赤池三男第三話「- 大蔵省メニュー- 」

 起源は古いことですが、何故か今でも続いています。小難しいが、分りやすい話です。
 所得税確定申告や年末調整でお馴染の、所得税の基礎控除38万円のはなしです。基礎控除は、課税最低限の事です。
 日本人として生きてゆくには、年間最低38万円を要し、ここまでは所得税は非課税だ、ということです。
 わが国憲法第25条で言う「すべて国民は、健康で文化的な、最低限度の生活を営む権利を有する」には、38万円あれば—。
 今では え!という金額です。とても、38万円では1年間生きて行けない筈です。
 昭和57年の課税最低限は29万円で、38万円になったのは昭和60年以降です。
それ以前はタイムリーに課税最低限の金額は改正が有りました。昭和30年代の中ごろ、基礎控除額が8万円の時代が有りました。このころ、国会などで、日本人一人が7万円で1年間、生きて行くことは出来ない、と声が上がりました。7万円では、健康で文化的な最低限度の生活は出来ない。憲法違反だ!の声が沸き起こりました。
 政府は「いや!7万円有れば、最低限度の生活は出来る」と言い、出来る事を立証しました。
 では、如何にして立証したか?
 まず、日本人が生きて行くには1日3,200Calが必要(当時)。
朝食は、ご飯一杯、みそ汁、生卵、お新香、のり。で15円
昼食は、ラーメン25円
夕食は、お銚子一本付いて60円。
合計で1日100円で、必要カロリーが取れ、年間で36,000円だ、と大蔵省は言い、これを大蔵省3階の職員食堂で、メニューを作って試食。公開して立証した。
メデイアは、これを「大蔵省メニュー」と名付けました。この大蔵省の職員食堂は、わが社の松尾代表も国税庁勤務当時に利用していました。
 さて、7万円から36,000円差し引いた残りの34,000円ですが、どの様に位置付けたのだろうか。
 健康で文化的な生活を営むには、新聞代、NHKのみのラジオ(テレビは普及していなかった)聴取料、映画鑑賞月一、理髪—。テレビも洗濯機も無い、電気は裸電球が一家庭一つ、電話は一般家庭には普及していない、被服費—。
 この大蔵省メニューで、基礎控除額の憲法違反論争は消えてしまいました。
 その後は、取り上げられるような議論は行われていません。
 昨今の、子供扶養控除廃止論でも、基礎控除の見直し論は出なかった。所得税収確保のためには、必要ない議論だったのだろう?
 避けて通っているのかも知れない。もっとも、今時、基礎控除額が38万円の10倍あっても足らないかもしれない。
 現代に置き代えてみょう。
 2,200cal取得費を、仮に1日1,000円として360,000円、電器・ガス・水道。家賃、新聞代、テレビ、電話(携帯含む)OA機器等の通信費、車両維持費—。
 嗚呼、とてもとても380万円でも足りませんね。