税理士並河の税界よもやま話【21】(H21.12.25)

★2009年の回顧
今年は顧問先へ回ってお客様から「お宅の事務所の顧問先で儲けている所はありますか?」といったものから「先の見えない日本経済でいつまで我慢すればよいのか?」とかさらには「資金が持ちそうもないのでいくら銀行から借りたらよいか?」といった深刻な声を聞かされることが多い年でした。
一年を端的に示す言葉として師走の風物詩に定着した感のある流行語大賞(現代用語の基礎知識選)の年間大賞は「政権交代」でした。
その他トップテンには・こども店長・事業仕分け・新型インフルエンザ・草食男子・脱官僚・派遣切り・ファストファッション・ぼやき・歴女が選ばれていました。
昨年の秋口から続く不況の中で行なわれた8月末の衆議院総選挙では民主党が308議席を獲得し、変革による新風が期待されました。
しかし新政権は選挙で公約したマニフェストと現実の財源不足との狭間で予算編成等が立ち往生し、政局は混迷を深めながら2009年を終えようとしています。
また最近では鳩山首相の故人献金問題から発展して、実母から受けた資金贈与が税務上の贈与に当るのかが問題となっています。
もともと親子間や夫婦間の金銭の貸付、贈与については事実認定の判断が難しいところですが、政治資金が絡み一筋縄ではいかないようです。
★贈与税を考える
贈与税はもともと相続税の課税逃れを補完する役目があり、相続税よりも高めに設定されています。(両税とも最高税率は50%と同じですが)
相続税は人が死亡した時にその財産に課税される税金なので、生前に全部の財産を贈与してしまうと相続税はかからないことになり、それを防ぐのが贈与税といえます。
長寿国家のわが国では相続の発生時点が高齢になり、財産の移転は世代交代の場合でも「老から老へ」(80歳代から60歳代へ)といった高齢者が相続人となるケースが多くなっています。
平成15年に「相続時精算課税制度」が導入され、65歳以上の親から20歳以上の子への贈与は2500万円(住宅用資金は更に1000万円上乗せ)までは非課税(親の相続時に精算)となったので、親から子へ早期の資産移転が可能となりました。
この相続時精算課税をいったん選択すると、通常の暦年の110万円の非課税枠は使えないことになります。
今年の税制改正の追加策で住宅用資金贈与に限り500万円まで親又は祖父母から20歳以上の子へは非課税となり、暦年の110万円でも相続時精算課税でも併用が可能となりました。
贈与税の減税のねらいは高齢者の個人財産を消費性向の高い若年層に回すという景気浮揚効果があり、必ずしも金持ち優遇とは言い切れません。
★冬来たりなば春遠からじ
日本経済はいまデフレ、株安、円高、所得減といった長期停滞局面にあり、「日本病」という有り難くない病名を付けられています。(昔、英国病という言葉がありましたね)
消費の冷え込みは国民が等しく財布の紐を緩めないためですが、その遠因には年金、医療保険といった老後不安が根強く存在しているため、その処方箋は容易ではありません。
来年の7月には参議院選挙を控えている関係で、政府としてこれ以上不況を続けるようなことはないと考えられるが、問題は有効な対策が打てるかどうかにかかっています。
2010年の税制改正は財源に配慮して当初予定したほどの大きな改正点はありませんが、贈与税のところでふれた本年度住宅用資金贈与の500万円が2010年では非課税枠が1500万円に引き上げられ、資金の活性化がはかられております。
来年の干支である寅には草木が伸びる状態を表すといわれているので、来る年は二番底が杞憂に終わり、L字型とか鍋底といわれる今次不況から脱し、文字通り暖かい春の到来になることを期待したいと思います。