日本酒は我が国の酒税法では「清酒」とされ、「米、米こうじ及び水を原料として発酵させてこしたもの」と定義づけられています。ここでは清酒というよりは「日本酒」という呼び方のほうが一般的でなじみやすいので日本酒と表現します。日本酒は我が国の気候、風土の中で長い年月をかけて創意工夫を積み重ねて現在の姿に辿りつきました。同じ醸造酒であるワインやビール造りには見られない、素晴らしい技術が数多くあります。また、日本酒はあたためても冷やしてもおいしく飲めます。アミノ酸、デキストリンが多く含まれていてうま味があり、魚の生臭さを消し、米、野菜、魚を主体とした和食に合うようになっています。明治生まれの発酵学の大家坂口謹一郎博士は「世界の歴史を見ても、古い文明は必ずうるわしい酒を持っている。優れた文化のみが、人間の感覚を洗練し美化し豊富にすることができるからである。それゆえ、優れた酒を持つ国民はすすんだ文化の持ち主である」と言われました。
お酒の中に、今やブームというより絶対的な地位を確立した「しょうちゅう」がありますが、最近日本酒の世界展開に注目が集まっており、輸出額は年間150億円を超え過去最高となっています。約8千億円の規模があるフランス産ワインに比べれば遠く及ばないものの、和食人気の高まりとともに海外のソムリエが日本酒に興味を持ちはじめてきており、それに応じて日本酒を世界に発信するメーカーが増えてきています。世代交代した若い日本酒造りの経営者たちが、日本酒の魅力を伝える力強い存在となっています。独立行政法人酒類総合研究所の女性初の理事長となった後藤奈美さんも「日本のお酒を文化として海外に伝えていきたい」と力強く語りました。
先の大戦後、酒にも酒好きにも受難の時代がありました。配給制はともかく密造酒が跋扈し、ヤミ市場に出回っていた日本酒は水で薄められたものが多く見られたりしました。70年の時を経てよい米と水で日本酒は質的に格段の向上を果たしました。日本酒にもこれまでに何度かブームがあったものの消費は減り続け、生産数量は昭和48(1973)年度の1421㎘をピークに年々減少し、しょうちゅう等の伸びに押されて平成10(1998)年度には781㎘にまで落ち込んでしまいました。
日ごと寒さがつのって秋の夜長に加えて、年末年始を迎えるにあたり飲む人も飲まざる人もお酒とのつき合いが多くなります。公益社団法人アルコール健康医学協会の「適正飲酒の10か条」の最初は「談笑し、楽しく飲む」のが適正飲酒の基本としています。。
税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾 正