私たちに最も身近かな野鳥といえば全国各地で普通に見られるすずめですが、主に人家の屋根下に営巣します。すずめは人里離れた原生林や孤島で見掛けることはまずありませんし、過疎などで人が住まなくなるといつの間にか姿を消してしまうといわれており、北原白秋は著書の『雀の生活』の中で「・・・雀は人間なしには全く生きられない。それほど雀は人間離れしない小鳥なのです。」と記しています。
最近すずめの個体数が激減しているという異変が生じているといわれるようになりました。都市周辺の公園などでかつては数10羽あるいは 100羽以上のすずめが集団で飛び回っていたものが、最近はせいぜい10羽前後の群れですずめも少子化の時代になったのかと思うほどです。むしろムクドリやヒヨドリの方が大群をなしてきており、大きな鳴き声でうるさく飛び交っています。
すずめは古くから米を食い荒らす害鳥とされ、人間は被害を防ぐことに知恵を絞ってきました。すずめよけに爆音機を使ったり、収穫期にはネットを張ってすずめの害を防いできましたが、最近はこうした対策をとる地域が減ってきているそうです。米どころ秋田県の「JA秋田ふるさと」 (横手市) では「最近すずめの被害はほとんどないので特に対策を講じていない」といっていますので、すずめの減少は都市部に限らないようです。個体数の正確なデータはありませんが日本にいるすずめは約1,800万羽と推計されており、すずめの研究者の推計によれば、20年前の半分、50年前の 1割ほどに減少していると報告されています。
すずめは今のところ絶滅の危機にひんしている事態ではありませんが、数が多く人間の身近にいて絶滅した鳥の記録があります。北アメリカ大陸の空にはかつて何10億ものリョコウバトという鳥がいましたが、食用・羽毛採取などのために乱獲されて激減し、1914年には最後の 1羽の死で絶滅したというものです。日本では2003年にトキが絶滅し、今中国から移入したトキを国を挙げて人口繁殖に取組み、自然界に復帰させる努力が続けられているのは周知のとおりです。
すずめの減少の原因は何か、全国的に都市化が進み昔ながらの住宅が消えコンクリートやスレート屋根の機密性の高い住宅に変わってきたことで、屋根にすき間がなくなり巣を作る場所がなくなったことが一番大きな原因といわれています。すき間ができる屋根のある家屋が適度に建て込み、周辺にエサとなる虫が生息する公園や雑草の生えた空き地があることなどがすずめ増殖の条件になるといいます。童謡「メダカの学校」のメダカは今や絶滅危惧種になっており、「すずめの学校」が廃校になる時が来ないとは断言できません。 5月10日から愛鳥週間です。公園や庭先の木々を見上げて、すずめを観察するひとときを過ごしたいと思っています。
税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾 正