台風と地震は我が国にとって宿命とも言える自然災害であり、地震は地中で突然起き、その予知は学術的にも未だ難しいとされています。熊本・大分で発生した今回の地震は、活断層で起きたと見られていますが、活断層とは過去に地震を起こした形跡があり、将来も地震を起こす可能性がある断層です。日本列島にはわかっているだけでも2千以上の活断層があり、このため全国どこでも大きな地震が起こる恐れがあると言われています。
観測史上阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大地震の3回しかなかった震度7の地震が、わずか3日間のうちに震度7が2回も発生したこの大地震を気象庁は「平成28年熊本地震」と名付けました。4月14日夜の震度7が「前震」で16日未明の震度7の「本震」が起きるという「今までにない予測困難な地震である」と気象庁の担当課長は記者会見で戸惑いを隠せませんでした。
以後半月間のうちに震度6強2回、6弱3回、5強3回、5弱7回、震度4が70回以上、震度1~3が800回以上が記録され、「過去の経験則があてはまらない」と言われました。家屋などの建造物の被害は甚大であることはもちろん、引き裂かれた畑や道路、つながっていたと信じていた大地が裁たれ、大きく崩れた山肌とともに打ち切られた道路の先の橋の陥落など、正に人知及ばぬ自然の脅威です。警察、消防、自衛隊は速やかに援助隊を派遣し、現場では一体となって迅速に活動を始めました。また自治体の職員や医療支援を行う医師団、たくさんのボランティアなどの活動も活発です。被災者側にも我慢強さや秩序ある行動が見られ、日本社会のすばらしさがあり、自然災害を止めることはできなくても過去の災害の教訓を生かし、苦難を乗り越えるために尽くしていることもうかがえました。
テレビに出演している識者などからは政府の対応が遅いとのコメントが少なからず見受けられましたが、被災者を何日も飢えに耐えさせるようなこともなく、被害地の隅々にまで大型・小型の重機で人命の救助や災害の復旧などを迅速に行い、被災者に食べさせ、飲ませ、医療にかかれるように果敢に活動していることをもっと前向きに評価して欲しいものです。
熊本地震は、今後日本列島にどんな影響を及ぼすのか、大規模な南海トラフ地震の前震と考えることもできるのかなど専門家にしても予測がつかないのが現状です。今回の地震では「本震」の前に強い「前震」があることを学びました。日本は災害に遭うたびに人々の立派さを見せ、災難を教訓に換える能力を見せるのです。いつどこで巨大地震が起こるのか、次は自分の住む地域かも知れないことを念頭に置いて備えていなければなりません。
税理士 松 尾 正