ノーベル賞<H20.10.29 更新>
実りの秋ではありますが、ここは「ノーベル賞」でまいりましょう。この10月上旬、 2日連続のノーベル賞受賞の朗報がもたらされました。素粒子物理学の南部陽一郎、小林 誠、益川敏英の 3氏に加え、海洋生物化学の下村 脩氏です。このところ暗いニュースや腹立たしいニュースばかりが続いていましたが、突然光りが差し込んだような嬉しいニュースでした。ともかく日本の自然科学の底力を世界に印象づけた快挙であり、偉大なる受賞者に心から敬意を表します。
もちろん私自身、素粒子も緑色蛍光たんぱく質も未知の世界です。下村氏は、なぜオワンクラゲは光るのかという素朴な疑問から、発光のメカニズムを追いかけてたどりついた物質が幅広い研究の道具に使えることがわかったというものです。物理学賞の 3氏にしても、素粒子物理学という基礎的な研究の成果であり、30~50年前の業績がやっと世界に認められ、それぞれ万感の喜びであったことと思います。
御承知のとおりノーベル賞は、ダイナマイトを発明したスェーデンの化学者アルフレッド・ノーベル(1833 ~1896年) の遺言に基づき1901年に創設されました。12月10日はA・ノーベルの命日、この日ストックホルムで毎年ノーベル賞の授賞式が行われます。受賞者にはノーベル基金から 1,000万スェーデンクローネ( 約 1億 4,000万円)が交付されますが、もちろんこれには所得税は課税されません。所得税法第 9条①十三で「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」は非課税とされています。 由来は昭和24(1949)年、日本ではじめて湯川秀樹氏がノーベル賞 (物理学賞) を受賞した際、「学術、技芸、慈善又は文化的、社会的貢献を表彰するものとして交付される褒章額については、所得税は課税しない」と国会の全員一致でもって規定されたもものです。
昨今、哲学科などの文学部の学科、数学や理論物理学などの基礎科学部門は、ややもすると日陰に追いやられている傾向がうかがわれます。一見何の役にも立たないようにみえる基礎科学は「無駄遣い」と紙一重であるといわれています。「ニュートリノ」で平成14(2002)年にノーベル賞に輝いた小柴昌俊氏の実験は、数十億円をかけて幸運にも成功しましたが、この発見の実用価値は今のところ皆無であるといわれています。目先の実利や損得にとらわれず、無駄遣いを惜しまない結果としての大発見が栄光につながり、それに対する国民的賞賛こそ少年少女に科学の興味や夢をふくらませていくものだと思います。下村氏は、「子どもたちには、どんどん興味を持ったことをやらせて、やり始めたらやめてはダメ」と述べたと報じられていました。
今回のノーベル賞の受賞は、「算数や理科を勉強して何の役に立つの?」という問いに的確な答えを見出せたと思います。
税理士法人みらい
代表社員税理士 松尾 正