「印紙税」(H26.3.31)

 いつもはできるだけ税に関係ないようなことを書いてきましたが、今回は4月1日から「金銭又は有価証券の受取書」に係る非課税範囲が記載金額 3万円未満から5万円未満に引き上げられた印紙税について書くことにします。「金銭又は有価証券の受取書」とは、金銭又は有価証券を受領した者が、その受領事実を証明するために作成し相手方に交付する証拠証書ですが、分かりやすくいえば「領収証」「受取書」「レシート」などが該当します。
 印紙税は、日常の経済取引などに関連して作成される各種文書を課税対象としていますが、ここで分かりにくい条文を解説するのではなく、印紙税の特徴とかおもしろいところなどを紹介したいと思います。
  ○沿革:明治 7(1874)年印紙税のはじまりといわれている証券印紙規則が施行されました。これは欧米諸国の制度にならったものですが、明治32(1899)年に施行された印紙税法を経て現行法に至っています。今日では欧米諸国には印紙税に相当する税はほとんど残っていません。
  ○歳入状況:去る 3月20日成立した平成26(2014)年度一般会計予算での印紙収入は、 1兆 500億円と租税収入全体に占める割合は 2.1%となっていますが、この中には手数料など収入印紙で納められたものを含みますから、 1兆円以下の収入であると考えられます( 印紙収入のうち印紙税だけの収入は把握できないそうです)。
  ○過怠税制度:昭和42(1967)年には印紙税法が全文改正され、過怠税制度が創設されました。課税文書に所定の印紙を貼っていない場合には、故意過失を問わず納付不足となっている印紙税額の 3倍に相当する金額の過怠税が課せられることになりました。勘違いやうっかりミスは許されず、この 3倍の過怠税は全額が損金不算入となる苛酷なものであります。
  ○文書税:どんな多額の取引であってもその取引に関連して契約書等の「文書」が作成されない限り、印紙税は課税されません。逆に一つの取引について数通の課税文書が作成される場合には、例え「写し」「副本」と表示されていても、すべての文書に課税されることとなり、文書税ともいわれています。
  ○自己判断・自己納付:印紙税は、文書を作成した者が課税文書に当たるかどうか、当たるとすればどの課税文書に該当し、いくらの印紙を貼ることになるのかを自ら判断し、相当の収入印紙を貼って納税することになります。加えてはがして再使用できないように消印までしなければなりません。
 印紙税法は施行から 100年余り、先進国にはほとんど残っていないという時代遅れの税ともいわれています。また文書税ということから、クレジットカード利用や電子商取引では課税は発生しないという不公平感もあります。

税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾  正