秀吉は尾張、家康は三河出身)を輩出したことで有名ですが、名古屋地区を制する者は天下を制するといえるかもしれません。

6 三都物語と日本の行方
大阪は昭和45年(1970年)の大阪万博の時が一番繁栄していたし、名古屋は自動車産業が絶好調の今がピークではないかと思われます。
それに対し東京は7年後の東京五輪を控え、持続的な繁栄が約束され、まさに一人勝ちの様相を呈しています。
一極集中は災害の際の首都機能の危機という問題もありますが、他の二都を含む各地方がそれぞれ独自の伝統、文化を堅持して互いに競い合い、発展しないと日本全体は活気がなく衰退してしまいます。
7年後に生きていればオリンピックを日本で生涯2度も見られるという楽しみが増え、誠にありがたいことです。
先般、上野公園に東京に住む夕張の高校時代の同期が集まって、来年は卒業50周年なので東京で記念同窓会を行うための会場探しを飲みながら話し合った。 その席でI君から「7年後の2020年は浅草でマラソンコースの沿道で旗を振って応援した後、近くの飲み屋で同期会をやろう」という提案があり、異議なしで7年後の予定は決まりです。
あとはみんなの健康状態のみということになりました。