アホウドリ(H26.5.30)

 東京都は 5月12日小笠原諸島・媒島 (なこうどじま) で、国の特別天然記念物で絶滅危惧種のアホウドリとみられるヒナを確認したと発表しました。国内のアホウドリの繁殖地には伊豆諸島の鳥島と尖閣諸島がありますが、このヒナがアホウドリと確認されれば小笠原諸島では戦後初となります。かつて北西太平洋の島々には数十万羽のアホウドリが生息していたとみられていますが、19世紀後半から20世紀前半にかけて羽毛採取のために乱獲され激減しています。
 現在国内では伊豆諸島の鳥島などに約 3,000羽が生息して繁殖していますが、鳥島は活火山で噴火の恐れがあります。鳥島は明治19(1886)年以降人が住むようになりましたが、明治35(1902)年の大噴火によって住民 125名全員が死亡するという大惨事がありました。その後昭和14(1939)年にも噴火し、戦後測候所が設置されていたこともありましたが、火山爆発の危険があり居住するのに不適切と判断され現在は無人島となっています。アホウドリの絶滅を防ぐため、環境省などが鳥島から 5年間で70羽のヒナを小笠原諸島の聟島 (むこじま) に移送しています。媒島 (なこうどじま) は聟島 (むこじま) から 5㎞しか離れていませんから、移送したアホウドリが成長して産んだ卵がふ化した可能性があると都環境局は指摘しています。
 アホウドリがでてくる小説に吉村 昭の長編ドキュメンタリー小説「漂流」があります。この物語は江戸・天明年間 (1781~1789) 、片道八里の短い航海に出た土佐の船乗りたちがシケに遭って黒潮に乗って流され、絶海の火山島 (鳥島) に漂着し12年に及ぶ苦闘の末、ただひとり生き残って生還するというものです。島にはアホウドリの群れがいました。船乗りたちが近づいてもこの鳥は逃げる気配も見せない、簡単に捕らえられ漂着した船乗りにとっては生きていくための食糧となったのです。作者はこの物語の中で、克明な取材により当時の和船の構造や太平洋の気象、鳥島の風土からアホウドリの生態にまで及び、アホウドリが一方の主役であるかのようです。
 アホウドリはミズナキドリ目、アホウドリ科で、翼を広げると 2m以上もあり体重は 4~ 5㎏と国内最大級の海鳥です。卓越した飛翔能力を持ち平均寿命は約30年と長命で、人間を恐れない性質や陸上ではゆっくりとした動きなどから付けられた学名です。アホウドリの英名は「albatross(アルバトロス) 」、ゴルフではパーより 3打少ないスコアのことをいいます。ショートホールでは不可能なスコアであり、ミドルホールでは第一打でカップイン、ロングホールでは第二打でカップインすることでありアマチュアゴルファーはもちろんのこと、手練のプロにとっても極めて難しいスコアです。アホウドリが翼と風を巧みに利用することで長距離を容易に飛ぶ鳥であることに由来しているといわれています。大海の孤島に生息する希少な海鳥、至難のゴルフスコアどちらも滅多にお目にかかれないものです。

税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾  正