税理士並河の税界よもやま話【25】(H22.4.20)

★競馬の祭典・東京優駿(日本ダービー)
春から夏にかけて日本列島の各地の神社、観光地等の町内会で様々なお祭が開かれます。
国の肝心な政事(まつりごと)では芯が見えず危うい状態ですが、庶民は伝統ある祭ごとを盛大に行って元気の糧としています。
偶々私の住まいが競馬場に近いこともあり、今回は競馬にかかる賭け事と税金について記しました。
昔民間会社に就職した時、東京本社の独身寮が西船橋にあり中山競馬場との縁、次に転勤した大阪支店の独身寮が西宮市仁川で阪神競馬場に縁、そして国税の職場では暫しのブランクのあと、退職後は現在府中市に住み東京競馬場に縁、というか復縁になりました。
独身寮では環境上競馬をしないと相手にされない雰囲気でしたが、特に西船寮ではG1レースの時全員が「投機組合員」となって馬券の投票を投機組合長に運用一任し、当ると出資割合に応じて分配して皆で楽しんでいました。
昭和44年(1969年)の第36回の日本ダービーは28頭出走中1番人気のタカツバキ(抽選馬、JRA育成馬)がスタート直後に左右の馬に挟まれ、騎乗していた嶋田功騎手が落馬して人気薄のダイシンボルガード(大崎昭一騎手騎乗)に栄冠が輝きました。
本命馬の落馬というハプニングの裏にタカツバキが抽選馬という境遇から這い上がってきたことに対する中央競馬界のイジメではとの疑惑がありましたが、真相は不明でした。
このダービーのレースでわが投機組合長は何と全馬券を落馬したタカツバキにつぎ込んでしまったため、一瞬にしてドボンとなり、他の寮生が不満を言っても後の祭りでした。
このとき落馬した嶋田功騎手はその後、第40回日本ダービーで9番人気のタケホープに騎乗し、ダントツの人気だったあのハイセイコーを直線で差してタカツバキの雪辱を立派に果たしました。
★ギャンブルと税金
私は競馬の馬券は当らないものと達観しているせいか、馬券的興味より競走馬としてのスポーツ感覚を楽しむ方ですが、一般には圧倒的に馬券重視派が多いと思われます。
派手な原色の乗馬服を着た騎手(ジョッキー)と鍛え抜かれた精悍なサラブレッドが人馬一体となって疾風迅雷のごとく駆け抜ける様は格好いいとしか言いようがありません。
4コーナーから直線に入り、ムチが打たれてゴールになだれ込む時の観衆の歓声、悲鳴どよめき、歓呼等入り混じった音声を感じながら僅か1分数十秒のドラマの顛末に醍醐味を感じるのはおそらく私だけではないでしょう。
さてこの競馬の馬券の払戻金は所得税の一時所得の対象になることは周知されていますが、有名無実化されて問題が多いように思われます。
所得税法34条で一時所得とは他の所得に当てはまらない一時的な所得で労働、役務等の対価が伴わないものと規定され、それを受けた基本通達34-1で一時所得の例示として ①懸賞の賞金品、福引の当選金品 ②競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金等を列挙しています。
しかし実際に競馬などのギャンブルで大当たりした者が税金を申告して納めたという話はほとんど聞いたことがありません。
有名人で万馬券が当ったことをマスコミ等に吹聴したのが報じられて、後で有名税としてやむなく税を払ったということはあるかもしれませんが・・・
たまたま大当たりとなったとしてもそれまでに大損していたら、損益の通算ができないこのやり方では申告するのが馬鹿馬鹿しいと考えるのは無理もありません。(株でさえ年間の益と損の通算が認められています。)
今年4月6日に大井競馬第7レースの3連単で2488万円という史上最高の万馬券が出ましたが、これなどは宝くじの上位入賞賞金と変わるところはありません。
ただ宝くじについては「当選金付証票法」により当りくじは非課税扱いと規定されています。
後発のJリーグのサッカーくじ(TOTO)についても「スポーツ振興投票の実施等に関する法律」によりたとえ1億円が当ったとしても非課税となる手当てがされています。
競馬も同様に競馬法等で非課税規定を設ければ安心して楽しめると思われます。
日本中央競馬会(JRA)は農林水産大臣の監督下で全額国が出資した特殊法人で世界最大の馬券売上により、毎年3千億円近くの納付金を国庫に納めています。
馬券の購入者はJRAの納付金を通して間接的に納税していることになります。
ギャンブルは熱くなってやり過ぎると身代を滅ぼすものですが、健全な娯楽として楽しむ限り「幸運」「グッドラック」というささやかな夢を抱き続けることができます。