関東地方では一部の新聞で小さな記事でしたが、9月16日東京発秋田行きの秋田新幹線「こまち3号」が、JR奥羽線の秋田県内で線路上にいたクマと衝突し、緊急停車したと報じられました。幸いに乗客約200人にけがなどはなく車両も異常なしを確認して発車し、クマも衝突したものの大きな傷を負った様子はなく近くの山中に逃げ込み、大きな事故には至りませんでした。
近年、耕作放棄地が年々増加して問題視されていますが、クマに限らず野生のイノシシやシカなどが人間の生活圏に密着するようになっています。とりわけ農作物の被害が深刻な状況にあり、平成27(2015)年の被害額は176億円となっています。内訳はシカが60億円、イノシシが51億円、残りがサル、クマなどの獣類・鳥類となっています。被害を減少させるためにはどのような対策をとればよいか、人間に損害を与える野生動物の数を抑制することであり、そのためには狩猟を促進しジビエ(野生鳥獣の肉)を食材としてアピールしていくことだと言われています。
プロの猟師によれば、イノシシやシカは仕留めて2時間以内に血抜きと内蔵処理を終えないと、臭くて食用には向かなくなると言います。よい肉がとれるのは、イノシシで体重の6割、シカは2~3割ほどだそうで、食感は野生だけに運動量が多いため歯ごたえと風味があって脂も食べやすいのが魅力だそうです。ジビエ料理が注目されながらも広まらない理由として、品質管理の難しさが挙げられています。色々な所で色々な人が捕獲するため、処理から出荷までの手順がバラバラになり、食べたい人に均質な味と流通量を提供することができません。
現状ではプロのシェフによって限られた範囲で提供されていますが、香川県では農作物を守るために駆除した野生動物を家庭でも食べる「自家消費」を推進しています。イノシシとシカの肉を使った家庭料理のレシピ集を作成・配付して、「おいしさを知って、資源を有効に使ってほしい」と鳥獣対策の担当者は話しています。野生動物の急激な増加に対し、同県はこれまでにも捕獲指南書の作成や解体講座の開催など自家消費の拡大に努めてきました。その結果、平成2(1990)年度に捕獲されたイノシシは3頭だったのが、平成28(2016)年度には1万2000頭にまで増加しました。小豆島に生息するシカは、1400頭が捕獲されています。担当者たちは、以前は食べる風習がなかったので捕獲しても食用とはせずに大半を埋めてきたが、「命をゴミのように捨てたくない」との思いからの取り組みでした。昔は家で飼っていた鶏を食べることが普通に見られたものです。
税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾 正