今年の梅雨は、沖縄を除き各地とも 1~2 週間遅れて 6月中旬ごろからはじまりました。気象庁の統計によると過去30年間の平均的な梅雨の期間は40~50日といいます。 長引く梅雨ともなれば50日を超え、過去の記録では東京や鹿児島で約80日間も続いたことがあります。いずれにせよ 7月に入ったとはいえ梅雨明けはまだ当分先のことではありますが、梅雨入りが毎年 1か月位早い沖縄では、今年 5月 6日に梅雨入りし 6月19日には既に梅雨明けしています。これは平年より 4日、昨年より17日も早い梅雨明けだそうですから、梅雨入りが遅れた本土各地でも昨年のような長梅雨とはならず早めの梅雨明けとなるかも知れません。
梅雨は日本独特の気候で毎年やってきます。梅の実が大きくなるころの長雨ということから「梅雨」という名がついたといわれています。しとしとと降る雨は風情があるものの、通勤・通学や屋外の活動には雨具が必要となり、加えて暖かくなってきたことで多くの湿気をもたらすため「かび」が発生しやすいという難点があります。最近の住宅は気密構造で風通しを悪くし、アルミサッシを使って湿気を部屋の中に閉じ 込めることから、かびが活動するには天国といえるような条件が備わっています。
かびは小さな微生物の一種で何億年も前から地球上にあり、名がついているかびだけで 7万種類もあるといいます。人間にとって有益なものもあるのはもちろんですが、 人間の健康に障害をもたらすかびの方がはるかに多くあります。
わが国では数百年も前からかびを繰り返し使用し、酒や味噌・しょう油、かつおぶしなどの製造になくてはならない麹かびを学びとり、発酵という日本独特の技術を進展させてきました。他国では水に溶かした青かびをチーズに入れておいしいチーズを造りだし、更には1928年英国のA・フレミングが青かびから発見した抗生物質ペニシリンは、肺炎・肺血症などの細菌性疾患に著しい効果があり優れた医薬品となっていることは周知のとおりです。
ジメジメとしたこの季節の悪玉かび、家庭では風呂場のタイルや壁などのかび、エアコン内部に生えたかびによる異臭などかび対策に万全を期します。また、高松塚古墳壁画( 奈良県明日香村) に見つかった黒いシミはかびのせいだと報じられていましたが、古文書や古美術品にも虫干しをしたり、風通しをよくしたりとかび対策が欠かせません。冷蔵庫で大事に保存していた大好物の食品にかびが生え、腐敗させてしまったということは日常珍しいことではありませんが、落語の先代林家正蔵は「かびってどうして生えてくるんでしょう?」と聞かれて、「早く食わねえからだ」と答えたそうです。単純明快、言い得て妙とでも申しましょうか。
税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾 正