黄色くとがった口先、澄んだ丸い目、体は銀色に光り輝き、腹部が丸くふっくらとしたサンマ、塩焼きの添え物は大衆野菜の代表ともいえる大根をおろしたもの、サンマは限りなく庶民的な魚といえます。秋のサンマは夏の間に北の海でオキアミなどのエサをたっぷり食べているため、体重の約25%を脂肪が占めています。しかもこの脂肪は脳を活性化させる機能を持っているそうですから、子どもから老人までの優れた食材です。秋の味覚の代表ともいわれているサンマは、ここ数年深刻な不漁が続いていて、昨年の漁獲量は半世紀ぶりの低水準でした。その原因としては海洋環境の変化に加えて、公海上での大型外国船の乱獲が影響しているといわれています。
日本のサンマ漁は、中国や台湾などの大型船に比べて小型の漁船で出漁し、採ったら船の中で鮮度管理が徹底され、出荷までの管理に気を配り高品質を保つ努力がなされています。札幌中央卸売市場では7月11日に今年のサンマの初セリが行われましたが、昨年を上回る1キロ50万円、一匹約7万円のご祝儀相場がつきました。国立の水産研究機構の調査によると、今年太平洋での資源量は205万トンで昨年一昨年を上回るものの、豊富であった平成15(2003)年の502万トンの半分以下となっています。9月下旬以降は魚体も昨年よりも大きいものが採れそうだと予測していますが、「サンマの南下ルートが沖合か沿岸かによって漁獲量も変わる」という懸念もあります。
今や日常的にサンマを食べるようになったという中国、サンマの漁獲量はここ5年で24倍に急増しているといいます。8月3日東京都内で北太平洋のサンマの資源管理を話し合う国際会議が開かれました。会議にはロシア、中国、台湾など8つの国と地域が参加し、日本から公海上での漁獲量を規制することが提案されましたが、中国などが「サンマは減っていない」などと主張していて交渉は難航しています。正確な資源量が把握できれば、漁獲規制に関係国が納得できる道が開けると専門家はいいます。
サンマは、塩焼きで脂が乗った魚肉もさることながら、内蔵もおいしく食べられます。サンマの内蔵がおいしいのは、サンマには胃がなく腸も短いので、食べたものが消化後すぐに排泄されるからであるとされています。発酵学者で食のコラムニストの小泉武夫東京農大名誉教授風に表現すれば、「焼きたてのサンマに大根おろしを乗せてハフハフしながら口に入れると、脂の乗った魚肉と内蔵がジュルジュルと絡み合って、瞬時に鼻孔からサンマの旨みがジュワーンと抜けてきた。この究極のサンマを食べはじめたら・・・」というところでしょうか。世界で一人当たり一番サンマを食べているのは日本人です。収穫の秋に採れるサンマは、日本の海の豊さの象徴でもあります。
税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾 正