この5月は全国的に高温、小雨の好天が続き、初夏を超えて盛夏と思われる日々が珍しくありませんでした。日本列島各地で最高気温が25°を超える夏日30°を超える真夏日が多く観測されました。とりわけ東京地方では、5月中の夏日は18日が過去最高であったものが、5月26日にはタイ記録となり、翌27日にはあっさりとこれまでの記録を更新したばかりか、両日とも30°を超え過去に一回だけしか観測されたことがない5月中の連続真夏日となったのです。6月は全国的にカラ梅雨模様との予報が気象庁から発表されましたが、じっとりとした湿気とむしむしした暑さの時期にエアコンは快適さを与えてくれます。
公立小中学校の教室にエアコンを設置すべきかどうかについて、議論が分かれています。文部科学省によると、昨年4月1日現在で公立小中学校のエアコン設置率は32.8%となっており、前回調査の平成22(2010)年の2倍以上になっています。設置率は一桁の県から99.9%の東京都まで地域差が大きくあり、設置率7.0%の静岡県は「東海地震に備えて耐震化を最優先としている」ためといいますし、設置率の高い横浜市や川崎市には学校給食がないといった優先順位の違いによるものとする見方もあります。学校の教職員側は「あった方がいいが、必要性を感じるのは夏休み前後の1か月程度である」といい、子どもたちは「ノートに汗がしたたり落ちたりして、勉強に集中できない」などの声があります。エアコン設置を機に夏休み終了日を1週間繰り上げた学校もあるなど、子どもたちにも代償が求められ良いことずくめではありません。
埼玉県所沢市では、航空自衛隊の基地に近い学校の窓が飛行機の騒音対策で二重サッシになっていますが、窓を閉めての夏場は暑さで授業に集中できないなどの理由から、9年前にエアコンを設置する計画が決定されました。ところが平成23(2011)年の市長選挙で初当選した市長は、「快適な生活は多くの犠牲の上に成っていることを知るべきである」としてエアコン設置計画を中止することとしました。これを受けて住民投票条例の制定、住民投票の実施にまで発展しました。そして今年2月15日異例の住民投票が実施され、エアコン設置賛成が反対を大きく上回ったものの投票率は31.5%にとどまり、エアコン設置実現の目安だった投票資格者総数の3分の1に届きませんでした。
「我慢することを覚えなければ、いざという時に生きて能力を発揮できない」という70代の男性や、設置率の低いところから東京に引っ越してきた塾教師によれば「だからといって学力が上だという実感はない」ともいいます。一番暑い時に夏休みがあるのであり、冷房など考えられなかった時代に小中学生であった私たち世代としては、学力の上下にあまり影響がないとすれば将来的にはともかく「耐える能力も必要」かなと思う次第です。
税理士 松 尾 正