♪あなたを待てば雨が降る 濡れて来ぬかと気にかかる・・・おなじみ昭和32(1957)年の大ヒット曲、佐伯孝夫作詞、吉田 正作曲、フランク永井が魅惑の低音で歌った「有楽町で逢いましょう」です。このナツメロを口づさむのは、とうに60歳を超えた人でしょうか。当初この歌は、有楽町駅の近くにできたデパート「有楽町そごう」のコマーシャルソングとして発表されたものでしたが、大流行してフランク永井を歌謡界のスターダムに押し上げました。当時の流行歌の多くは、都会とりわけ東京への憧れを歌ったものがたくさんあって、地方の若者たちは「有楽町で逢いましょう」を聴いて「都会 (東京) とはこういうことか」と感動したものです。その「有楽町そごう」は10年以上前から既になく、平成13(2001)年 6月からは家電量販店「ビックカメラ有楽町店」となって10年の歳月が過ぎました。
一般大衆にとってデパートは憧れの場所でした。子どもたちにとっても、遠足や修学旅行の見学・観光コースに必ずといっていいほど組み込まれていました。田舎から出てきた者にとっては、デパートは何でも売っている、ハイカラで見るだけでも楽しくなる夢の空間、憧れのお店であったのです。欲しかった物が買えて、威光ある包装紙に包んでもらいロゴの入った買い物袋を持って街中を歩くことは、何と晴れがましいことだったでしょう。
そんな憧れの時代は遠くなり、昨年 1年間で東京、大阪、名古屋といった大都市に限らず北海道や九州の地方都市を入れて全国で11店のデパートが閉店しました。全国各地の都市で客を呼ぶ装置として、誘致合戦が繰り広げられてきたデパートの様変わりにはおどろくばかりです。昨年12月には、昭和59(1984)年に開店した「有楽町西武」 が店じまいしました。北側にオフィス街、東側には銀座に連なる繁華街、東京でも流通の拠点とも言われ、日劇あとに建てられた「有楽町マリオン」の中に「阪急デパート」とともに開店して「マリオン現象」と騒がれたのも昔日の思い出となってしまいました。閉店となったデパートのあとは、地方都市からスタートした大型のスーパーマーケット、個性的なファッション店、低価格の衣料品店、家電量販店などが次々と開業するようになっています。
「有楽町マリオン」にある「阪急デパート」では、「有楽町を制するものが日本の流通戦争を制する」との意気込みの下、「有楽町西武」のあとに入った「ルミネ有楽町店」とともに、若年層向けのファッションを中心とする店にリニューアルし、この秋には日本有数の一等地東京の銀座・有楽町界隈に往年の賑わい、華やかさを取り戻そうとしています。デパートが脚光を浴びるのは正月の福袋ぐらいと揶揄されないよう、全国のデパートよ栄華・栄光への回帰あれ!
税理士法人みらい 代表社員
税理士 松 尾 正