台風18号から変わった低気圧の影響で、関東や東北で9月9日から記録的な豪雨が続き、茨城県常総市では鬼怒川の堤防が決壊しました。9月10日午前0時過ぎ栃木県に、次いで茨城県に更には福島、宮城両県にも大雨特別警報が発表されました。
特別警報とは、平成25(2013)年8月から運用を開始したもので、数10年に1度しかないような自然現象が予想され、東日本大震災の大津波や死者・行方不明5000人以上の伊勢湾台風、死者70人以上の紀伊半島豪雨など重大な災害の危険性が迫っていると判断した場合、気象庁から発表されるものです。9月10日午後0時50分茨城県常総市の鬼怒川で堤防が決壊し始め、流れ出した川の水に削られてどんどん広がり、午後5時には幅約140mに拡大しました。大量の水が町を襲い、取り残された多くの住民が救助を求めているのがテレビ中継されました。この氾濫により5000人以上が避難し、約40平方㎞に及ぶ広い地域がどろ水に浸水しました。
「50年に1度」といわれる今回の豪雨は「関東・東北豪雨」と名付けられ、これをもたらしたのは台風18号から変わった低気圧、しめった大気を関東や東北の上空に引き寄せました。次々にできた積乱雲が帯状に並ぶ「線状降水帯」が発生し、南北に延びて長時間にわたり関東から東北に激しい雨を降らせ続けました。気象研究所の研究官は「これほど広範囲に線状降水帯ができるのは珍しく、できた積乱雲が南風で北に流される一方、元の場所で新たな積乱雲が生まれ続けた結果帯状に雨が降り続いた」と分析しています。また「通常は積乱雲が並ぶのは1本だが、今回は3本、4本の帯が同時に形成されて重なり合うことで、広範囲に長く雨が降り続いたのではないか」とも述べています。48時間の合計雨量は上流の日光市で600㎜を超え、9月1か月の平均雨量の2倍以上となったところもありました。
首都圏では昭和49(1974)年9月に多摩川水害がありました。台風に伴う雨によって多摩川が増水し東京都狛江市の堤防が決壊、10数棟の家屋が次々と濁流にのみこまれる様子がテレビで放映されて全国に衝撃を与えたものです。今回の豪雨では東京都内でも被害が発生しました。板橋、中野、渋谷、世田谷の4区で床上、床下浸水などがあり、八王子市では土砂崩れや道路の冠水の被害が出ています。埼玉県では駅構内が冠水したり、千葉県下でも数10棟の家屋が浸水などの被害にあっています。
鬼怒川の堤防を決壊させた記録的豪雨、東京都でも200年に1度の大雨ともなれば荒川が決壊し、最大3500人の死者が出ると内閣府が想定しています。地球温暖化で豪雨が増えるといわれる中で、東京は水害に弱く、鬼怒川の災害は決してひとごとではないとも警告しています。
税理士 松 尾 正