代表者ブログ「西之島」(2017年5月1日)

 平成25(2013)年11月20日、東京の南千㎞離れた太平洋上で海底火山の噴火が約40年ぶりに始まりました。約2年間にわたり大量のマグマを噴出し続け、1か月後には近くにあった小笠原諸島・西之島(無人島)をのみ込みながら大きく拡大していき、現在島の面積は東西、南北いずれも約2㎞に達し、面積は旧西之島の約12倍の2.7㎢(東京ドームの57倍)にも達しています。新しい西之島の誕生でありました。海上保安庁によると、我が国の領土が広がるばかりではなく領海は約70㎢、排他的経済水域も約50㎢に広がると見通しています。

 新しい西之島は噴火から3年で火山活動が一旦落ち着き、上陸調査が可能となりました。昨年10月には鳥類や植物の存在が旧島部分で確認され、外界と隔絶した島の生態系がどう発達していくのか、研究者たちが注視していたところでした。森林総合研究所の川上和人研究員(鳥類学)によれば、西之島に上陸したところカツオドリの仲間がひなを守っていることや、数種類の昆虫、植物が生息していることが判明し、「新たな生態系の始まりがあった」と述べています。西之島は一番近い父島からでも約130㎞と離れて孤立しており、外界の影響が少ないため、生態系の成り立ちを観察できる世界でも希少な場所だともいいます。

 46億年前に誕生した地球は、覆われていた表面のマグマが冷えていき、一面が海となりました。その後火山活動に伴って小さな島や陸地ができてきて、それらが合体しながら大陸ができていったと考えられています。伊豆半島は大昔、火山島であったものが、数百万年前本州と衝突して今のようになったと考えられています。西之島も何万年、何百万年後には、日本列島とくっついて大陸を成長させていくだろうと予想する専門家もいます。

 西之島の噴火や溶岩の流失は、平成27(2015)年11月以降確認されず、平成28(2016)年8月に気象庁は警戒範囲を火口から半径1.5㎞から500mに縮小し、今年2月には火口周辺警報を解除しました。ところが4月20日に海上保安庁の航空機が西之島の1年5か月ぶりの噴火を確認し、気象庁も再び火口周辺警報を発令しました。東京大学地震研究所の中田節也教授(火山学)は、「活発だった平成26(2014)年に近い活動レベルであり、溶岩の流れは再び海にまで届くだろう」と指摘しています。ほぼ失われた生態系が今後どのように再構築されるのか、生物学上貴重な実験場になろうとしていた矢先の再噴火、新たな生態系の調査はふりだしに戻り、当面は更なる島の拡大を期待して注視していくことになります。

税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾  正