1 高校野球と郷土愛
私のような年配者にとって野球はもっとも関心の強いスポーツであり、いまだもってハラハラドキドキとした気持ちで観戦しています。
今年のプロ野球は序盤戦を終え、大方の予想通り、セは1強(巨人ただし今のところ阪神も健闘)5弱、パは本命なき混戦といった状態ですが、ペナントの行方とともに今年の大物ルーキー阪神の藤浪晋太郎、日ハムの大谷翔平選手らの活躍が注目されます。
プロ野球はスター選手の海外流出、地上波の中継減少等で往時の人気に翳りが出ていますが、高校野球は依然として国民的関心が高く人気が衰えません。
この理由としてマスメディアの取り上げ方の大きさ、負けると終わりなので真剣勝負の必死さ、そして郷土愛、母校愛による地元の応援等が挙げられます。
高校野球は昔から西高東低のため優勝旗が箱根の山を越えることは結構難儀でしたが、さらに白河の関を超えることはそれ以上に容易ではありませんでした。
東北勢として1969年(昭和44年)の太田投手率いる三沢高校、昭和46年小さな大投手田村選手の磐城高校、平成元年の大越投手の仙台育英高校は決勝まで進み、栄冠まであと一歩のところで涙をのみました。
2004年(平成16年)8月南北海道代表の駒大苫小牧高校があれよあれよという間に全国制覇の偉業を成し遂げ、白河の関を一足飛びして、津軽海峡を越えてしまった。
私は翌年の2005年7月24日に札幌円山球場で行われた南北海道大会の決勝戦「駒大苫小牧対小樽北照」の1戦を、駒大苫小牧の優勝した強さをこの目で確かめるために、帰省中に観戦をする機会を得た。
試合は5対4で駒大苫小牧(以後駒大と呼称)は勝ったものの、甲子園で前年の打率448を打った派手さはなく、守りの固いチームであるというイメージを抱いた。
この試合で駒大の先発は3年生の松橋投手(明大進学)で田中将大(以後マ―君と呼称)は2番手投手(当時2年生)としてあまり印象がなく、のちに東北楽天に入団してダルビシュが抜けた日本のプロ野球界を背負うまでになるとはその時は夢想だにしなかった。
私はマー君よりも敗れた北照のエースで4番バッターだった加登脇卓真選手の方が印象は強く、彼はその年のドラフト会議で巨人から3位指名され入団したが、公式戦出場の機会なく戦力外通告を受け、プロの世界を去った。
駒大のすごさはこの年にV2を果たしたことにとどまらず、マ―君が3年生になってさらにパワーアップして甲子園に乗り込み、並み居る強敵を倒して、決勝ではハンカチ王子の早実斉藤祐樹投手と引き分け再試合を投げ合い、3対4で三連覇こそ逸したが,その健闘ぶりは球史に残るものでした。
2 時空甲子園
時事通信社が全国の高校野球の強豪校として56校を選び、その高校出場選手を時代に関係なくベストナインを選んでバーチャルなチーム編成する企画を行った。
その選考は必ずしも1県1校ではなく、東北・北海道では東北高、秋田高(わがみらいの松尾代表の母校で、自身も甲子園出場経験者)、北海高校とわずか3校ですが、大阪府はPL学園他5校も出ていた。
56校中、投・攻・守そろって高い評価を得た高校は早実、日大三高、横浜高、東海大相模、桐蔭学園、愛工大名電,龍谷大平安,PL、大体大浪商、大阪桐蔭、上宮、広陵、広島商、松山商が挙げられ、いわゆる名門校といわれる甲子園常連校が名を連ねています。
この中で豪華なメンバーを揃えているのはなんといってもPL学園ですが、近年では大阪桐蔭の台頭がめざましく、現役プレーヤーに中田(日ハム)、平田(中日)、辻内(巨人)おかわり君の中村、浅村(西武)、西岡、藤浪、岩田(阪神)と大勢おり、更に文武両道で進学率も年々向上しているようです。
私はこの時空を超えたチーム編成も結構ですが、単独チームでいつの時代のどこのチームが一番強いかを想像して楽しんでいます。
3 甲子園ネット裏最前列
高校野球の大会期間中に全試合を甲子園のバックネット最前列で観戦している熱心なファンがいることがしばしば話題になっています。
その人は善養寺隆一氏といい、1999年から春夏全試合を見ており、大会期間中は野宿をしていると以前に日経新聞の文化欄に紹介記事が掲載されていた。
野球帽をかぶり、必ずラガーシャツを着ているので通称「ラガーさん」と呼ばれており、都内で家業の印刷業を手伝う独身者ということです。
8月の真夏の甲子園観戦は私もむかし20代の頃、1日4試合を全部見た経験がありますが、グッタリと疲れ、体力をかなり消耗した記憶があります。
彼はそれを2週間続けているので、いくら好きとはいえ、もはや勤行の域か、悟りの境地に近いものがあるのではと思われます。
彼はこのような好きなことを許してくれる職場環境に感謝しつつ、「勝ち続けるチームは基本的に礼儀正しい」と言っていました。
全国で一番早い沖縄地区予選は6月22日から始まりますが、夏の甲子園が早くも待ち遠しいです。
(完)