究極のエコカーと呼ばれる燃料電池車(FCV)が、昨年12月世界で初めて一般人向けにトヨタの「MIRAI(ミライ)」が発売されました。今年度中にはホンダ、来年は日産でも売り出す予定となっています。水素を燃料とする発電装置で電気を作ってモーターを作動させて車を走らせます。私たちは学校で水を分解して酸素と水素に分けることを学びましたが、燃料電池では逆の原理で発電します。エコカーには既にガソリンと電気を作って走るハイブリット車や電気を充電して走る電気自動車が実用化されています。ハイブリット車はガソリン車に比べて低燃費ではありますがガソリンを使っている限り排ガスが出ますし、電気自動車は排ガスは出さないけれども、燃料電池車のほうが多くの優れたところがあります。両方とも走行時の音の静かさ、安定性や加速性は変わらないものの、一度の燃料補給で走れる距離が2~3倍も燃料電池車が長く、しかも水素をタンクに補給する時間も約3分で、急速充電しても30分位かかる電気自動車よりも短くなっています。
燃料電池車は、出てくるものは水だけで温暖化の原因となるCO2 などの大気汚染物質を出さないので、次世代エコカーのエースとされるのです。水素は環境にやさしいばかりではありません。先ず豊富にあること、宇宙全体の70%を水素が占めています。資源の乏しい日本としては、いろいろな方法で製造できることが魅力です。将来的にはCO2 排出ゼロの風力や太陽光、水力など再生エネルギーの余った電力で水素を作っていくことができます。
当面の課題としては、水素を燃料電池車の水素タンクに補給する施設、水素ステーションの数が、今は全国で40か所ほどしかありません。ガソリンスタンドの約3万5千か所、急速充電設備の約3千か所に比べてまだまだ少ない状況にあり、政府は当面平成28(2016)年3月までに東京、大阪などを中心に100か所の設置を目標としています。また開発、販売したばかりということもあって、燃料電池車は1台723万円余り、国からの補助金が200万円余りありますから実質520万円くらいとなりますが、まだ高級車並みの価格となっています。
エネルギー資源の乏しい日本は、昔から石油などに代わるエネルギーを模索してきました。先の大戦前には、水から石油を生み出すとの町の化学者がいて、この情報は時の海軍省にもたらされ、山本五十六次官の提案で軍令部、航空本部などの技術者を集めて実験した結果、町の科学者の欺瞞と判明したそうです。大戦中は松根油を集めて飛行機などの燃料にしたり、戦後の木炭を燃料とした車が走り回った時代から70年以上の時が過ぎ、水素を燃料として走る車が日本に広く普及する時代となります。強気の予想では、10年後には世界での販売台数が約132万台と見込まれています。
税理士 松 尾 正