今や伝説の生き物となっているニホンカワウソ、琉球大学の伊沢雅子教授らの研究チームが、今年2月長崎県の対馬でカワウソ1匹の映像を撮影したとの報道がありました。同研究チームが、ツシマヤマネコの生態調査のために設置した自動撮影装置で1匹のカワウソが歩いているのを撮影したのですが、カワウソが国内の自然界で生きた状態で見つかったのは38年ぶりのことでした。ニホンカワウソは昭和54(1979)年高知県須崎市の新庄川での目撃例が最後とされ、環境省は30年以上生息を確認できなかったとして平成24(2012)年に絶滅したと公表しました。
ニホンカワウソはイタチ科の哺乳類で、明治時代のころまでは国内各地の川の流域や海岸に生息し、江戸時代には対馬にも生息していたという記録もあるそうです。体は細長く毛に覆われ、足には水かきがあって泳ぎが得意です。明治以降に毛皮を狙った乱獲などで激減したところで、政府は狩猟を禁止たのですが時すでに遅しで生息数は回復しませんでした。専門家は今回撮影された動画から、全体のプロポーションからみてカワウソであることを確認しましたが、ニホンカワウソであることまでは特定しませんでした。見つかったカワウソが①ニホンカワウソが絶滅せず生き残っていた②ユーラシアカワウソが約50㎞離れた韓国から海を渡ってきた③人間が関係して入ってきたという3つの可能性を挙げていました。
国内各地の動物園や水族館では、カワウソがちょっとしたブームになっています。もちろんニホンカワウソではなく多くが東南アジアなどに生息しているコツメカワウソですが、泳ぐ様子が見える展示やエサやりなどのイベントに人気があります。10月には東京・池袋のサンシャイン水族館では、全国で飼育されているカワウソの人気投票を発表しましたが、79匹と5組のカワウソが立候補したといいます。平成25(2013)年にデビューした高知県須崎市のニホンカワウソをモデルにしたゆるキャラ「しんじょう君」は、平成28(2016)年のゆるキャラグランプリで1位になりました。今回の対馬でのカワウソ映像発表以来、ますます注目度がアップしているといわれています。
10月12日環境省は、38年ぶりに見つかった野生のカワウソの本格調査の結果、ユーラシアカワウソのDNAを持つオスの生息が確認されたと発表しました。四国にいたニホンカワウソの標本のDNAと比べると両者の特徴は異なっており、ニホンカワウソである可能性をほぼ否定しました。日本の自然界にカワウソが生息していることが確認されたものの、朝鮮半島から漂流物に乗って対馬に住み着いたとする結論に落ち着いたようです。
税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾 正